通報者の”半歩先”を見て、
納得感をもってもらえる
電話応対を心がける

企業倫理ホットライン

村上 隆志むらかみ たかし

不正・違反、労務関連、ハラスメントなどに関する内部通報を電話でお受けし、ご契約企業様のコンプライアンス対策をサポートする相談員をご紹介します。

幅広いコンプライアンス問題に対応

私が担当している「企業倫理ホットライン」では、社会保険労務士、産業カウンセラー、公認心理師などの有資格者が、通報や相談をお受けしています(平日12時~21時/土日祝9時~17時)。

通報・相談は、“重大な改ざんや違反”といった通報もありますが、残業の強要や交通費の不正受給といった人事・労務上の不正・違反、ハラスメントに関する通報が多くを占めます。「自分自身が苦しい、つらい」といった人間関係に起因するような相談ごとも多数混在しているというのが実感です。

電話をして来られる方は、「これは不正の通報。これはハラスメントの相談」と、明確に分けて話すことができる方ばかりではありません。多くはご自身で事実と気持ちを整理できないまま電話をかけてきます。そのため、私たちはまず相手の言葉、その裏にある混沌とした想いをじっくり伺って、整理して、正しく把握することを第一としています。そして通報・相談内容は翌日すぐに報告書として契約企業様にお伝えします。通報・相談内容の正しい理解と迅速な対応を行うことで、従業員の働きづらさの解消や、契約企業様のコンプライアンス経営に貢献できれば、という気持ちで取り組んでいます。

通報・相談者の“納得”を大切に

私たちが最も大切にしているのは、「通報・相談者の納得」です。例えば、伺った内容については最後に必ず、「ここでこうなって、こういうお気持ちだから、こういうご要望があるのですね」と相手に確認をします。すると「そのように会社に伝えてくれるんだな」と安心し、納得してくださいます。

しかし、どれだけ経験のある相談員でも、“納得していただく”というのは簡単なことではありません。例えば、通報・相談者は上司にどなられた時、どのような気持ちになったのか? 単に「腹が立った」という方もいれば、「死にたい気持ちになった」という方もいます。100人100通りの気持ちがあるのです。一言に込められた通報・相談者の気持ちをつかみ、「こういうお気持ちなのですね」と返すことで初めて、通報・相談者は自分の言いたかったことが伝わったと実感し、納得してくださいます。そのためには、相手の話し方の“間”や言葉の一つひとつを推し量る力、「もしかしてこういう気持ちなのでは?」と察する力、私たちがくみ取って整理し相手に返す時に分かりやすく伝わるよう表現できる語彙力など、様々な力が必要です。決して通報者の気持ちを先取りして、決めつけや誘導をしていくのではなく、電話の向こうにいる通報・相談者が話している思いの“半歩先”くらいの、まだ言葉になっていない気持ちを、想像力を働かせてつかみます。それを言葉にして返していくことで、通報・相談者の気持ちを共有でき、通報・相談者の納得につながると思っています。

私たち相談員はこのような応対スキルを安定して発揮できるよう、社内外の研修で専門知識と技術を常に磨き、事例共有会などを通じて知見を蓄積しています。
また、通報・相談の報告書では通報・相談者の“生の声”も伝わるような文章にしようと心がけています。

“納得と満足”のトライアングルを創りたい

以前、同僚への不満から会社を辞めたいと通報の電話をして来られた方がいました。しばらくお話を聴いていると、だんだんと「お客さまからはこのように評価されている」といった良い話に変わっていったんです。そこで「お客さまに愛されているんですね」とお声がけしたところ、突然何かに気づかれた様子で、話がぐっと止まりました。「そうか」と思ったみたいで……。「会社を辞める」と言っていたのが、「ちょっと辞められなくなりましたね、私まだ続けます!」といって通報をとりやめたのです。このようなことは毎回あるわけではないものの、通報・相談者のお話を聴き、想いを返すことが、契約企業様にとっても従業員の方にとっても、幸せにつながるならば、嬉しい限りです。

これまで多くの通報・相談を受けてきましたが、いまだに「これでよかったのか」と振り返ることは少なくありません。通報・相談者の電話の受け方には、絶対的な法則もマニュアルもありませんから、毎回試行錯誤しながら応対しています。それでも、電話で話すうちに元気になってくれたり、前向きに仕事をしようという意欲を見せてくれたり、安心してくれたり、納得してくれることに私たちはやりがいを感じます。これからも、相談・通報者、契約企業様、そして当社の「企業倫理ホットライン」のメンバーと共に、納得と満足を感じられるサービスを築いていきたいと思っています。

Profile

むらかみ たかし
企業における心理相談やキャリアカウンセリングなどの経験を経て、2008年ダイヤル・サービス入社。「企業倫理ホットライン」外部通報窓口を担当。