Vol.208 ハラスメント

相談相手としての対話型AIサービス ~相談現場から見えること~

多くの人がスマートフォンやPCの中に、気軽に相談できる誰かを持っているようです。このような話を聞くと、相談員として仕事をしている私たちとしては、対話型AIサービス(以下AI)は本当に人の相談相手(カウンセラー)になり得るのか、という疑問がわいてきます。

まず、実際にAIに相談を投げかけると、傾聴、受容、共感など、人間のカウンセラーと同じような技法を用いていることに気づきます。また、リフレーミングといった、思考をポジティブな方向へ変換することも行っており、カウンセリングの基礎は押さえているようです。

しかし、医師、心理士、弁護士などの資格を持っているわけではないので、病気の診断やハラスメントかどうかの判断をすることはできません。また、進化途上のAIは、「ハルシネーション」と呼ばれる、もっともらしい嘘をつくこともあります。AIの情報をすべて鵜呑みにするのは要注意です。

また、24時間いつでも近くにいるAIは、常に相談者の味方になり、受容、共感してくれます。これは、一見良いことのように思えますが、依存を生みやすく、結果として現実社会への適応を困難にする可能性もあるのです。

私たち人間が行うカウンセリングの現場では必ず、「相談の枠」があります。相談時間、安全に相談できる空間、そして相談現場以外ではカウンセラーと接触しないといった枠です。「相談の枠」という守られた環境があるからこそ、クライエント(相談者)は自分の心の中にある葛藤に、安全に向き合うことができるのです。

もう一点、人間にはできて、今のAIにできないこととして、「非言語コミュニケーション能力」があります。これは、表情、視線、身振り手振り、声のトーンなどを用いて情報を伝えたり、相手の感情や意図を読み取ったりする力のことです。カウンセラーにとって相談者を理解する上で、この非言語情報がかなりの割合で重要になります。カウンセラーは、言葉の裏にある沈黙や、ためらい、わずかな表情の変化から、相談者の本当の想いを受け止めています。言葉だけではないやり取りで満たされる感覚。そんな瞬間が、生身の人間とのカウンセリング現場にはあります。

AIの進化でより快適な生活が送れるようになったのは事実であり、この進化を止めることはできません。今後、誰もが当たり前にAIを駆使する時代が来るでしょう。だからこそ、AIを相談相手とする際には、常にメリットとデメリットを頭の片隅に置いておく必要があります。そして相談相手としてのAIと人間(カウンセラー)を、場面に応じてうまく使い分ける、使う側の力が大切になってくるのではないでしょうか。

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