Vol.209 メンタルヘルス

心の使い方のコツ ~自分を見つめることの意味~

今回は、電話相談員である私自身の心の動きを描写しながら、心の使い方のコツについて考えてみたいと思います。

先日、ある研修の講師を担当することになりました。本来の担当講師が研修を行うことができなくなり、私に依頼が回ってきたのです。これまで担当したことのない研修の内容でしたが、上司や同僚が困っており、ほかにできそうな人もいなかったため、引き受けることにしました。

ところが、引き受けた後、私は強い不安と焦燥感に襲われました。

「本当にできるのだろうか」
「何から準備すればいいのだろうか」

いろいろ考えていくうちに、「なぜ、自分がやらなければならないのか」「押し付けられたのではないだろうか」と、怒りまで湧いてきました。

そこで、NVC(非暴力コミュニケーション)という方法の「観察・感情・ニーズ・リクエスト」という4つの視点から、自分の心を見つめてみました。

まず、出来事を「観察」して、事実と評価・解釈を切り分けます。 “押し付けられた”という思いは、私が出来事に加えた解釈です。実際に起きたことは“担当者が研修を行えなくなり、私が引き受けた”ということだけです。

次に、自分の中に湧いてきた不安、焦り、怒りという「感情」を、否定することなくそのまま認めました。なぜそのまま認めることが大切かというと、感情の背後には、大切にしたい思いや願い、つまり「ニーズ」が隠れているからです。

感情の背後にある「ニーズ」に目を向けると、そこには「困っている人をほっとけない」「新しいことに挑戦したい」「期待に応えたい」という思いがあることがわかりました。仕事を引き受けることで、こうしたニーズは満たされたのですが、どうやら私には「見通しをもって仕事をしたい」というニーズもあり、これが満たされないままであることに気づきました。仕事そのものが嫌だったわけではありません。見通しを持てないことが、私を不安にさせていたのです。

ニーズを満たすためには、具体的な「リクエスト」をすることが大切です。見通しを持ちたかった私は、同僚に研修のたたき台と台本を作ってほしいとお願いしました。資料ができると「見通しを持ちたい」というニーズが少し満たされ、不安や焦りも少しずつ和らいでいきました。

結局、私が研修を担当することに変わりはありません。しかし、不安や怒りに押されて「やらなければならない」と取り組むのと、自分の思いを理解し、自分が大切にしたいことを意識しながら取り組むのでは、体験の質が違います。

自分の心を見つめることは、自分が大切にしたいことを理解し、次の行動を選ぶためのプロセスです。心が強く動いた時こそ、その感情をなくそうとするのではなく、その奥にある思いに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

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