Vol.86 食と健康

骨粗しょう症とカルシウム

 「骨粗しょう症はカルシウム不足が原因と聞いています。カルシウム剤を飲んでいれば予防できるのでしょうか」「骨粗しょう症が心配です。カルシウムを摂取するように心がけていますが、ほかに何かできることはありますか」などの相談が管理栄養士の窓口には寄せられます。
 健康寿命を延ばすようにいわれている今、フレイルの予防にもつながる骨粗しょう症の予防について見直してみませんか。

骨粗しょう症の原因とは

 骨粗しょう症は骨密度や骨質が低下して骨折しやすくなる病気で、特に閉経期以降の女性に多く、高齢化に伴い年々増加傾向にあります。原因としては、骨を形成するカルシウムやマグネシウムの不足、カルシウムの吸収に必要なビタミンD、ビタミンKなどがバランスよく摂れていないことが挙げられます。また、骨を作るためには、適度な運動によって骨に一定以上の負荷をかける必要があるため、運動不足も骨粗しょう症の要因になります。

カルシウム補給と聞くけど……

 カルシウムはたくさん摂取していればよいというものではありません。不足している場合にカルシウムの摂取量を増やす工夫として、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻、豆腐などの大豆製品の積極的な摂取が挙げられます。また、牛乳、乳製品は、カルシウムの供給源として一般的ですが、吸収のしやすさでも優れた食品です。また、カルシウムは一度にたくさん摂っても一定量以上は吸収しにくいため、何回かに分けて飲食することをお勧めします。

骨の健康にはカルシウムだけではない

 骨の健康を守るにはカルシウムの摂取だけではなく、一緒に摂取する栄養にも工夫が欠かせません。エネルギーと栄養素を過不足なく摂取することに加えて見直してみましょう。
 ビタミンD、ビタミンKが多い食品はカルシウムの吸収を助けてくれます。ビタミンDはサケ、アジ、シラス、カレイ、干ししいたけ、まいたけなどに含まれます。ビタミンKはかぶや大根の葉、春菊、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、納豆などに多いです。ビタミンDは、屋外で日光に当たると体内でも生成されます。住んでいる地域や季節にもよりますが、1日15分くらいは日光浴をすると骨を強くするのに役立ちます。丈夫な骨には適度な運動による骨への負荷も欠かせないため、日光浴と兼ねて運動するのもよいですね。

カルシウムを不足させないポイントはまだある

 カルシウム不足にならないために控えたい食品があります。それがスナック菓子、清涼飲料水、加工食品、インスタント食品です。商品にもよりますが、加工食品にはリンが添加されていることが多く、清涼飲料水の酸味料としても含まれています。特にスナック菓子には、食味をよくしたり、保存性を高めるために添加しているので、たくさん食べるとリンの摂りすぎになり、カルシウムを排出しやすくします。スナック菓子を食べる場合は、カルシウムを補給するために、牛乳を一緒に飲むなど一工夫すると安心です。また、お菓子に含まれる砂糖は、適量であればカルシウムの吸収を助けてくれますが、摂りすぎるとカルシウムを排出してしまいます。
 ほかにも、食塩やカフェインの摂りすぎも、カルシウムを吸収しにくくします。日頃から薄味、ノンカフェイン飲料の摂取を心がけましょう。

 女性の場合には、閉経後に女性ホルモンの低下から、急速に骨の老化が進みます。人間ドックや整形外科での骨量のチェックをお勧めします。