カスハラ・求職者等セクハラ防止義務化で意識すべきこと
令和7年6月11日に公布された労働施策総合推進法等の改正により、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、求職者等セクハラ)の防止措置が、事業主の法的義務となりました。施行は令和8年10月1日で、既に防止指針も公布されています。それぞれのハラスメント防止において、意識すべきポイントを考えてみたいと思います。
カスハラは、顧客等の言動によって、従業員が精神的・身体的負担を受け、就業環境が害されることです。すべての言動が問題になるわけではありませんが、社会通念上許容される範囲を超えた要求は、企業として対応すべきハラスメントになります。
ここで大切なのは、「お客様第一」と「従業員を守る」のバランスです。まずは、会社としての方針を顧客にも従業員にも周知することが大切です。また、カスハラが起こった際に従業員が一貫した対応を取れるよう、マニュアルを作成しておくと現場は安心して行動できます。なお、「顧客等」には「施設の近隣住民」も含まれていますので、マニュアルには近隣住民への対応も含めておきましょう。
さらに、被害を受けた従業員が一人で抱え込まないよう、相談しやすい窓口を整えることも欠かせません。改正法成立前から、当社の相談窓口にはカスハラの相談も入ってきていました。外部相談窓口は、感情の整理やストレスケアの面でも有効であり、早期の支援・対応につながります。
求職者等セクハラは、事業主が雇用する労働者による性的な言動で、求職者等の求職活動等が阻害されることです。なお、「求職活動等」には、採用面接や会社説明会、インターンシップなどの“求職活動”だけでなく、教育実習や看護実習などの“職業選択に資する活動”も含まれていますので注意しましょう。
また、指針では「雇用する労働者」だけでなく「事業主や役員」による性的な言動への対応についても努力義務としています。求職者は立場が弱く、不快に感じても声を上げにくい存在です。相手が事業主や役員であれば、なおさら声を上げづらいでしょう。
そのため、企業側から明確に「ハラスメントを許さない」という姿勢を示し、行為者が事業主や役員であっても相談可能な窓口を用意しておくことが重要です。社内窓口に加え、外部の相談窓口があると、心理的なハードルを下げる効果があります。あわせて、採用に関わる社員への研修を行い、求職者等へのセクハラをしないという意識を高めていくことも重要です。
平成9年のセクハラ対応から始まったハラスメント対策は、より声を上げにくい人へと対象を広げています。誰でも相談しやすく守られていると感じられる対策が、企業への信頼を育てていくでしょう。