障がい者の職場定着のためにできることはなにか

障がい者雇用を促進する法定雇用率制度が義務化されてから半世紀がたちました。厚生労働省の発表した「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」を見ると、民間企業に雇用されている障がい者は増加傾向にあり、特に精神障がい者雇用の伸び率が大きくなっています。
これは、適切な合理的配慮の提供により、精神・発達障がい者が労働力を発揮できると周知されてきたことに加え、短時間労働者や特定短時間労働者を雇用率に算定できるようになったことが後押ししていると考えられます。様々な働き方が選択できることで、多くの障がい者に就労の可能性が広がってきているのでしょう。
しかし、精神・発達障がい者の雇用に取り組む中で、雇用継続の難しさを感じている職場も多いのではないでしょうか。面接で障がい特性や必要な合理的配慮を確認して採用しても、就業し始めると思いがけない問題が起きたり、聞いていなかった課題が表面化したりして、対応に悩むこともあると思います。
そのようなときは、まず障がい者本人と話し、会社が一緒に取り組む姿勢を示すことで安心感を与えましょう。それに加えて、障がい者雇用に詳しい専門機関に相談することが有効です。本人が利用している支援機関があれば、担当者を交えて対応策を検討できます。また、各都道府県の障害者職業センターやハローワークの専門援助部門は、障がい者雇用に関して多くの事例を把握しており、企業からの相談をいつでも受け付けています。職場や障がいの状況に応じ、利用可能な支援制度の情報を得ることができます。
ダイヤル・サービスのハラスメント相談窓口にも、障がい関連の相談が入ります。配慮や差別に関する相談もありますが、コミュニケーション不足による行き違いや思い込みではないかと感じる内容もあり、もどかしく思うことも少なくありません。
障がい者に限らず、従業員が職場に定着するためには、「共に働く仲間として受け入れられている」、そして「役割を与えられ、必要とされている」と感じられることが必要だと言われています。精神・発達障がい者は不安感も強いため、日常のちょっとした声掛けや気遣い、笑顔で話せる関係性を築いていくことは、合理的配慮や専門知識と同じくらい、もしくはそれ以上に効果的かもしれません。
お互いが相手の考えに寄り添い、歩み寄ることを意識すれば、誰もが安心して働き続けられる職場になっていくことでしょう。