自己保健義務遂行の重要性

ダイヤル・サービスが提供する管理職向けのメンタルヘルス研修で講師を務める私は、受講者の皆さんの状況を把握するために、冒頭で今の体調と気力を10段階でどのくらいかをたずねるようにしています。
時間帯や曜日にもよりますが(週の後半は概ね低め)、「気力体力とも1か2くらいだな」と笑いながら答える方が時折います。かなりお疲れなのだなと思いつつも、その状態で今日の研修は最後までもつのかな、と心配にもなってしまいます。
繁忙期で残業が続いていた、たまたまそのときが体調不良だったということもあるかもしれません。ですが、普段の気力や体力が1や2の状態では良いパフォーマンスは発揮できないでしょう。
思えば、かつて私が新卒で入った会社では、ベテラン社員たちが健康診断の結果を見せ合いながら、「俺、再検査だ」とか、「俺なんか要治療だってさ」と、互いの不健康を自慢し合っていました。体を壊すほど仕事をしている、という自負のつもりなのでしょうが、今考えると恐ろしい状況です。
「安全配慮義務」は、事業者(企業)が労働者の生命、身体、精神の健康を守るために必要な配慮をすべき義務です。これは労働契約法第5条に定められており、事業者が労働者に対して安全な労働環境を提供する責任を負います 。
一方、「自己保健義務」は、労働者自身が自分の健康を管理し、安全に働けるように努める義務です。これは労働安全衛生法第69条2項などに基づいており、労働者は健康診断を受けたり、自覚症状を申告したりすることが求められます。簡単に言えば、給料に見合った労働が提供できるよう常に自分の健康状態を維持し、体調不良や異常を感じたときには速やかに上司に報告し、適切な治療を受けなければならないということです。
自己保健義務が遂行されない状況は、「プレゼンティーズム(健康問題を抱えながら出勤し、十分なパフォーマンスを発揮できない状態)」や「アブセンティーズム(病気やその他の理由で欠勤や休職をしている状態)」に陥りやすくなります。またテレワークは、プレゼンティーズムやアブセンティーズムを軽減する可能性がある一方、適切な自己管理ができないと健康問題が悪化するリスクもあります。
冒頭の研修では、管理職の安全配慮義務遂行の重要性について説明をしますが、大前提となるのは全ての従業員の自己保健義務の遂行です。管理職自身が積極的に健康管理に取り組む姿勢を示すことで、部下もその姿勢を見習うようになります。常にベストパフォーマンスを発揮できるよう、日頃から気力体力の状態を意識していきましょう。