コンプライアンス

電話カウンセラーから~相談者と「一緒に考える」ということ 第161号メルマガ

企業倫理ホットラインでは、職場で起きている問題についての通報や相談をお受けしています。
通報・相談者の中には、現状に対して「どうすればいいのかわからない。どうしたらよいか」
と訴える方や、会社に対して「どういう対応をして欲しいのかわからない」
と言う方もいらっしゃいます。

人はそのように問いかけられると、つい、何か答えを出してあげなくては…、
という心境になってしまいます。私たちは「question」には「answer」があると思っています。
そのため、答えの出せない質問に対しては、ごまかしたり、逃げたり、回避したりしてしまいがちです。

ですが、通報・相談者は、必ずしも答えを求めているわけではない場合が多いと感じます。
答えはなくてもいい、むしろ、「一緒に考える」ことが求められているのではないでしょうか。

「一緒に考える」とは、「問いを共有し、それについて対話すること」と言われています。
評価する側とされる側になったり、質問する側とされる側になったりすることなく、
両者がその場において当事者になって対話することであり、対等なポジションでの活動です。
双方が等身大になるからこそ、感情を正直に話すことが出来、結果的に考えるということにつながるのでしょう。

企業倫理ホットラインの相談員と通報・相談者の間に、上下・優劣・強弱・大小などは存在しません。
相談員は、通報・相談者の問いに対して答えを出すよりも、「一緒に考える」ということを心がけます。
相談員が「一緒に考える」姿勢を示すと、通報・相談者は対等なポジションであると感じるのでしょう。
そして、自分の問題を一緒に考えてくれる人がいる、と感じることで安心感が生まれ、
自分自身でも考えようとする力が湧いてくるのでしょう。

相談員が、通報・相談者の心情に共感的理解を示しながら、一緒に考える。
答えを導き出すのは相談員ではなく、あくまでも通報・相談者自身です。
通報・相談者自身が導き出した答えを、相談員は支持します。

なかなか答えを見いだせない方、自分自身で考えられない方はいます。
そんなときは、答えを考えるきっかけとなるような問いかけをして、一緒に考える。
それは何か意見やアドバイスをするよりも、ずっと難しいものです。

相談員自身の経験値や価値観を捨てて、今、つながっている、
この通報・相談者にとっての答えを一緒に考えながら、じっくりゆっくり待つ。
通報・相談者が自分自身で答えを導き出した時、相談員として本当にうれしく感じます。

「今日もまた、一期一会の通報・相談者と一緒に考えよう」――そんな思いで電話を受けています。

企業倫理ホットライン

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