Vol.128 メンタルヘルス

個人と組織の活力となるワーク・エンゲイジメント

 皆さんは、ワーク・エンゲイジメントという言葉を耳にしたことはありますか? 労働人口の減少や人材流動化の加速などの社会的背景から大きな注目を集めている言葉です。

 ワーク・エンゲイジメントとは、オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らによると「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である(※1)」と定義されています。注目すべきは、ワーク・エンゲイジメントが、活力「仕事から活力を得ていきいきとしている」・熱意「仕事に誇りとやりがいを感じている」・没頭「仕事に熱心に取り組んでいる」の3要素から構成されており、この3要素がすべて揃った状態を指している点です。
 ワーク・エンゲイジメントを高めることで、①労働生産性が高まる、②顧客満足度の増加、③離職率の低下、④ストレスが軽減されメンタルヘルスケア対策になるという4つの効果が得られると言われています(※2)。特に、②の顧客満足度の増加については、ワーク・エンゲイジメントの高い状態が生み出す副産物と言えるかもしれません。なぜなら、熱意と活力ある従業員が生産性を向上させるだけでなく、お客様にも信頼と安心を与えると考えられるからです。

 ワーク・エンゲイジメントを高めるための企業の取り組み例として、東京ディズニーランドを運営している株式会社オリエンタルランドを紹介しましょう。同社では、アイデアを気軽に提案できる「I have アイデア」という制度を導入し、そこから生まれた商品もあるそうです。キャスト(従業員)のモチベーションが向上し、働きがいを感じると、おのずとゲスト(お客様)の満足度も向上するという相乗効果があるというわけです。

 このように、企業業績にも直結する要素であるワーク・エンゲイジメントは、前向きな思考等の個人の資源の最大化と、個人のパフォーマンスを維持・向上させるための仕事の資源の充実を図ることがカギだと言われています。今後、企業にはより一層ワーク・エンゲイジメント向上を意識した施策が求められるかもしれません。

 ※1 「ワーク・エンゲイジメント:ポジィティブメンタルヘルスで活力ある毎日を」(島津明人著/誠信書房/2014年)
 ※2 労働経済白書 令和元年版 労働経済の分析-人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-(厚生労働省/2019年)

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