Vol.102 食と健康

ヒトにもマタタビ

<Q>
 猫にマタタビとよくいいますが、マタタビは人も食べられると聞きました。なぜ猫にマタタビなのか、人にはどのように使うのか、教えてください。

<A>
 マタタビは、日本各地の山地に自生するつる性の植物です。6~7月ころ、白梅に似た甘い香りの花が咲くため、夏梅(ナツウメ)、つる梅とも呼ばれます。9~10月ごろに2~3cmの果実が収穫され、黄色く熟した果実は生食できます。同じマタタビ科にキウイフルーツ(和名・オニマタタビ)があります。

 マタタビの名前は、昔、山路で疲れて動けなくなった旅人が、マタタビの実を食べたところ、疲れも取れ、また旅を続けることができたということから、又旅(マタタビ)と名がついたという話が有名です。「近代日本経済の父」と称される渋沢栄一氏もマタタビの塩漬け入りのおにぎりで、激動の幕末期を東奔西走したと伝わっています。

 昔から「猫にマタタビ」ということわざは「誰かにとって大好物」「効き目がある」という例えに使われていますね。その理由は、マタタビには猫の中枢神経に働く物質が含まれているので、猫にマタタビを与えると酔ったようにフラフラになり、転げ回って喜んでいるように見えるからといわれています。

 マタタビの実には、正常に育った先のとがった楕円形のものと、実の中に虫が寄生し、球状に育った「虫こぶ」と呼ばれるものがあります。正常に育った実は、塩漬け、みそ漬け、果実酒など、主に食用にされます。梅の実と同じような使い方です。薬用にされるのは「虫こぶ」のほうで「木天蓼(もくてんりょう)」と呼ばれる生薬となり、薬用酒などに使われます。

 若芽や若葉は生のまま天ぷら、お浸し、炒め物に用いられます。さらに、枝や木皮、つるなどは乾燥し、煎じてお茶や入浴剤に利用されます。このように猫だけではなく、人にもたくさん喜ばれる植物といえます。

 地方の直売所などで、実の塩漬けや入浴剤などが売られていたりします。見かけたら試してみてはどうでしょうか。猫に好かれるかもしれませんね。