Vol.63 食と健康

熱中症予防は水分補給から?

 「夏の暑いとき、脱水症を予防するには水分補給が大事だと聞きます。水分の摂り方のポイントを教えてください」「風呂上がりはまずビール!が習慣になっていますが、よくないのでしょうか」などのご相談が管理栄養士の窓口には寄せられます。
 政府は、これまで毎年7月に実施してきた熱中症予防強化月間を、令和3年度から「熱中症予防強化キャンペーン」として、熱中症対策に関する関係府省庁の連携を強化して広報を毎年4月~9月に実施しています。キャンペーンの真っただ中、熱中症予防と適度な水分補給について見直してみませんか。

■脱水症と熱中症は同じこと?
 どちらも同じと思っている人も多いのではないでしょうか。脱水症は汗をかいたり、水分補給が不足し、体から水分と電解質(ナトリウムなどのミネラル)が失われた状態のことをいいます。夏だけではなく季節に関係なく起こります。
 熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節の機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。脱水と体温上昇の両方の症状が出て、屋外、屋内を問わず起こります。
 暑いとき、私たちの体は、知らず知らずにじわじわと汗をかきます。汗が蒸発するときに気化熱を奪い体温を下げるためです。しかし、発汗で体内の水分が減少すると体温調節ができなくなってしまいます。熱中症の予防策の基本は、脱水症を予防して体温の上昇を抑えることと、暑さを回避することです。

■水分が不足すると
 人間の体の60%は水分でできています。体温調節、栄養素や老廃物の運搬などの働きをして、体の機能維持に大変重要です。通常、体内の水分の量は、1日の水分の摂取と排泄により一定に調節されています。しかし、水分を5%失うと脱水症や熱中症などの症状が現れます。熱中症の重症度は大きく三段階に分かれます。


■いつ?何を?どのくらい? ~水分補給のタイミング~
 日常生活での飲料としての摂取量は、食事などに含まれる水分を除いて1日当たり1.2リットルが目安とされています。水分を摂るタイミングは朝昼夕3回の食事や間食時(10時、15時ごろ)だけではなく、起床時、入浴の前後、就寝前など1日8回を目安にします。特に水分が不足しがちな起床時や入浴後などは、水を飲む習慣をつけるとよいでしょう。
 水分をビールなどで補おうとする人がいますが、それは誤りです。お酒の種類に関係なく、アルコールは尿の量を増やす働きがあります。同様に利尿作用のあるカフェインを含むコーヒーや紅茶もたくさん飲むと、飲んだ量以上の尿が出てしまいます。

 水分補給は水か、カフェインを含まない麦茶がお勧めです。喉が渇くと水を飲みたくなりますね。しかし、喉が渇いたと感じるのは、体が脱水しているサイン。そのため、喉の渇きを感じる前に水分補給することが大切です。多くの方は水分の摂取量が不足傾向だといわれています。平均的に「水をコップ2杯」多く飲めば、1日に必要な水分の量をほぼ確保できます。
  
■運動時の水分補給のポイント
 昔は運動時には水を飲んではいけないという誤った考えがありましたね。運動などで多くの汗をかく場合は、スポーツドリンクや経口補水液など適度な塩分と糖分を含んだ飲み物を飲むようにしましょう。ただし、種類によっては糖分を多量に含むものもあるので、飲みすぎによる糖分の過剰摂取にならないようにご注意を。また、ウォーキングや家庭菜園なども軽い運動と考えますので、発汗量に見合う水分、塩分、糖分を補給することが必要になります。

■合言葉は早めに、こまめに
 高齢者は汗をかいて水分が不足しても、喉が渇くなどの自覚症状がない場合があります。また、子どもは低年齢ほど症状をうまく伝えられません。周囲の方が様子を見て水分補給を促したり、日頃からの意識付けが熱中症予防につながります。「水分補給は、早めに、こまめに」を合言葉に適度な補給を心がけましょう。