Vol.61 ハラスメント

職場における「ジョハリの窓」の効果

 「ジョハリの窓」をご存じでしょうか? 企業のコミュニケーション研修などでも用いられる心理学モデルなので、聞いたことがある方は多いかもしれません。心理学者のジョセフ・ルフトとハリ・インガムによって作られたため、ジョセフとハリから「ジョハリの窓」と呼ばれています。
 「ジョハリの窓」では、自己を以下の4つの部分(窓)で構成されるものとしています。
開放の窓 - 自分も他人も知っている自己
秘密の窓 - 自分は知っているが、他人には知られていない自己
盲点の窓 - 自分は気が付いていないが、他人は知っている自己
未知の窓 - 自分も他人にも知られていない自己

 「開放の窓」が大きいと、飾り立てたり偽ったりする必要がなく、オープンなコミュニケーションができます。一方、誰にも知られていない「未知の窓」の自己は、コントロールできず、活かすチャンスも得られません。「秘密の窓」「盲点の窓」のように、自分と他人に認識のずれがある場合、その原因を探り、受け入れれば、「開放の窓」が大きくなります。例えば、人から「あなたにはこういうところがありますよね」と言われて驚いたとしても、「確かにそういう面があるかもしれない」と受け入れていくと、自己の可能性に気づき「開放の窓」が広がります。

 企業研修で「ジョハリの窓」を用いる目的は、お互いの個性に共通認識を持つことにより、効率的にそれぞれの能力を発揮しやすくなり、「こんなことを言っても大丈夫だ」と思える信頼感が醸成されるからです。それぞれが意見を言いやすいと、新しいアイディアが生み出される機会も多くなります。

 リモートワークが広まったことにより、ちょっとしたコミュニケーションによって相互理解を促進し、信頼関係を築き上げる機会が少なくなっているかもしれません。組織で働くからには、必ず他者との接点が生じます。それなら、その接点が居心地の良いものであったほうが、働きやすさにつながるのではないでしょうか。お互いに信頼し合える風通しの良い組織では、ハラスメントも起こりにくくなります。

 ただし、自己開示を強制するのではなく、「これは人に言いたくない」という意思を尊重することも大切です。あくまでも本人が周囲に知ってもらいたい範囲に留める配慮が、職場の安心、安全のためには肝要です。相互理解と信頼感に基づいた、心理的安全性の高い職場を作るために、「ジョハリの窓」の考え方を参考にしていただければと思います。

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