Vol.58 ハラスメント

Z世代のイメージにとらわれない

 Z世代と呼ばれる10代後半から20代前半の世代の若者たちが、社会で活躍しつつあります。この世代の特徴は、「デジタル(特にSNS)ネイティブ」「平等や公平性を重んじ、既成の概念にしばられない」「多様性、個別性を大切にする」などが思いつきます。コンプライアンス意識が高まっていく世の中で、フラットな価値観を持つZ世代の活躍には期待が高まります。

 さて、人は現実を生きているようで生きていません。イメージの世界を生きていると言えます。それは、“自分らしさ”について考えるとわかります。例えば、自分の過去の経験から、「私は根暗」という自己像を持ったとしましょう。人は、その自己像を“自分らしさ”と受け取り、その内側に自己のあり方を留めてしまうことがあります。つまり、「根暗な自分=本当の自分」と理解し、明るい振る舞いを控えてしまうのです。
 また、私たち相談員は、心理学的な知識を利用して、クライアントや相談者の状態を見立てます。しかし、心理学的知識の内側で判断してしまい、相手が潜在的に持っている可能性に目を向けることができなくなってしまうことがあります。イメージや知識は大切ですが、気を付けないと、現実から離れ、イメージや知識に現実を従わせるという、逆転現象が起こり得るのです。
 そのため私たちは、クライアントや相談者に接するときに、イメージや知識を一旦脇に置き、相手との直接経験の中から得られる情報を大切にします。それは、見る、聞く、触れる、息遣い、雰囲気など、相手との直接的なやり取りの中で感じ取れる経験です。私たちはまず、相手が生きている世界に身を置いて考えるのです。

 いつの時代も「〇〇世代」という呼び方は存在し、その世代に共通する文化や一定の特徴が見て取れます。しかし、その特徴に目を奪われると、現実に起こっていることが隠されてしまう可能性があります。Z世代の若者たちも、社会の中で悩み、挫折し、メンタル不調を訴える人が出てくるでしょう。企業の皆様は、そんな彼らの相談にのることがあるかもしれません。その時に“Z世代の特徴”というイメージや知識にとらわれると、相手の本当の姿を見誤ってしまいます。まずは、直接経験の中に身を置いて、相手の個性や多様性に触れるように心がけてみてはいかがでしょうか。

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