Vol.42 食と健康

コロナ禍での子どもの体型と栄養

 2020年初めから緊急事態宣言を繰り返し、大人だけではなく子どもたちの生活も様変わりしました。「外で遊べなくなり体重が増えてしまいました」「痩せ体型なのにコロナ太りを気にしてダイエットを始めて困っています」「ステイホームでダラダラと食べる癖がつき何とかしたいです」など子どもを心配するさまざまなご相談が管理栄養士の窓口には寄せられます。
 コロナ禍で、子どもたちの食事や体型はどう変化し、どのように対応したらよいのでしょうか。

◆子どもの肥満も痩せも・・・
 最新の学校保健統計調査では、コロナ禍の影響と見られる変化が出始めています。男子で8歳以降、女子で9~11歳の肥満傾向の割合が多く、1977年と2020年を比較すると11歳の男子でおよそ2倍に増加しています。
 一方、痩せ傾向の子どもの増加も見過ごせません。男女ともほとんどの年齢で増加しており、特に15~17歳の女子では、前年に比べ2020年はおよそ1.5倍になっています。実際、摂食障害による痩せで外来を受診する子どもは増加し、低年齢化していることもわかっています。
 コロナ禍によるステイホームが、活動量の低下、食事の回数や量の増加の引き金になり、肥満を増やしました。また、コロナ太りへの不安、休校やオンライン授業による孤立が痩せを増やす原因と見られています。食習慣の基礎ができるのは、小中学生の頃で、将来の健康で豊かな生活を左右します。今を大切にしてほしいからこそ、早めに対処が必要です。

                                   ※令和2年学校保健統計調査より

◆子どもでもわかりやすい「きちんとした食事」
 給食の献立に3色に分けて食材が書いてあるのを目にしたことはありませんか。また、学校の給食だよりでは、子どもたちに日頃の食事バランスをわかりやすくする方法として3色食品群が紹介されることもあります。「3色食品群」とは、食べ物に含まれる栄養素の働きの特徴により、「赤色の食品」「黄色の食品」「緑色の食品」の3つに分類したものです。「赤色の食品」は、肉や魚、卵、大豆、牛乳などで「血や肉をつくる食品」、「黄色の食品」は、ごはんやパン、芋、砂糖、油などで「働く力になる食品」、「緑色の食品」は、野菜や海藻、果物などで「体の調子を整える食品」です。このように分類の仕方が簡単でわかりやすいことから、学校給食の献立表などにも使われています。例えばパンだけの朝食では「黄色の食品」だけですから、「赤色の食品」と「緑色の食品」からも何かを食べましょうということです。

◆さらに「3食」も大切
 厚生労働省は、朝食を食べない子どもが多いという問題があることから「3色食品群」に、1日3回の食事をしっかり食べる「3食」を加えた「栄養3・3運動」を勧めています。「3・3」は「3食・3色」を意味しています。
 コロナ禍の生活の変化が、欠食や過食をより増やし、栄養バランスの乱れだけではなく、生活のリズムを乱しました。規則正しい食事は、生活のリズムを整えることに役立ちます。肥満や痩せを予防、解消するためにも「3・3」を心がけましょう。

◆食事に集中!マインドフルネス
 給食もコロナ禍の影響で「黙食(もくしょく)」になりました。楽しいはずの給食を黙って食べる子どもたちが、当初はかわいそうに思えました。しかし、「マインドフルネス」の実践ととらえると、この機会を学びと考えることもできます。マインドフルネスとは、瞑想の手法を活用して自分の精神をコントロールするものです。「今」に集中して、過去の経験や先入観などにとらわれない心を育みます。食べ物を口に含み、噛み、味わい、飲み込むという一連の動作も、食事に集中することで普段と違った味や香り、食感に気が付くはずです。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5つの基本味をしっかり感じられます。
 実は食欲は胃ではなく脳で感じています。また味覚が低下すると食欲が抑えられなくなることもあります。マインドフルネスを実践してみると、満足感が得られ、食事量のコントロールに役立ちます。食事に集中できなかった子どもも、「黙食」でしっかりと食に向き合えるはずです。

 「食べることは生きること」とも言われます。食事の基本的な習慣を身に付ける大切な時期に、おいしく食べることから食事バランスや食習慣、食事マナーを学べるとよいですね。