Vol.20 コンプライアンス

ワークエンゲージメントとは

日本でもEAPサービスが普及し、従業員の心身の不調に対して企業が早期に対処することは産業保健におけるスタンダードとなりました。しかし、従業員が不調を来たしているマイナスの状態から平常なゼロの状態に戻すこれまでのような対応では、経営指標のような目に見える成果にはつながりにくい側面がありました。

そのため、近年は従業員の健康に焦点を当てて、業績の改善や職場の活性化を目指す「健康経営」という考え方が産業保健のトレンドとなっています。中でも、ワークエンゲージメント(Work Engagement:以下WE)は健康経営の中核を担う概念として、注目が集まっています。

WEとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態のことです。WEが高い従業員は、心身ともに健康で、仕事への態度や感情も良好な状態が続くとされています。また、従業員の健康と前向きな姿勢によって、職場が活性化し、業績の向上や離転職の減少といった労働生産性にも影響を与えることがわかっています。

これまでの研究では、WEを高める要素として、以下の2点が言われています。

1.仕事のサポート:上司からのフィードバックやコーチング、報酬や承認などが十分に与えられる。

2.個人の能力:従業員自身が自分で環境をコントロールできる能力や自己効力感(自分なら目標を達成できるという感覚のこと)を身に着けている。

また、最新の調査では、魚中心の食生活や禁煙など、健康的な生活習慣の重要性も指摘されています。そこはあくまで調査段階であり、健康的な生活習慣が直接の要因と考えられるのかどうか判別できる段階には至っていません。しかし、健康で規則正しい生活ができる労働環境が従業員に有用であることは想像に難くありません。

これらの要素を向上させるため、管理職研修やセルフケア研修といった研修、企業独自の施策など、様々な取組が始まっています。中でも、Crewプログラム(従業員の相互理解を深め、今後の職場について話し合うグループワーク)やジョブ・クラフティング (自分の仕事を「見える化」して、作業に工夫を加えるプログラム)といったプログラムは、その効果が期待されています。

WEのネガティブな側面としては、職場全体ではなく一部の従業員のみのWEが高い場合、労働生産性がかえって低下する場合があることです。WE向上のための取組を職場の一部ではなく、全社的に実施することで、従業員の健康と生産性を向上させ、企業にポジティブなスパイラルを与えることができるのではないでしょうか。

2020日9月17日up