Vol.01 ハラスメント

知見のあるダイヤル・サービス社による最新のパワハラ防止法関連まとめ

2023年7月5日

職場において、優位的な立場に基づいて行われるハラスメントのことをパワーハラスメントと呼んでいます。パワーハラスメントは上司から部下に向けて行われるものと思われがちですが、集団から個人、専門知識のある従業員から知識のない従業員など、その関係性は多岐に渡ります。また、行為者には自覚がなく、指導や注意の範疇と勘違いしていることも多いのが実情です。

近年パワーハラスメントが社会問題化しており、心身の不調を訴えて休職や退職などに追い込まれてしまうケースが散見されます。また、こういった背景を受けてパワハラ防止法が施行されたことで、人事・労務の担当者の方は、社内での対応策について関心を寄せていらっしゃるところではないでしょうか。
今回は、パワハラ防止法、パワーハラスメントへの対応策、具体例などをお伝えしていきたいと思います。

パワハラ防止法とは

パワハラ防止法は、​パワーハラスメント(パワハラ)を防止するための法律であり、​改正労働施策総合推進法の通称で、​大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月に施行されました。この法律は、事業主に職場でのパワハラ防止の措置を義務付けるもので、​労働者をパワハラから守ることを目的としています。

ここでいう「職場」とは、事業主が雇用している労働者が業務をする場所のことを指します。事務所以外でも、労働者が業務をする場所は職場に含まれます。例えば、出張先、業務で使用する車中、取引先との打ち合わせの場所(接待の席などもこれに含まれます)などが該当します。

また、「労働者」とは正社員に限らず、パートタイム、契約社員など、非正規雇用労働者も含みます。また、派遣社員については、派遣元事業主のほか、派遣先の事業主も、措置を講じる必要があります。


●パワーハラスメントの代表的な言動の類型とその例
厚生労働省では、職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動の類型、該当すると考えられる例、該当しないと考えられる例として、下記のような6つの類型と行為の例を挙げています。
なお、下記の該当例はあくまでも例として挙げたもので、パワハラの行為を限定したものではありません。状況によって判断が異なることもあるので、発生時には一つひとつの事案に対して、解析していく必要があります。


代表的な言動の6つの類型該当すると考えられる例該当しないと考えられる例
1 身体的な攻撃
暴行・傷害
●殴打、足蹴りを行う
●相手に物を投げつける
●誤ってぶつかる
2 精神的な攻撃
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
●人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む※1
●業務の遂行に必要な以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
●遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をする
●その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をする
3 人間関係からの切り離し
隔離・仲間外し・無視
●1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる●新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する
●懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせる
4 過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
●新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する●労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せる
●業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せる
5 過小な要求
業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
●管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる
●気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない
●労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する
6 個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
●労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する※2●労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行う
●労働者の了解を得て、当該労働者の機微な個人情報(左記)について、必要な範囲で人事・労務部門の担当者に伝達し、配慮を促す

※1 相手の性的指向・性自認の如何は問いません。また、一見、特定の相手に対する言動ではないように見えても、実際には特定の相手に対して行われていると客観的に認められる言動は含まれます。なお、性的指向・性自認以外の労働者の属性に関する侮辱的な言動も、職場におけるパワーハラスメントの3つの要素を満たす場合には、これに該当します。
※2 プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要です。
※上表は、厚生労働省 「あかるい職場応援団」より引用したものです

●パワハラ防止法の施行背景
パワハラ行為は、被害者が職場で自己の力を十分に発揮できなくなるだけでなく、個人の人格を傷つけるなど人権侵害にもあたる許せない行為です。また、心身共にダメージを与えてしまった場合は、休職や退職、社会復帰が困難になるなど、その人の人生にまで影響を及ぼしてしまうこともあります。

パワハラ発覚後に行為者に話を聞くと、「指導の範囲と認識していた」「みんながやっているから同じような対応をした」「仕事が遅いので自分がやった方が早いと思い、本人から仕事を引き取った。その結果やることがなさそうだったが、悪いことをしたとは思っていなかった」など、まだまだパワハラに対する認識が低い人がいることが分かります。このように、パワハラをしているという自覚がない中で、多くのパワハラ行為が発生しているというのが現状です。

2020年に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」では、「過去3年以内にパワーハラスメントを受けたことがある」と回答した人は31.4%という結果が出ていました。また、都道府県労働局へ寄せられる、パワハラやいじめ・嫌がらせに関する相談件数は増加の傾向です。さらに、パワハラが原因で自死に追い込まれてしまった被害者の遺族が訴訟を起こしたことなどもあり、大きな社会的課題として捉える必要が出てきました。

こういった背景を受け、事業者がパワハラを意識し、防止対策を講じることが広まるようパワハラ防止法が成立・施行されました。会社の経営資源のひとつである「ヒト」についてこれまで以上に意識し、互いを尊重しながらハラスメントのない職場づくりをしていくことが求められます。

パワハラの定義とは

定義としては、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるものといった3つ全てを満たしたものとされています。

➀優越的な関係を背景とした言動
上司から部下というだけでなく、行為者が被害者より専門知識がある、社内でのコミュニティーが広いなど、優越的な立場を背景にして行われるものを指します。抵抗や拒絶することができない関係性であり、被害者はパワハラ行為を受けていると感じていてもなかなか言い出せず、状況が悪化してから明るみになるケースも往々にしてあります。

➁業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
明らかに業務に関係のない内容で、相手が嫌だと感じる言動や行為をすること。たとえ従業員に問題行動があった場合であっても、人格や尊厳を否定するような言動はなど業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、職場におけるパワーハラスメントにあたります。

③労働者の就業環境が害されるもの
業務に支障をきたすほどの精神的、身体的な苦痛を与えられてしまう行為。判断基準としては「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、「同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」となります。

【例】
・業務中、上司が過度のチェックを入れてくる。何度直してもクリアできないうえに、指示がコロコロ変わって都度注意される
・仕事のやり方を巡って上司と話をしてから、上司や同僚から無視されるようになった
・それまで担当していた業務から外され、何の仕事も与えられないまま別室に隔離されている
・気に入らないことがあると暴力を振るわれたり暴言を吐かれたりする。また、必要以上に大きな声で叱責することが日常茶飯事で、部下がおびえながら過ごしている
・上司のミスで会社から指導を受けたのにも関わらず、関係のない部下に「お前のせいだ」などといって、八つ当たりする
・パソコン操作に長けている社員が、苦手な社員に対し「そんなこともできないのか」と繰り返し嫌味を言い、仕事を取り上げてしまう
・社内で一定のコミュニティーを確立している社員が、孤立している社員に向かって暴言をはいたり無視をしたりし、コミュニティーの仲間もこれに順じた行為をする
・営業成績が上がらない社員に腹を立て「お前の存在や顔自体がイライラする」など、怒りに任せて関係のないところで相手を責める

パワハラ防止法に違反した場合の罰則措置

パワハラ防止法に罰則は設けられていませんが、厚生労働大臣が必要と認めた場合には、当該企業に対して、 助言・指導・勧告が行われることがあります。また、従わなかった場合は、企業名が公表されるといったパワハラ防止法違反が行使される可能性があります。

実際にダイヤル・サービス株式会社で受けたパワハラ相談事例

下記のグラフからも分かるように、当社に寄せられた相談内容のうち、相談者の3分の1以上がハラスメントの相談をしています。

では、実施の相談内容はどのようなものなのでしょうか。ここでは、当社で受けたパワハラ相談事例をいくつかお伝えしていきましょう。
※「ハラスメント・人間関係ホットライン年次報告書2021年度版」より抜粋


【事例1】
同僚からのパワハラに2年間耐えてきた。上司には相談していない。神経質だと思われるのではないか、迷惑がられるのではないか、と考えて我慢している。眠れず、死んだ方がいいと思うほど苦しい。

【事例2】
上司の言動により、部下の多くがストレスを感じている。上司はハラスメント防止研
修を受けているが、全く効果がないようだ。

【事例3】
会議のたびに上司が特定の部下を「使えない奴だ」と吊るし上げ、恫喝している。言い方がひどくて聞くに堪えない。

【事例4】
教授の再三にわたる厳しい言動に耐え切れなくなっている。「センスがない」「惰性で研究をしている」などと言う。また、些細なことで学生を怒鳴りつける。

【事例5】
上司から受けたパワハラのことを同僚に相談した。その後、同僚が相談内容を全てその上司に報告していたことが分かり、ショックを受けた。

各企業ができる対策について

パワハラ防止法では、企業に対して下記のようなパワハラ防止の措置義務を課しています。

●企業の方針等の明確化とその周知・啓発
経営者、従業員とも、パワハラに対して正しい認識がないと、パワハラを防止することはできません。まずはパワハラ防止に対する方針を明確にし、周知、啓発するようにしましょう。

ここで、「パワハラ行為とはこういうもの」と具体的に伝えることはもちろんなのですが、「こういったケースはパワハラ行為ではない」という事例も合わせて伝えるようにします。理由としては、指導や教育の範囲内でパワハラに該当しない場合であっても、不快な思いをしたり、精神的に追い込まれたりする可能性があるからです。嫌な思いをすると、自己に原因があっても、「パワハラを受けている」と思い込んで、訴えてくるケースもあります。こういった誤認を避けるためにも、理解しやすいように啓蒙していくようにしましょう。

また、もし自分が相談を受けたら……というケースにおいても認識を深めてもらう必要があります。よくあるケースでは、「同僚に上司からのパワハラ被害を伝えたところ、同僚が上司に直談判してしまい、関係性が悪化してしまった」というようなことがあります。パワハラについては、原因を究明しないと分からないことがたくさんあるほか、指導のつもりだった上司にいきなり「ハラスメントだ!」と攻撃のようなことをしてしまうと、今度はその上司が精神的なダメージを追ってしまう可能性もあります。

●相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
パワハラを受けていると感じていても、一人で抱え込んでしまうケースが多くあります。
本来は相談すべき相手である直属の上司が行為者であった場合はなおさらでしょう。しかし、パワハラ行為をそのままにしておくと、精神的なダメージが重なり、業務への影響が出てくるようになります。そして、ミスを繰り返すことでさらにパワハラ行為が助長されてしまうことも考えられます。
とにかくパワハラ行為などの問題点は、早いうちに解決へ導くことが重要です。そのためにも、気軽に相談できる窓口を設け、適切に対応できる体制づくりを整えておきましょう。

●事後の迅速かつ適切な対応
パワハラが発生後は、迅速かつ適切な対応をすることで、被害の拡大を食い止めることができるでしょう。パワハラの影響は放置しておくと、想像以上に広範囲に広がります。被害者がダメージを受けただけでなく、SNSでの拡散やニュースに取り上げられたことで社外へ明るみになると、取引先からの不信感を招いてしまうことにもなり兼ねません。早期解決に向けて、動くことが重要です。

●上記と併せて講ずべき措置
相談者や行為者のプライバシーを保護するために、必要な措置を講じることや周知することが重要です。例えばパワハラの被害を受けたと訴えてきた従業員と面談をしたとします、その際に、内容を録音したりメモにとったりして記録として残すようにすると思います。その内容は決して部外者に漏洩しないよう細心の注意を払うべきです。また、パワハラを訴えたことを理由に、不当な配置転換や出向などを指示されることは禁止されています。こういったことが発生しないよう、全社員の意識を統一しておくことも忘れないようにしましょう。

なお、ダイヤル・サービスのパワハラ防止法に対応したサービスである「ディアログ」では実名通報、匿名通報、半匿名通報※での通報が可能。通報や相談があった翌日に実名、匿名にかかわらず、すべての内容を「個別の報告書」にまとめて人事・労務担当者に提出します。 このセクションで相談者の保護から運用が可能で、何かあった際に迅速に対応ができるのが強みとなります。また、海外からの従業員が多い国際的な企業では、多言語の対応が可能な外部相談窓口が必要となります。当社では17カ国語の言語にも対応しておりますのでお気軽にご相談ください。
※内部通報制度に基づいた外部窓口の仕組みとして、「半匿名通報・相談」を設けています。通報・相談者の保護のために匿名性を保ちつつも、企業が通報・相談内容に対して調査できるよう、クライアントポータルを介して通報・相談者と連絡を取ることができます。

こういった相談窓口を専門とした第三機関では、様々なケースを想定したうえで対応してもらえます。ハラスメントのような繊細な問題は、社内の人事・労務担当者が対応するには、なかなかハードルが高いこと。業務に集中するために、第三者機関の活用を視野に入れるというものおすすめです。

パワハラ防止法の対策として活用できるダイヤル・サービスのサービスについて

パワハラ防止法が施行されてから、相談窓口への問い合わせも増えてきました。当社では様々な商品をラインアップしておりますが、ここではパワハラ防止法の対策として活用できるサービスについてご紹介していきます。

●パワハラ防止法に対応した「ディアログ」
ハラスメントだけでなく、コンプライアンスに関する相談にも対応している「ディアログ」。プロの電話相談員が従業員の通報や相談を全てお聴きするサービスです。パワハラ防止法が施行されたことで、企業は従業員の相談窓口設置などの対策を講じることが義務化されました。本サービスは、外部の相談窓口としてご利用していただけます。

●パワハラ、セクハラなど各種ハラスメントの相談全般に特化したホットラインサービス「ハラスメント・人間関係ホットライン」
匿名性の高さが特徴のパワハラ、セクハラなど各種ハラスメントの相談全般に対応している外部相談窓口サービスです。

従業員を対象に、さまざまなSOSや相談を受け付けています。ハラスメント相談は、経験値や専門知識がないとなかなか対応が難しいものですが、当社は経験を積み重ね、多くの企業や大学への導入実績があります。単に話を聞くだけでなく、相談者の意志を尊重したうえで、報告、問題解決することを目的としています。

●中小企業向け、ハラスメント・メンタルヘルス・コンプライアンスホットラインサービス「マモリナ」 シリーズ
2022年4月から中小企業もパワハラ防止法の義務化対象となりました。社内に相談窓口を設けて対応するというのでももちろん法律的に問題ありませんが、人事・労務担当者が兼務することになるため、どうしても対応が難しくなってしまうケースがあります。そこで、外部の相談窓口を設置するという選択肢があることは覚えておくといいでしょう。

「マモリナ」シリーズは、ハラスメント以外、メンタルヘルス、コンプライアンス相談にも対応している商品。従業員300名以下限定のプランとして、会社と従業員を守っています。人気の高いWEB窓口で、24時間365日対応が可能です。

従業員の理解を得て、適切な備えを

パワーハラスメントの被害者は抱え込んでしまうことが多く、徐々に仕事で実力を発揮できなくなったり、出社できなくなったりするなど、様々なダメージを負うことになります。また、行為者は自分の指導がパワハラとは思わず、訴えられてから気付くということも少なくありません。

こういったことからも、パワーハラスメントを防止するには、まずは従業員の理解を深めることが重要です。また、企業側は、起こってしまった場合も想定して、相談窓口を設け、対処方法を検討しておくようにしましょう。
本文でもお伝えしましたが、ハラスメントの相談は、専門知識や経験値がないとなかなか難しいもの。相談業務を専門としている外部の相談窓口を、よき伴走者とするのも賢明な選択ではないでしょうか。

ハラスメント・人間関係ホットライン

パワハラ・セクハラなど各種ハラスメントの相談全般に対応する外部相談窓口

当社のサービスを網羅したサービス資料を差し上げます。

当社のサービスを網羅したサービス資料を差し上げます。
また、メルマガでは定期的に人事の方向けに有益な最新情報を発信しています。

メールマガジン登録

資料請求

資料をご請求いただき、誠にありがとうございます。
後ほど、資料ダウンロード用URLを記載したメールをお送りさせていただきます。
その際、メールもしくはお電話させて頂く場合がございますので、予めご了承ください。