職場におけるパワハラチェック。職場環境をチェックしてパワハラを事前に防ぐには?
2024年2月19日職場でのパワーハラスメント(以下:パワハラ)への対策がますます注目される中、自社の取り組みが十分か懸念される担当者の方もいらっしゃるでしょう。労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)で制定された対策は、相談窓口の設置や調査体制の整備などが主ですが、パワハラは未然に防止することが重要です。
法で定められた対策には含まれていませんが、従業員に自身の行動をセルフチェックしてもらうことで、パワハラ被害を最小限に抑えたり、未然に防ぐだけでなく、職場の対人関係におけるストレスも低減されることが期待されます。
この記事では、社内でのパワハラ防止策を考えている人事・労務担当者の方に向け、従業員自身にパワハラを受けていないか/していないかを確認してもらうセルフチェックや、パワハラが起きやすい職場環境の特徴をご紹介します。
パワハラとは
職場のパワハラとは、職務上の地位や、業務上必要な知識の有無などによる優越的な関係を背景とする、業務上適切な範囲を超えた行動によって、労働者の働く環境を害する行為を指します。
代表的な言動の例として、厚生労働省は以下の6つを挙げています。
身体的な攻撃 | 殴ったり、物を投げつける行為など |
精神的な攻撃 | 人格否定や、必要以上の叱責など |
人間関係からの切り離し | 集団で無視したり、席を隔離するなどの行為 |
過大な要求 | 業務上必要ない行為や、本人の対応能力をはるかに超えた業務を課すなどの行為 |
過小な要求 | 本人の能力に見合わない、程度の低い業務を課すなどの行為 |
個の侵害 | 職場外でのことや、私的なことに過度に干渉する行為など |
注意すべきは、上記のようなパワハラが全て意識的に行われているわけではなく、故意でなくても自身の言動がパワハラに該当している場合もあることです。
故意ではないパワハラとしてよく上げられる例に、世代間の価値観の違いによるものがあります。知らず知らずのうちに、相手にストレスを与えていることもあります。個人によりパワハラに該当するしないの認識、程度が異なりますし、働き方や上司との関わり方、部下への指導の仕方は、時代と共に日々変化しています。上司が、かつて自身が経験したことをそのまま部下に対して行うと、パワハラに該当してしまう可能性があるのです。社内でのパワハラの発生を未然に防ぐには、従業員が日々知識をアップデートしながら、自らの言動を日々チェックし、省みる必要があります。
パワハラ対策におけるセルフチェックの重要性
社内でパワハラが発生した場合、その対応には大きなコストがかかります。相談への対応はもちろんのこと、事実調査やパワハラ認定の妥当性の判断、当事者らに取るべき措置の検討やフォローアップなど、パワハラへの対応には数段階のプロセスを踏む必要があります。また、相談・調査担当者だけでなく、事実調査の際には当事者や周囲の第三者の時間も拘束しなければならず、職場の効率を下げてしまうことにもなります。
パワハラ対策のコストを最小限に抑えるために、従業員に自身の職場における悩みがパワハラに該当しないか、また自身の日頃の言動はパワハラには当たらないかチェックしてもらい、該当事案がある場合は迅速に対応することで、次の被害を防ぐことができます。また、セルフチェックを通じて社内の状況を把握・対策し、相手に不必要なストレスを与えない、パワハラとならない言動を心がけてもらうことで、パワハラの発生を未然に防ぐことも重要です。
パワハラを防止するために、チェックすべき内容
パワハラが発生する要因は、性格や価値観、情緒の安定性などの個人が抱える要因と、人間関係や管理職の責任の比重が重いこと、ワークライフバランスの充実度などの組織要因に分けられます。ここでは、従業員の間で起きているパワハラ被害を明らかにし、対策したり、パワハラの発生を未然に防止するためにどのような項目をチェックすべきかについて紹介します。
パワハラ被害を受けていないかチェックする
まずは、現在従業員自身がパワハラ被害を受けていないかチェックしてもらうことが重要です。問題を早期に発見して被害を最小限に抑え、問題が深刻化することを防ぐ一助となります。
以下では、パワハラ行為を具体的にイメージする為、先述した厚生労働省が挙げているパワハラ行為の6類型に沿って、具体例を列挙します。なお、厚生労働省ではパワハラ被害の種類を診断するサイトを用意しているので、従業員のセルフチェックの一環として利用が可能です。
1)身体的な攻撃
・足で蹴ったり、殴ったりしている
・物を投げつけて、相手の身体に当てたことがある
・襟首や腕をつかみ、説教している
・いきなり胸ぐらを掴んだことがある
・髪を引っ張ったことがある
2)精神的な攻撃
・同僚の前で、無能扱いする言葉をかけた
・皆の前で、些細なミスを大声で叱責している
・「会社に何しに来てるの?」「帰れ」などと言うことがある
・「役立たず」「給料泥棒」などと言うことがある
・部下に「ブス」「ハゲ」などの言葉をかけることがある
3)人間関係からの切り離し
・他の社員との接触や協力依頼を禁じている
・陰口を言ったり、悪い噂を流したりする
・挨拶されても無視し、会話しない
・1人だけ別室で仕事させる
・一人だけ仲間はずれにする
4)過大な要求
・就業間際に過大な仕事を毎回押し付ける
・一人ではできない量の仕事を押しつける
・自分の指示が誤っていたが、始末書を書かせる
・達成不可能なノルマを与える
・連日、徹夜仕事を強要する
5)過小な要求
・本人の職務とは関係のない雑務を強要する
・他の社員よりも著しく少ない量の仕事しか与えない
・掃除や草むしりなどの仕事のみ与える
・部下を特定の業務のない部署に異動させる
・仕事を何も与えない
6)個の侵害
・休みの理由をしつこく聞く
・不在時に机の上や鞄の中を勝手に物色する
・GPS付きの携帯電話で行動を監視する
・スマホを勝手にのぞく
・家族や恋人のことをしつこく聞く
これらの項目に記載されている行為を受けている従業員がいた場合は、パワハラによる被害を受けている可能性が高いため、事実確認を行う必要があるでしょう。
また、記載したこれらの具体例は、パワハラの対象行為の全てではないことに注意が必要です。
パワハラ行為を行っていないかチェックする
厚生労働省では、先述したパワハラ被害の種類を診断するサイトと同じように、パワハラ行為を行っていないかを診断するサイトも提供しており、自身がパワハラ行為を行っていないかを診断することが可能です。
パワハラ行為は自覚なしに行っていることもあります。日頃から従業員に自身の言動のチェックを推奨することで、意識向上と行動の変容を促すと良いでしょう。
職場内でパワハラが発生する可能性をチェックする
厚生労働省は2020年に、「職場のハラスメントに関する実態調査」を行い、2021年にその結果が公表されています。調査では、
・パワハラ
・セクハラ(セクシャルハラスメント)
・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント、
・介護休業等に関するハラスメント
・顧客等からの著しい迷惑行為
・就活ハラスメント
の発生状況や対策の進捗について、全国の従業員30人以上の企業(団体も含む)6,426社から回答を回収しています。また、日本国内で働く10,500人に上記のハラスメントを受けたり、行ったりした経験の有無や、勤務先でのハラスメント予防・解決の取り組み状況について訊ねています。
ここでは、8000人の労働者を対象に、現在の職場でのパワハラ経験の有無と、以下列挙するパワハラが起こりやすい職場の特徴が現在の職場に当てはまるかを訊ねた設問とその結果をご紹介します。担当者の方は、従業員向けにアンケート調査を行うなどして、設問にて列挙されている特徴に自社が当てはまらないかをチェックすると良いでしょう
①職場の人間関係
・上司と部下のコミュニケーションがない/少ない
・従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的に見られる
・職場の雰囲気がくだけすぎている/上司が寛容すぎる
・同僚同士のコミュニケーションが円滑でない
・仕事以外のことを相談できる同僚がいない
②職場の労働環境
・残業が多い/休暇を取りづらい
・業績が低下している/低調である
・遵守しなければならない規則が多い/高い規律が求められる
・ハラスメント防止規定が制定されていない
・他部署や外部との交流が少ない
③会社の雰囲気
・失敗が許されない、失敗への許容度が低い
・従業員間の競争が激しい
・悩みや不満、問題を上司や会社に伝えにくい
④職場の人員構成
・従業員の年代に偏りがある
・従業員が男性ばかりである
・女性管理職の比率が低い
また、職場の人間関係に関する内容では「上司と部下のコミュニケーションがない/少ない」という項目において、パワハラを受けていない人の回答割合が15.1%であったのに対し、パワハラを受けた人は37.3%と、回答に大きく差が出ました。また、「従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的に見られる」という質問においても、両者の回答率に大きく差が出ていることから、職場おけるコミュニケーション不足や、過剰にくだけて相手を尊重しない雰囲気などが対人関係によるストレスを引き起こし、ハラスメントに繋がりやすくなると考えられます。
職場の労働環境に関するもので最も回答割合の差が大きかったのは、「残業が多い/休暇を取りづらい」という項目です。パワハラを受けていない人の回答割合が13.4%であったのに対し、パワハラを受けた人では30.7%という結果となりました。パワハラは、価値観や情緒の安定性だけでなく、ストレス負荷の高い職場環境によって誘発されやすくなることが指摘されています。パワハラを起こした本人のみに責任を問うのではなく、業務改善や人事管理の見直しなど、会社としてストレスが溜まる労働環境を改善することが大切です。
また、「ハラスメント防止規定が制定されていない」という項目も、パワハラを受けた人の職場とそうでない人の職場との間で回答率に大きく差が出ました。パワハラを受けていない人で、職場がこの特徴に当てはまると回答した人は4.3%でしたが、パワハラを受けた人では21%となりました。2022年より、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)に基づいて、事業者はパワハラを行ってはならない方針を定めて周知・啓発すること、行為者は厳正に処罰する方針や対処の内容を就業規則等の文書に規定することを求められています。調査が行われたのは2020年であるため、各企業においてまだ対策が進んでいなかったことも考えられますが、まだ規定が制定されていなかったり、規定の周知が進んでいない企業は、法的義務を遵守し、規定の策定と周知を急務とする必要があります。
会社の雰囲気についての内容では、パワハラが発生しやすい職場の特徴として「失敗が許されない、失敗への許容度が低い」ことが挙げられました。目標達成や時間的な制約に追われ、小さなミスも許されない職場風土では、従業員の心身に過剰なストレスがかかることになります。企業として改善出来る部分は対処する必要があるほか、従業員の心身のケアにも取り組むことで、パワハラの発生だけでなく、長期欠勤、離職などへの対策ともなるでしょう。
まとめ
パワハラに苦しむ従業員をなくすためにも、パワハラ事案への対応コストを削減するためにも、セルフチェックを通じて職場の状況を把握し、適切な対策を講じることが重要です。また、パワハラチェックを行って個々の従業員が自らの言動を省みることで、職場のコミュニケーションにおけるストレスを減らすことにも繋がります。
先述したように、パワハラが起きる要因には性格や価値観、情緒の安定性や、物事の捉え方などの個人が抱える要因と、人間関係や仕事におけるストレスやプレッシャーの強さ、ワークライフバランスの充実度などの組織要因があります。
セルフチェックを通じて個人の行動変容を促すことはもちろんですが、職場環境に関するチェックも行うことで、パワハラ発生のリスクとなる組織そのものの体質も変えていくことが必要でしょう。
当社が提供する研修や相談窓口サービスのご紹介
近年では社会全体として、パワハラは未然に防ぎ、発生時には適切に対処すべきであるという意識が定着しつつあります。
法令の観点からも、2019年に労働施策総合推進法が改正され、2022年4月からは全ての事業主に対しパワハラ防止対策を講じることが義務付けられました。法によって定められた防止措置の内容は、相談窓口の設置やパワハラ発生時に適切に対応する体制の整備などが主となっており、事前の防止策として、パワハラを行ってはならない方針の明確化と周知が義務付けられています。周知に際しては、社内報やパンフレット、社内ホームページなどにて行う方法もありますが、外部を利用した研修に参加してもらうことで、従業員の関心がより深まることが期待できます。
当社では、企業や学校、病院、公益法人などの様々な事業者に向けて、「ハラスメント研修」サービスを提供しています。ハラスメントの発生要因や法的リスク、判断基準についてはもちろん、ハラスメントにならないコミュニケーションやアンガーマネジメントの活用など、パワハラを未然に防ぐためのスキルの獲得を目指します。
一般社員や管理職、経営者など、異なる職務階層の方に向けた最適な研修内容を選択頂けるほか、既にハラスメントを行ってしまった行為者の方に向けた行動変容プログラムもご用意しています。
また、パワハラなどのストレスをチェックするサービスである「こころ・めーた」では、厚生労働省の調査票を利用したストレスチェックを実施し、結果をご報告します。10問まで無料で独自の質問を追加可能なほか、実施後のPDCAサイクルの取り組み方などについても、専用サポートデスクにご相談頂けます。
パワハラを未然に防ぐ手段をお探しの担当者の方は、当社にお声がけ頂ければと思います。
当社のサービスを網羅したサービス資料を差し上げます。
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