Vol.16 人事・採用

降格人事とは? 実施するときの方法や注意点、違法となるケースについて解説

降格人事は、会社内における従業員の役職や地位、職務上の資格を上位から下位に引き下げる人事です。会社側のやむ得ない事情であっても、降格人事の対象となった従業員には減給や降職、精神的ダメージなど不利益を与える処分です。会社の対応が不適切であれば、他の従業員からの信頼度も失い、多くの優秀な人材が会社を辞めていく可能性もあるでしょう。そして会社の業績は悪化し、社会的評価も下がるなど降格人事は会社にとっても大きなリスクなのです。従業員の将来にも影響を及ぼす降格人事は、検討を重ね慎重に進めていく必要があります。この記事では、降格人事の概要と処分内容、実施するときの方法やトラブルを起こさないポイント、違法となるケースについて解説します。

降格人事とは

降格人事とは、社内における従業員の地位を上位から下位へ引き下げることを指します。引き下げるのは、組織内の職位や役職、職務上の資格や等級などです。職位の引き下げとは例えば部長から課長になる、役職についていた従業員を一般の社員に変更するなど組織構造の上位から下位への異動です。職務上の資格の引き下げとは、職能給に反映する社内評価が下がることです。職位の引き下げとは異なり、基本給の変動に影響を与えるのが一般的で、基本給が減額となります。そして職務上の等級とは、従業員一人ひとりの職務の難易度や重要度などに応じて賃金などの待遇が決まることで、職務等級が下がれば、給与も減額されることになります。従業員は地位が下位へ引き下げられたことで、賃金額も下げられるなど待遇面が変わるケースが多々あります。さらには従業員にとって降格人事は、仕事への向上心やモチベーションが低下するなど精神的にも大きなダメージを受ける処分でもあります。不透明な人事評価による降格処分、降格と減給の関連に不満が生じるなど、従業員に不利益を感じさせることになれば、従業員に訴訟を起こされるなどトラブルの原因にもなりかねません。そのため、降格人事を実施する場合、会社側は慎重に進める必要があります。

降格人事の種類

降格人事には、人事降格と懲戒処分の2種類があります。
人事降格とは、会社が従業員と結んでいる労働契約に基づき行使できる権利として従業員を降格させることを指します。人事降格には、降職と降格の2通りがあります。降職では職位を引き下げることで、従業員の役職を解任して下位の役職に変更します。また降格では、従業員の経験や技能、スキルなどによって与える職能資格や給与等級を引き下げます。降格は等級が下がるほど、基本給も減額するのが特徴です。前者の降職の場合は、給与を引き下げるとは限りません。
一方の懲戒処分とは、会社が従業員と結んでいる労働契約上の義務に反する行動をとった従業員に対して、会社が懲戒権を行使して懲罰的に降格させることです。その行動とは例えば、従業員のパワハラやセクハラ行為、無断欠勤、遅刻、不正行為、犯罪行為など会社に不利益を生じさせるようなものです。会社は、どのような行動が懲戒処分になるのか就業規則に明確に記載する必要があります。また、懲戒処分は降格では済まされず退職処分を下すケースもあります。

降格人事の主な処分内容

降格人事にはいくつかの処分内容があります。主なものとして、減給とポストのみの変更があげられるでしょう。減給は降格人事に合わせて実施されることが多い処分内容です。減給には人事降格のうち降職を行った場合と、降格を行った場合の2つのケースが考えられます。降職を行った場合は、例えば部長職だった従業員を解任して課長職に降ろすなど役職や職位の引き下げによる処分のため、基本給が変わることはほとんどありません。しかし役職手当や管理職手当などについては減額が考えられます。もう一方の降格を行った場合は、従業員の職能資格や給与等級を引き下げる処分のため、直接的に結び付く基本給が下がる可能性もあります。また降格処分による異動で、等級落ちとなり減給となる場合もあります。
ポストのみの変更は、減給を伴わずポストのみが変わる降格処分です。代表的な例として、社内組織の再編などでこれまで就いていたポストが無くなるため下位のポストに就くケースや、人事制度の見直しで役職が統廃合されてポストが変更するといったケースなどがあります。この場合、対象となった従業員に問題があったのではなく、あくまでも会社側の都合による降格となります。そのため役職が引き下げられても給料の減額はありません。

降格人事の理由となるケース

降格人事が行われるケースとしては、次のようなものがあります。
・勤務態度の怠慢・・・遅刻や早退、無断欠勤を繰り返すなど勤務態度の怠慢が顕著である場合
・規律違反行為の発覚・・・就業規則に違反行為を繰り返した場合や、法律に違反する行為をした場合
・役職が不適任と認識されたとき・・・管理職として管轄する部署の成績低下や業績悪化、部下を指導する能力に欠けているなど役職に不適任とみなした場合
・成績の悪化・・・会社が設定している目標に対して、結果が出せない場合や改善が見られない場合
・ハラスメントが認められる場合・・・会社で起こるハラスメントにはさまざま種類があります。共通して言えるのは、相手に対する言動によって不快な気持ちにさせたり脅威に感じさせたりすることです。最も代表的なハラスメントの一つがパワーハラスメントです。パワーハラスメントとは、上司と部下、先輩と後輩など職場での上下関係を利用して、強い立場の人が弱い立場の人に対して嫌がらせをする行為です。被害を受けた従業員が精神的、身体的な苦痛を訴えた場合、降格人事の理由となります。性的な嫌がらせや不快な言動によるセクシャルハラスメントは異性間だけでなく、同性間であっても成り立つハラスメントです。その他、妊娠や出産、育児に対する嫌がらせに該当するマタニティハラスメント、高圧的な言動で相手を萎縮させるモラルハラスメント、性別による嫌がらせをするジェンダーハラスメントなどがあります。これらハラスメントが認められた場合
・配置転換・・・該当する従業員の問題ではなく、部署の異動、転勤や出向などの事情によるもの

降格人事が認められないケース

降格人事は、就業規則に定められた規定によって実施されるものです。出産後に時短勤務を希望したから、退職してもらいたい従業員だから、などと会社側の勝手な都合で降格処分を行えば、会社側の権利濫用とみなされ降格人事は認められないでしょう。降格人事が認められない4つのケースは次の通りです。
・就業規則に降格人事の理由が明記されていない・・・降格処分は会社の就業規則に定められた規定に基づいて行われるものです。従業員の行為が、就業規則にある降格事由に該当する場合のみ実施できるもので、経営者や人事部などの勝手な判断で降格処分を実施することは認められていません。そのため、就業規則には根拠となる規定を明確に記載しておく必要があります。
・重すぎる懲戒処分は無効になる場合も・・・懲戒処分では規律違反行為の程度と比較して重すぎる処分は無効になる、というルールがあります。降格人事についてもこれと同様に、規律違反行為の内容と比較して降格処分が重すぎないかを検討する必要があります。
・同意のない大幅な減給・・・降格人事により賃金を大幅にカットする行為は当事者の従業員の経済的な不利益が大きいため降格人事が認められない場合があります。降格人事により減給が決定した場合は、その旨を当事者に事前に説明し同意を得た上で行います。また労働基準法第91条によって「1回の処分で減給する額が平均賃金1日分の半額を超えてはいけない」と上限が定められています。その規定を超えての減給は違法となります。
・人事権や懲戒権の濫用・・・会社が従業員の待遇を決定する権利を人事権といいます。人事権を行使して降格人事を実施することは違法ではありません。しかし、気に入らないから辞めさせたいなど公正さに欠ける理由による降格人事は、人事権、懲戒権濫用とみなされるでしょう。
・性差を理由にしている場合・・・男女雇用機会均等法では、男性女性といった性差を理由とした雇用や待遇を禁止しています。これは降格人事においても同様で、降格条件や降格の優先順位に男性女性の性差別を行う行為は許されていません。
・限定した職種で労働契約を結んでいる・・・会社と従業員が労働契約を結ぶ際に、限定した職種で契約を結ぶケースがあります。その際、会社側が一方的に、従業員の同意がないまま労働契約で結んだ職種以外の職種に変更することは人事権の濫用とみなされます。

降格人事で起こる弊害

会社にとって降格人事は生産性の向上や業務の改善を図る有効な手段でもあります。しかし実際には、会社内にはさまざまな弊害が出るのも事実です。その最も大きな弊害となるのは、降格人事の対象となる従業員のモチベーションの低下です。昨日までは上司だった人が、部下になるといったことが当然起こり得ることで、降格人事を受けた当事者はプライドが傷つけられ、業務へのやる気を失う人もいるでしょう。さらに社内の人間関係にも溝が入ることが考えられます。会社の対応の仕方によっては、降格人事の対象となった従業員が退職を希望することもあります。その結果、周囲の従業員にも不信感を与え、離職する従業員が増加したり、会社の業績が悪化したりすることもあり得ます。降格人事は降職や減給など従業員にとって不利益な処分が伴うことがほとんどです。降格人事の対象者だけではなく、周囲の従業員への影響も考慮することが大変重要になってきます。

降格人事でトラブルを起こさないポイント

会社側の一方的な都合で降格人事を実施することはできません。間違った対応をすれば、従業員から訴訟を起こされるなどトラブルに発展する恐れもあるでしょう。降格人事を実施する場合の注意すべきポイントがいくつかあります。説明していきましょう。

・就業規則に降格人事の規定があるかを確認する・・・降格人事を実施する場合には、会社の就業規則に根拠規定があることが必要です。実施するためには従業員の行為が降格人事の事由に該当していることが前提であり、そのため制度内容や判断基準を明確に定めておくことが重要です。
・降格人事を実施する前に注意や指導を行う ・・・降格人事を行う前にやるべきことは、問題のある従業員に注意や指導を行い、改善を促すことです。客観的な理由を明示することで、従業員はこれまでの自分の行いを整理し、何が問題だったのかを自分で受け止め心を入れ替えることもあり得るでしょう。また、いきなり降格人事を言い渡すのではなく、段階的な手順で進めることで降格人事の正当性が認められやすくなります。
・降格人事の根拠を用意する ・・・降格人事を実施する前に、人事権や懲戒権の濫用ではなく社会的通念上妥当である根拠や証拠を集めておきます。同僚や関係者への聞き取りや調査を行い、書面やデータなど客観的に判断できる証拠を集めておくことが必要です。降格人事の対象となる従業員に、事前に改善する機会を与えたかも重要な要素です。懲戒処分に該当するような行動があった場合には、従業員の行動履歴がわかる書面やデータなどを残しておくことです。
・従業員のモチベーション低下に注意する ・・・降格人事は、対象となる従業員のモチベーション低下に繋がります。降格人事を伝えた後はしばらく見守ることが大切でしょう。また対象者だけでなく、周囲の従業員への影響も大きく、動揺している従業員がいればこまめに声を掛けて相談に乗るなどコミュニケーションを取りながらフォローしていくことが不可欠です。

降格人事を行う手順

降格人事は適切な方法で対応しなければ違法となるケースもあります。では実際、降格人事を実施する際、何からどう始めていけばよいのでしょう。降格人事の手順を説明していきます。
1 事実関係を調査し客観的に判断する
降格人事を実施する際は、まず事実関係を正しく確認することから始めます。例えば、成績悪化や能力不足、勤務態度の不良、業務命令違反、ハラスメント行為など浮かび上がった事柄について、具体的にどのような問題が生じているのか詳細な調査を行う必要があります。降格人事の対象となる従業員だけでなく、周囲への聞き取りも行い明確な事実となるデータや証拠があるのかどうかを確認することが重要です。具体的な調査結果に基づいて事実に差異がないかを確認し、降格人事が本当に必要なのかを判断します。従業員同士の噂話や状況証拠だけでは降格人事を行うことはできません。

2 降格人事の対象となる従業員の話を聞く
降格人事の対象となる従業員の弁明や改善の機会を設けます。懲戒処分として降格人事を行う場合は、処分の有効性が判断されるため弁明の機会を設けることが必須です。一方の人事異動としての降格処分の場合は必須ではありません。しかし必要ない場合でも、降格処分の根拠となる事実を改めて見直すことで評価をしなおす場合があるため従業員の弁明を聞く機会は設けることが望ましいでしょう。またこうした機会を従業員に与えることで、反省と改善を促すことも期待できます。降格人事の対象となる従業員が反省の弁を述べ、その後の行動により改善の見込みがあると判断した場合は、一定期間、就業時の様子を見てから最終的な判断を下すことも可能です。

3 降格方法の検討と就業規則の確認
降格人事が必要と決定した場合、人事異動で対応するのか、懲戒処分に該当するのかなど具体的な処分内容を見極めます。従業員の成績不良、スキルや能力不足などが原因の場合は人事異動による降格が多く見られます。一方の懲戒処分は重大な業務違反、勤怠不良、業務命令違反などが根拠となるケースがほとんどです。また就業規則に降格人事の規定がなければ実施できないため、必ず就業規則の規定を確認する必要があります。


4 減給の可否を検討する
降格人事により該当する従業員の給与を減給するのかを検討します。その際、役職手当のみを減らすのか、基本給を減らすのか、職能資格を下げるのかなどを慎重に検討します。また降格人事と減給についての関連付けが就業規則に明確に記載されているのかも改めて確認します。就業規則にそうした内容が不足している場合、減給が実施されない可能性があります。また基本給を減額する際の注意点として、就業規則の規定のほかに、基本給減額に合理性があり適正な手続きがなされていること、人事評価の過程に不合理や不公正がないことを満たす必要があります。これらの要件を満たしていない場合には違法と判断される可能性があります。

5 従業員に通達する
降格人事の処分内容が決定したら、降格人事の対象となる従業員に通達します。その際、正しく理解してもらうために、具体的な処分内容や理由を丁寧に説明します。併せて文書などで正式に通知します。降格人事後の待遇やポジション、その理由も明確に記載するなど、降格人事の対象となる従業員が理解を深め、納得できるよう記載内容に配慮することが肝心です。通達するタイミングですが、降格人事は精神的にも大きなダメージとなる場合があるので処分の直前に言い渡すのではなく1〜2週間程度のゆとりを持って伝えるのが望ましいでしょう。伝え方は個人面談とし、他の従業員が行き来しない個室で冷静に真摯に向き合う姿勢を見せます。これまでの功績や評価している点をしっかり伝え、誠意を持って対応することで降格人事の対象となる従業員は不当な評価をされていないという納得度が上がり降格人事への不満が軽減されるでしょう。また降格人事を通達された従業員の多くは、自分に自信をなくしたり、働く意欲を失ったりするケースが見られます。そうした際には、今後の活躍に期待しているむねを伝え、 元のポジションへ復活できる条件を示すほか、キャリアプランなどを提示するなど再チャレンジできる環境があることを伝える配慮が必要です。降格人事の対象となった従業員が展望を持って、今後も業務に従事できるよう励ますことも大切です。

コミュニケーションスキルが求められる場面でもある

ダイヤル・サービスにも、降格人事に関する相談が寄せられることがあります。降格人事は、職位や給与に関わる
ことで、告げられた本人の中では、生活を抜本的に見直す必要があるなど非常に大きな問題です。降格人事を告げる場合は適法であっても、従業員には「なぜ降格人事となったのか」を、しっかり説明をすることが重要でしょう。上司はコミュニケーションスキルが求められる場面となります。

降格人事は従業員の納得を得ることが大切

降格人事は従業員にとって減給や降格、降職など不利益となる処分を伴うことがほとんどです。さらに降格人事の対象となる従業員のモチベーションの低下や、社内の人間関係の悪化などが生じる可能性もあるため、対象となる従業員に処分内容の理由を明確に説明し、理解を深めてもらい、不満が残らないよう誠意を持って対応することが必要です。降格人事に納得が得られなければ、他の社員の信頼も損ねることになってしまいます。トラブルにならないよう進めるためには、降格人事に関する規定を就業規則に定めていることが最重要です。処分を下す際には、それが本当に正当な理由や目的であるのかを慎重に判断することが求められるでしょう。

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