Vol.19 コンプライアンス

コンプライアンス遵守とは? 意味や事例と企業が行うべき対策

2023年9月26日

コンプライアンスという言葉を目にすることが多くなってきた昨今。企業の大小に関わらず、このコンプライアンスを意識することの重要性が求められています。そして、コンプライアンス違反をすることで、多大なダメージを受けることも少なくありません。
今回は、コンプライアンス遵守とは、コンプライアンス遵守の重要性、コンプライアンス違反の種類・事例などについてお伝えしていきます。

コンプライアンス遵守とは?

コンプライアンス(compliance)は、「法令遵守」という意味を持つ言葉です。一般的に法令とは、国会が定めた法律(=法)と政省令や条例・規則(=令)を指しています。企業活動では、法律や条例等のほか、倫理感や道徳、一般的なルール、就業規則、企業行動規範などを含めたものを法令としています。この法令を守ることは、健全な企業を構築し、継続させていくためには重要なポイントとなります。

遵守は「じゅんしゅ」と読みますが、同じ読み方で順守という言葉があります。このふたつの意味は基本的には同じで、「決まりに従うこと、守ること」です。
まずは、それぞれについて掘り下げて見ていきましょう。
遵守の遵は、「尊」という漢字と「しんにょう」から成っています。「普段使ったり、目にしたりする機会が少ない漢字」というイメージをお持ちの方が多数かと思いますが、熟語としては「遵法」(法律に背かないこと、法律を守ること)、「遵奉」(法律や教えを守ること)、恪遵(つつしんで従うこと)などがあります。
一方順守の順は、順うで「したがう」と読みます。「順う」としてはあまり使うことがないと思いますが、そういった意味も持ち合わせている漢字ということをお伝えするために記しておきます。熟語としては、文従字順(文章がよどみなく、筋が通っていること)、順序(決めた基準に従った並び方、配列)、順次(次々に順を追って行うこと)などがあります。
もともと順守は遵守の代用漢字として取り入れられたもの。1954年、遵守が当用漢字から外される候補に挙がっていたため、マスコミが順守を使うようになりました。結果として遵は当用漢字に残ることになったのですが、マスコミ内では引き続き順守を使うことが慣習化していることもあり、順守・遵守のいずれも目にする機会があるというわけです。
このような経緯はあるものの、どちらも「決まりに従うこと、守ること」という意味で使われています。しかし、使われているシーンを分析してみると、以下のような違いがあります。

●遵守は公用文、教科書、ビジネスシーンなどで使用されている
順守よりも古くから使われている遵守。公的な文書である公用文、文部科学省が認定している教科書、ビジネスシーンなどでは、遵守が使われています。

●順守はマスコミでの使用が慣習化している
テレビや新聞では、順守を使っています。マスコミの慣習として順守を使うようになっているからです。

順守は遵守の代用漢字ということからも分かるように、それぞれ同じ意味を持つ言葉です。順守・遵守のいずれかを使うことは間違いではありませんが、業界やシーンごとに慣習的に使い分けがされているため、そのルールに則って使うというのが現実的でしょう。

「コンプライアンス遵守」と「法令遵守」という言葉を目にするシーンが多くなってきました。しかし、コンプライアンス自体が、法令遵守という意味を持つため、コンプライアンス遵守という言葉は、よく目にすることはあっても実際は重複表現となります。
コンプライアンスはビジネスシーンでよく耳にする言葉で、法律や条例などのほか、社会のルールや常識、就業規則などを遵守する場合に使われます。一方法令遵守は、法や条例を遵守するという意味合いで使われています。

コンプライアンス遵守の重要性
コンプライアンスに取り組まないと、企業の信頼性や経営状況の悪化、事業継続の危機につながる可能性があります。よって、コンプライアンスの重要性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。ここではさらに項目別に確認していきましょう。

●社会的信頼の継続や向上
コンプライアンス違反が社会的に明るみになると信用を失い、「法令を守らない企業」というレッテルを貼られるようになってしまいます。一度信用を失うと顧客離れにつながり、回復するのには相当な時間がかかってしまうでしょう。株価や時価総額にも影響がでるようになり、経営の継続が困難になってしまうケースも考えられます。しっかりとコンプライアンスを意識して取り組むことは、社会的信頼をキープしたり向上させたりするには非常に重要なポイントとなります。

●健全な経営活動
コンプライアンスにより、粉飾決算や偽造、脱税などの不正行為が未然に回避しやすくなります。不正行為を防ぐことは、企業の健全な経営活動の実現には重要です。企業の価値向上にもつながるでしょう。

●従業員の定着
コンプライアンス違反は、取引先や顧客だけでなく、従業員にも悪影響を及ぼします。従業員が企業に不信感を持てば、離職を選択する可能性があります。離職によって人員が減ってしまうと、残された従業員の負担が増えて、そこに不満を持った従業員が辞めていくといったような、負の連鎖につながってしまうこともあります。経営資源「ヒトモノカネ」のひとつである人を失うことは企業にとっては大きな損失です。従業員を定着させ、気持ちよく働いてもらうには、コンプライアンスは重要な要素となります。

●刑事罰や行政処分の回避
コンプライアンス違反によって、経営が立ち行かなくなるケースだけでなく、刑事罰や行政処分など社会的な制裁を受けることもあります。目先の利益を求めて行ったコンプライアンス違反は、社内で常套化しても、その不正に気付いている従業員はきっといます。発覚は時間の問題と考えていいでしょう。コンプライアンス違反の抱える大きなリスクを頭に入れながら、経営を続けていくことが重要です。

コンプライアンス違反の種類・事例

ひとくちにコンプライアンス違反といっても、その種類や事例は多岐に渡ります。

●雇用関連 
従業員間でのハラスメント行為、個人のプライバシー侵害、差別行為などが挙げられます。機械の整備不良など労働災害につながるようなコンプライアンス違反も存在します。
特に最近はハラスメント問題が多く、マスコミでも取り上げられています。休職、退職だけでなく、自死に至ってしまうケースもあるのでしっかりと対策をとるようにしましょう。
さらに、社員の過労自殺によって7.7億円の残業代未払いが発覚したという事件も、実際に起こっています。

●消費者関連 
欠陥商品や健康に被害を及ぼすような商品を販売することは、コンプライアンス違反にあたります。また、誇大広告を使った集客、悪徳商法※なども違反行為です。最近は、個人情報の流出なども問題になっていますが、通信教育サービス大手の大規模情報流出事件は記憶に新しいところではないでしょうか。
※悪徳商法の種類とその概要
・点検商法
無料点検をきっかけに家庭を訪問し、「屋根の瓦がずれていて落下のおそれがある」、「水道の水が汚染されており健康被害が起こる可能性がある」、「白アリ被害にあっていて、すぐに対処しないと家が倒壊する」など、不安に感じる点検結果を伝え、必要のない工事契約をしたり高額の商品を売りつけたりする商法。
・工事商法
「今すぐなら特別価格で契約する」、「割引対象は先着順で残りひと枠!」など、即決すれば得をするということをセールスポイントにして決断を迫り、工事契約をさせる商法。
・かたり商法
市役所や消防、警察の公的機関から来た人間と偽って信用させ、工事契約を迫ったり、必要のない商品を売りつけたりする商法。
・マルチ商法(連鎖販売取引)
「会員になった上で会員拡大したら、多額のボーナスが得られる」と、商品の販売員として勧誘して販売活動をさせ、連鎖的に販売組織を拡大させていく商法。「ネットワーク・ビジネス」、「マルチ・レベル・マーケティング」、「ピラミッド・セリング」とも呼ばれている。違法ではないが、特定商取引法で厳格なルールが定められている。紹介料が発生するキャンペーンを実施している企業などは、違法行為とならないように事前にキャンペーン内容をチェックする必要がある。
・キャッチセールス
人通りの多い路上や駅前などの雑踏の中で呼び止め、近くの喫茶店やあらかじめ用意しておいた事務所などに連れ込み、契約するまで帰さないといった商法。何時間も拘束されることで「早くこの状況から脱したい」という気持ちが強くなり、脱出=契約するしかない、という状況に追い込まれてしまう。

これらの行為は、違法とは知らずに行われているケースもあるようです。社内で実態調査をするなどし、問題が大きくなる前に確認することも重要です。

●投資関連 
経営状況が悪くなると、中には粉飾決算をして赤字を黒字に見せかける企業があります。この場合、売上に対して課税されるために、納付や資金繰りが困難になるケースも考えられます。例えば、格安旅行会社による悪質な倒産事件を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この事件のように社会に露呈した場合、信用を失うという結果も避けられないでしょう。ほか、相場の操縦、利益供与、インサイダー取引なども投資関連のコンプライアンス違反です。

●環境関連 
森林破壊や大気、水質、土壌汚染、不法投棄など、環境や生態系を破壊してしまうような行為をすることなども、コンプライアンス違反です。特に汚染問題では、「四大公害病」として、「イタイイタイ病」、「四日市ぜんそく」、「水俣病」、「新潟水俣病」が高度経済成長期に大きな社会問題となりました。これは、消費者問題にも発展したケースで、多くの健康被害者が不自由な生活を強いられることになってしまいました。

●競争関連(独占禁止法に抵触) 
商品の数量や価格を競合同士が裏で取り決めるカルテル、入札に参加する企業同士が事前に受注する企業や金額などを決めて、競争をやめてしまう入札談合など、自由経済社会の仕組みを崩すような行為もコンプライアンス違反です。複数の企業で価格などを操作すれば、より安く、より良い商品を選ぶことができなくなるなど、自由経済社会における消費者のメリットが失われてしまいます。

●その他 
事業外であっても、従業員などが不祥事を起こした場合などは、企業の信用がダウンしてしまう可能性があります。最近は名前と顔が公表されると、その情報をもとにSNSなどで素性を簡単に調べられるようになりました。社名が明らかになることもあるという点は認識しておきましょう。

コンプライアンスを遵守するために企業が取り組むポイント

コンプライアンス違反をすることは、思った以上に大きなダメージにつながってしまうことがあります。ただし、対策をすることで回避することは可能です。コンプライアンス違反を防止するための対策としては、下記の5つを実施しておくといいでしょう。

●対策1:社内リスクを洗い出して対処
社内でどのようなリスクが潜んでいるかを洗い出し、そのリスクが現実のものとならないよう、最小限の被害や損害で済むように対策を考えておきます。このような方法は近年「リスクマネジメント」として重要視されています。リスクマネジメントとは、組織が抱えているリスクを網羅的に把握して、重要と思われるリスクを抽出した上で、その対応策や事後策を併せ持たせたものです。いくら注意していても、リスクが露呈してコンプライアンス違反に発展してしまうことはあります。事前にリスクを把握しておくことは、企業が継続していくためにも重要です。

●対策2:社員のコンプライアンス教育の徹底
経営側がコンプライアンスについて把握していても、社員の理解がなければ、違反が横行してしまう可能性があります。ハラスメントや横領などが発生してしまうのは、意識の低さが招いた結果でもあります。階層別に研修を受けさせるなど、自分事として常に認識できるような形式で実施することがポイント。また、1回では定着しませんので、定期的に実施することが求められます。研修は、社内の人事担当が行っても構いませんが、外部の研修サービスを利用するというのもひとつの方法です。メリットとしては、多くの研修を実施していることで経験やノウハウが蓄積されているほか、常に最新の情報を提供してもらえるという点が挙げられます。

●対策3:内部通報者の保護を徹底
2006年4月に「公益通報者保護法」が施行されたことで、適正な通報ルートの確保が求められるようになりました。この法律が施行された背景には、「コンプライアンス違反で世間を賑わせる企業が少なくない」ということがあります。この法律は、コンプライアンス違反に気付いた通報者が、どのようなところへ通報すれば不利益な扱いを受けないかというルールを明らかにしたもの。通報する内容についても明示されている、というのが法の特徴です。
しかし、法の施行後もコンプライアンス違反が発生していました。こういった実情を受けて、適切な対応の確保や通報者の保護がしっかりなされるよう、2022年6月改正法が施行されています。
コンプライアンス違反は、社内では当たり前になりすぎて、特に新入社員などは「違反」ということに気付かず、「社内
ルール」として認識していることもあります。また、不正に気付いても告発後の降格や減給、左遷などを恐れて、やり過ごしてしまっている社員がいることもあるようです。しかし、コンプライアンス違反をそのままにしておくことは、消費者や従業員などに被害が及ぶだけでなく、社会的信用を失うことにもなり兼ねません。倒産となれば従業員だけでなく、その家族までもが路頭に迷ってしまうこともあるでしょう。
企業が健全な経営を続けて存続していくためにも、内部通報者の保護という観点をもって、普段から風通しのいい環境づくり、コンプライアンス違反があった場合に通報しやすい環境づくりが大切です。ただし、相談窓口が社内にしかないと、「コンプライアンス違反に関係している人に知られて、立場が悪くなってしまうかもしれない」と思って言いだせない場合もあります。

ダイヤル・サービスでできること

企業の相談窓口として、50年以上の実績があるダイヤル・サービスでは、これまで多くの相談を受けてきました。そしてより多くのニーズに応えられるよう、相談内容や世情、法律の改正などをもとに様々なサービスを開発・提供し続けております。そのような中、コンプライアンスについては、内部通報受付・ハラスメント相談の社外窓口サービスとして「ディアログ」というサービスを提供しています。

<ディアログ ホットラインサービスの概要>
日本で初めて通報窓口サービスを提供したダイヤル・サービスがご用意しているサービス「ディアログ」は、社内で発生するコンプライアンス違反をはじめ、パワハラ、メンタルヘルス問題の相談を受け付けています。こういった外部窓口を設けることは、コンプライアンス体制を強化し、人事・労務の担当者の負担軽減にもつながります。
ダイヤル・サービスの「ディアログ」のおすすめポイントとしては、有資格者の電話相談員が従業員の通報や相談を全てお聴きするという点。経験値や傾聴力の高さから、通報・相談者が最も伝えたい内容を整理しながらお聞きすることが可能です。お聴きした内容は、翌日中に企業の人事・労務の担当者様に報告書として提出するといった迅速な対応にも定評があります。
通報・相談に対する一般的な留意事項に関する弁護士からのコメントをお伝えすることができるほか、平日は21時まで、土・日・祝も電話窓口を開設し、終業後や休日(年末年始(12/29~1/4)を除きます)などでも電話でお話できる体制を整えております。

ダイヤル・サービスには、多数の相談窓口サービス(ホットラインサービス)があります。ご利用していただいている企業・大学・自治体などの、約9割が「ダイヤル・サービスのホットラインサービスは役に立っている」と答えてくださっています(2021年度 当社アンケートによる調査結果)。また、社会保険労務士、公認心理師、産業カウンセラーなど資格を持った相談員がお話を傾聴し、従業員の皆さまが安心して通報・相談できる窓口の実現に努めております。
通報の内容や社内への要望などは、報告への同意を得たうえで分かりやすくまとめて提出しています。報告書は電話相談員が作成し、一定のクオリティが保てるように、サービスマネージャーが確認してからご報告しています。

また、コンプライアンス研修もサービスとしてご提供。現役の相談員が豊富な通報事例をもとにコンプライアンスの基本知識を提供いたしますので、受講される皆さまにとっても有効な研修となると思われます。一般従業員向けと経営者向けをご用意しているので、ぜひいずれもご活用いただき、コンプライアンスの推進につなげてください。

コンプライアンスの大切さは社内全体で共有を
コンプライアンスは意識の違いによって、結果が大きく変わってきます。
最近は、全社的にコンプライアンス違反が常套化していた中古車販売店がクローズアップされて世間を賑わせています。これは、利益のアップを優先させて、コンプライアンスを軽視した結果によるものです。認識の低さが社内にまん延してしまうと、このような事態になり兼ねませんので、日ごろからコンプライアンスへの意識が高まるよう、取り組んでいただきたいと思います。

企業倫理ホットライン

健全な企業活動を守るためのコンプライアンス通報窓口

当社のサービスを網羅したサービス資料を差し上げます。

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