Vol.09 コンプライアンス

コンプライアンスとは? コンプライアンスを意識することの重要性

2023年8月15日

健全な経営を続けている企業が多い中、コンプライアンス違反を起こして社会を騒がせている企業も少なくありません。コンプライアンス違反は、企業の社会的な信用が低下するだけでなく、その企業の商品を使用している消費者の生命や身体、財産などに被害が生じる可能性があります。また、会社の評判が落ちることで、人材の確保が難しくなることも考えられるでしょう。
今回は、コンプライアンスとは何か、注目されている理由、違反事例などをお伝えしながら、コンプライアンスを意識することの重要性について考えてみたいと思います。

コンプライアンスの意味

コンプライアンス(compliance)は、「法令遵守」という意味を持つ言葉です。一般的に法令とは、国会が定めたルールである法律と政省令や条例・規則などの総称。さらに企業活動においては、法令という位置づけの中に、倫理感や道徳、社会一般のルール、就業規則、企業行動規範などが含まれます。これらを守ることが、企業活動を健全に継続させていくためには重要になります。

コンプライアンスが注目されている理由

2006年4月に「公益通報者保護法」が施行(2022年6月改正法が施行)されたことにより、コンプライアンス違反に対して、適正な通報ルートの確保が求められるようになりました。また、2022年4月に中小企業でも義務化された「改正労働施策総合推進法」(通称:パワハラ防止法)は、記憶に新しいところではないでしょうか。これらの法律が施行されたことによって、企業は社会の要請に対して真摯に向き合う姿勢が強く求められるようになり、コンプライアンスへの注目度がアップしたと思われます。
コンプライアンス違反は、企業ブランドを損ねることにもなり兼ねません。企業ブランドを維持するためにも、適切な対応が求められている点は認識しておきましょう。
さらに、昨今は個人がSNS等で発信したことで、コンプライアンス違反が発覚するケースもあります。小さな火種でもすぐに外部に流出・飛び火しやすいという現状を考えても、コンプライアンスに対する意識を高めておく必要があるでしょう。

コンプライアンス違反の発生要因とその内容

様々なコンプライアンス違反が報告されていますが、どのような要因があるのでしょうか。ここではいくつかの要因や違反内容を挙げて解説していきます。

●【要因】行き過ぎた競争心理→【コンプライアンス違反内容例】誇大広告やおとり広告による集客
不動産の仲介会社を例にしてみましょう。不動産業者にも色々な業態がありますが、仲介会社は売主や貸主の代わりに買主や借主を探して契約する、ということを主な業務としています。契約が成立すれば仲介手数料が入り、それが売り上げとなるため、1件でも多くの契約をとることが営業スタッフには求められています。そこで、誇大広告やおとり広告を出して自分の会社に来店させようと、コンプライアンス違反をする不動産業者がいます。また、会社では規制しているのに、営業成績を上げたい営業スタッフが勝手に違反広告を出してしまうケースもあるようです。
「会社の売り上げをアップしたい」と思うことは間違ってはいませんが、そのための行為がコンプライアンス違反になってしまっては本末転倒と言えるでしょう。

●【要因】パワハラによる恐怖心、風通しの悪さ→【コンプライアンス違反内容例】営業成績の改ざん、ミスの隠蔽
営業部署は目標を設定し、それを達成するために日々営業活動を行っています。すべての会社・営業部署が該当するわけではありませんが、営業報告のミーティングにおいて、目標未達成者が全員の前で、上司から叱責を受けるという事例を聞くことがあります。叱責を受けると、中には萎縮してしまったり、上司の声を聴くだけで恐怖心を感じてしまったりする人がいるようです。このような状況になると、怒られることを回避するために、営業で仕事をとってくるのではなく、ひとまず数字を改ざんして報告し、「いつか辻褄を合わせればいい」と考えてしまうことも。また、部署ごとに成績を競い合っている場合は、部署ぐるみで改ざん報告をするケースもあるようです。
また、ミスをした際に、ミスへの指摘だけでなく、人格を否定されたり、大きな声で怒鳴られたりしていると、「ミスを報告すると必要以上に怒られて、嫌な気持ちになるし怖い。じゃあミスを報告するのをやめよう」と間違った心理が働いてしまうことがあります。ミスを隠蔽することは法律に触れる内容ではありませんが、就業規則の規定によっては処分対象となるケースもあります。隠ぺいの内容によっては、社会に大きな影響を与えてしまう場合もあるでしょう。重大な事故、事件が起きてしまう前に、報告しやすい体制づくりをしておくということが重要です。

●【要因】不完全なチェック体制→【コンプライアンス違反内容例】不正経理・横領
横領などが起こる要因として、不完全なチェック体制が挙げられます。経理部門など、直接売り上げを出さない部門は、人件費などの関係から小規模になりがち。経理部門は何十年も一人が担当し、結果的に莫大な金額を横領していたというニュースが散見されています。また、集金してきた現金を横領し、会社には未収金として報告する、顧客へ架空の請求書を提示して横領するなどの事例もあります。支店を任されている店長や支店長などでは、売り上げを過少報告して、差額を横領するケースもあるようです。
会社からの信頼がなければ、経理やお金の管理は任されないでしょう。しかし、このような事件が起こっていることも事実です。当たり前のことですが、お金に関わることは一人に任せるのではなく、必ず複数でチェックするようにしましょう。

●【要因】上司、管理職の意識が低い→【コンプライアンス違反内容例】利用者に被害が発生
コンプライアンス違反は、上司や管理職の意識の低さから起こることもあります。最近では、老舗旅館による法令違反がニュースで大きく取り上げられました。これは、レジオネラ症発症者の利用施設の一つに同旅館があったことで県が聞き取り調査をしたところ、旅館側が湯の入れ替えや塩素注入を適切に行っていたと虚偽の報告をしていたというもの。しかし実際は、年に2回しか湯を入れ替えず、消毒用の塩素注入も怠っていたことが判明。水質検査によって、基準値の最大3,700倍のレジオネラ属菌が検出されてしまいました。社長は会見で「レジオネラ菌が大した菌ではないという認識があった」、「塩素のにおいが自分の体質に合わない」と語っていました。
意識の低さから、旅館側もこのような大事になるとは思っていなかったようですが、県の条例では「連日使用する循環浴槽は週1回以上すべての湯を入れ替え、残留塩素濃度を一定以上に保つ」と定められています。これを遵守しなかったことは、企業としては大きな過失。健康被害を出し、社会の信用を失ってしまったという、「認識が低かった」では済まされない事態となってしまいました。

コンプライアンス意識が高い会社・低い会社の特徴

では、コンプライアンスに対する意識の違いはどのようなところにあるのでしょうか。
コンプライアンス意識の高い会社の特徴としては、内部通報制度に対する従業員の理解が進んでいるということが挙げられます。制度の目的や仕組み、手続きを理解している従業員は、何かあった場合も適切に通報するため、大事になる前に事態を収束・解決させることができます。また、役員などの経営層が率先してコンプライアンス研修を受講するなど、常に新しい知識を吸収している会社も意識が高いと言えるでしょう。学ぶことで、軽微にみえる通報内容であっても、会社全体の問題と受け止めることができ、大きな問題に発展する前から改善しようとする姿勢が生まれているからです。
一方、コンプライアンス意識が低い会社は、内部通報制度に対する従業員の理解がないことが特徴として挙げられます。この状態では適切に通報されないケースが考えられるため、リスクの早期発見と損害を最小化する機会を失う可能性が高くなります。社内外からの信用も失い、離職率のアップや業績の悪化など負の連鎖に陥ってしまうかもしれません。また、社内における意識の乖離も、会社としてコンプライアンス意識の低さを引き出してしまう要因です。経営層と人事・労務の担当者のコンプライアンスやハラスメントに対する知識の理解などに乖離があると、研修等が形骸化してしまう恐れがあります。さらに、上司・管理職の意識が低い場合は、「コンプライアンスに違反しているけれど、上司がこの判断をしているなら問題ないだろう」と、違反に染まってしまう従業員が増えてしまうこともあります。会社の常識が社会の非常識ということに気付かず、法令違反をしたまま引継ぎを行っている企業もあるようです。また、たとえ違反に気付いても、「声を上げたいけれど、言っても改善しないだろう」と諦め、「こんな会社じゃ働けない」と見切りをつけて、退職してしまう人が出てくる可能性があります。

コンプライアンス意識を高めるためのポイント

コンプライアンス意識を高めるには、下記のようなポイントをおさえておくといいでしょう。

●内部通報窓口の設置と理解促進
コンプライアンス違反に気付いても、通報窓口がない、もしくは機能していない場合は、発覚が遅れて影響の範囲が拡大してしまう可能性があります。これらを回避するためには、まずは内部通報窓口を設置するところからはじまりますが、設置して終わりではありません。経営層や管理職、人事・労務の担当者だけでなく、全社員が設置の目的や仕組み、手続きを理解し、しっかり機能できるようにしておくことが重要です。

●定期的な情報発信や啓蒙活動
定期的に研修を実施したり、ハンドブックの制作・配布・読み合わせなどをしたりして、啓蒙活動をしていきます。また、経営層からメッセージを発信し、「コンプライアンスを意識するのは当たり前のこと」と自然に思ってもらえるようにしましょう。

●意識調査を実施
意識調査を実施することで、従業員のコンプライアンス意識のレベルが数値化できます。調査結果を見て、意識や理解の低さが目立ったところを改善するようにすると、コンプライアンス意識が徐々にレベルアップしていきます。

●通報~調査・是正にいたった案件の情報共有
案件を共有することは、通報~調査・是正にいたった流れについての理解がすすむだけでなく、「こんな対応をしているんだ!」といった、社内体制への信頼感につながります。
法改正によって、多くの企業が通報窓口の設置と周知を行い、窓口の存在自体は一般的になってきました。今後は窓口の信頼性を確保するために、運用状況を適切に発信できるかどうかが、通報者が安心して窓口を利用できるか否かのカギになると思われます。

●指摘しあえる環境づくり
コンプライアンスについてある程度周知できたら、通報する前に、
「それはまずいのでは? コンプライアンス違反だと思うよ」
「そうかな。意識が低かったね」
などと、言い合えるような環境づくりにも注力したいところです。

ダイヤル・サービスの相談窓口に寄せられたコンプライアンス違反の事例

ダイヤル・サービスにも、コンプライアンス違反に関する様々な相談や報告が寄せられています。ここではいくつかの事例を紹介していきます。

●会社の備品や消費期限切れの商品を持ち帰っている
備品はもちろんのこと、消費期限切れであっても、その商品は会社の持ち物です。自宅に持ち帰って私物化している場合は、窃盗罪に問われることがあります。

●人手不足が解消されないまま、サービス残業が常態化している
人手不足は、サービス残業をする理由にはなりませんし、そもそもサービス残業は労働基準法に抵触しています。残業代の支払いは企業の義務で、違反した場合は罰則が設けられています。

●ある業務をするための資格を保有していないが、無資格のまま業務をさせられている
有資格者が行わなければいけない業務は法令で定められており、無資格者が行うことはコンプライアンス違反となります。

●副業は禁止されているはずだが、SNSで副業していることを発見した
就業規則内に「副業禁止」の記載がある会社で副業をした場合は、コンプライアンス違反となります。副業を認めている企業が増えていて、自分の会社も大丈夫だろうと勝手な解釈をしている従業員がいるようですが、副業ができるかできないかは、法律ではなく就業規則で決められているものです。
解釈が誤っているため、罪悪感なくSNSにアップしているケースが最近増えています。この現状をふまえて、副業が禁止なのかそうでないのか等、今一度周知徹底するとよいかもしれません。

●自分だけ有給休暇の申請が許可されない
有給の取得は、基本的に労働者の自由です。企業が明確な理由もなく取得を拒んだら、コンプライアンス違反になります。ただし、繁忙期でどうしても認められない、その人がいないと業務の運営ができない場合などは、「時季変更権」を主張することが可能です。これはあくまでも変更なので、ほかのタイミングで取得させなければなりません。また、この相談では、「自分だけ」というのが気になるポイントですが、企業側は明確な理由があるなら、本人が理解できるような説明が必要です。ない場合は、有給申請を許可しなければなりません。

ダイヤル・サービスで提供可能なサービス

コンプライアンスを意識するための重要性をお伝えしてきましたが、弊社でご提供できるサービスは下記のようなものがあります。ぜひ参考になさってください。

●窓口の設置に関するサービス
・コンプライアンス違反の外部通報・相談窓口「企業倫理ホットライン」
企業倫理ホットラインの窓口は2003年1月にスタート。通報者から電話が入ると、まずは窓口の説明を行って、通報者が納得したら相談を聞き取り、内容をまとめて通報者の了解を得ます。それを報告書にして、通報が入った翌日中に人事・労務の担当者に送付するという流れです。

※下記のグラフからも分かるように、ご契約社数は増加傾向にあります。

・中小企業向けの外部通報・相談窓口「マモリナコンプライアンスホットライン」
従業員300名以下の企業様限定プラン。2022年6月1日施行の公益通報者保護法ガイドラインに対応しており、無理のない金額で始められる、中小企業様向けにご用意した外部通報・相談窓口です。WEB窓口が基本なので24時間受付が可能。通報者は、「実名」「匿名」「半匿名」の選択ができます。オプションとして電話窓口の追加をご用意。様々な資格を持つ経験豊富な相談員が会社と従業員を守ります。
2021年度の通報では、対人にまつわる通報(2021年グラフのうち、「不正・違反」「ハラスメント」「人間関係」の合計値)が全体の47.5%を占めており、前年比7.2%増となっています。

●啓蒙活動
・経験値の高い講師が担当「研修窓口担当者向け研修」、「コンプライアンスやハラスメントの階層別研修」
社内の立ち位置によって、理解しておくべき内容や方向性は異なります。そこでダイヤル・サービスでは、人事・労務の担当者向け、管理者向け、一般階層向けなど階層を分けた研修をご用意しています。知識や経験値のある講師が担当いたしますので、安心してご用命ください。

常に意識することが重要

コンプライアンス意識の高い会社は、社会からの信用が得られるだけでなく、社員の働きやすさ、離職率の低下などにつながり、安定した経営を継続できるようになります。人事・労務の担当者は、常にコンプライアンスを意識し、改善点があればすぐに対応するように心がけることが重要でしょう。

企業倫理ホットライン

健全な企業活動を守るためのコンプライアンス通報窓口

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