Vol.03 ハラスメント

パワハラとモラハラの違いとは?定義や起こる原因、解決方法について具体的に解説

2023年7月6日

ハラスメントという言葉が一般化して久しい昨今。ハラスメントとは英語で「嫌がらせ」を意味する言葉で、日本では、精神的や肉体的にダメージを与えるなど、相手に対して人間としての尊厳を失うような行為をすることを「ハラスメント」と呼んでいます。

ハラスメントには様々な種類がありますが、職場では、パワーハラスメント(パワハラ)といった優位な立場を利用して行われるハラスメントの報告が多くなっています。
そのような中、モラルハラスメント(モラハラ)が、職場内でも報告されるようになりました。
モラハラは​、モラル(道徳・​倫理)に反した嫌がらせのことです。パワハラ同様、モラハラについても職場で問題視されているのが現状です。

これらのハラスメント増加に伴い、企業は予防のための対策などがこれまで以上に重要視されるようになっています。

パワハラとモラハラの違い

パワハラは、​上司や先輩、専門知識があるなど優位な立場を利用し、暴言や暴力、威圧的な行為を行うことなどを指します。主に職場で起こることが多く、パワハラを受けて心や体に傷を負った従業員が、休職や退職に追い込まれることもあります。​一方​モラハラは、​モラルに反するような精神的苦痛を与えるいじめや嫌がらせ、言動などを指します。​また、職場だけでなく、家庭内でも起こるというのもパワハラと違う点です。

パワハラの定義

パワハラとは、優位な立場を利用し、業務の適正範囲を超えた注意や暴力を与えることです。人格や尊厳を傷つける言動でもあり、これにより、パワハラを受けた側は、不安感、うつなどの精神的な症状のほか、頭痛、​胃痛、​高血圧などの身体的な症状が現れることがあります。
厚生労働省では、職場のパワハラとは、下記の3つすべてを満たすものと定義しています。

●優越的な関係を背景とした言動
●業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
●労働者の就業環境が害されるもの

なお、客観的にみて、業務上必要な指示や指導はパワハラに当たりません。よって、業務上の注意で嫌な思いをしたとしても、それが受けた側の明らかなミスや怠慢などであれば、いくらパワハラだと訴えてもそれは受け入れられません。

パワハラは、役職を持つ上司が部下へ行うハラスメントと認識されがちですが、専門知識のある従業員から専門知識のない従業員、集団から個人など、優位性を利用したものであればパワハラに含まれます。パワハラ行為はずっと昔からあったことですが、2000年代より前は「社内いじめ」などと呼ばれていました。しかし当時は、いじめを受けている側にも原因があるという認識を持っていた人、上司のいうことは絶対という間違った常識を持っている人がいたことで、表面化しにくかったというのも事実です。

そのような中、​2001年にパワーハラスメントという和製英語が提唱されます。このパワーハラスメントがパワハラと略され、通称として認知されるようになりました。このようにパワハラとは日本発祥の言葉です。

以降、パワハラという言葉の意味や行為、事件などが広くマスコミで取り上げられるようになるにつれて、意識が変わってきた企業が多くなっていきます。また、パワハラを受けた本人が自死に至ったことで、遺族が訴訟を起こすケースなどが表面化するなど、現代社会の大きな問題として捉えられるようになってきました。

一方、旧態依然とした企業が存在するのは否定できない点でもあります。そのような中、2020年6月に大企業、​2022年4月に中小企業で、「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が施行されました。この法の施行は、パワハラを認識することの重要性を企業や従業員に改めて植え付けることとなり、パワハラの相談件数増加にもつながっています。なお、このパワハラ防止法において、​企業には以下の4つの防止措置を講ずることが義務付けられています。

●職場におけるパワーハラスメントに関する方針の策定と労働者への周知
●パワーハラスメントを行った者に対する厳正な対処方針の策定と労働者への周知
●相談窓口の設置と労働者への周知
●相談に対して適切に対応するための体制の整備

モラハラの定義

モラハラとは、言動や態度などによって相手に精神的なダメージを与える行為のことです。暴力など肉体的な苦痛ではなく、暴言、威嚇などが該当します。具体的には、無視をする、罵倒する、馬鹿にする、人格を否定する、束縛する、脅すなどが挙げられます。

モラハラは、自己主張が苦手で思いやりのある優しい人、真面目な人が受けやすいと言われています。一方加害者の特徴は、自己愛が強く、ストレスの発散先を求めている人などとなっています。

これまでモラハラは、主に家庭内や恋人同士などで散見されてきました。加害者は、外での評判が良い人というケースが多く、モラハラが行われていることはなかなか表面化しないというのが特徴のひとつです。身体的な暴力ではないため、傷跡やあざなどが見られないというのも、分かりにくさにつながっています。たとえ被害者が訴えても「あの人がそんなことをするはずがない。考えすぎだし、怒られているあなたにも原因があるのでは」と相手にしてもらえないこともあります。

また、「お前はダメな人間だ。一人では生きていけないから感謝してなんでもいうことを聞け」など、人格を否定され、命令され続けることで、受けた本人は「自分はダメな人間だ。注意されても仕方がない」と本気で思ってしまうこともあり、モラハラを受けているという自覚がないまま、精神を病んでしまうケースも報告されています。モラハラを受けていると認識していても、反論した後の逆襲を恐れて、我慢し続けるという人もいるようです。

このような精神的に人を追い込むモラハラですが、最近では職場でもこの被害が報告されるようになってきました。上司などから受けるパワハラと違って、同僚や部下などからも受けることがあります。朝会社に行ってあいさつをしても無視される、意味もなく笑われる、見下す、おかしなあだ名で呼ばれるなど「嫌だな」と感じるようなことを繰り返され、被害者は精神的に追い詰められていきます。また、わざと会議などに呼ばず、情報共有のないまま業務を間違った方向へ進めさせ、それをミスとして罵倒するなどもモラハラの一種です。過度な業務量を与えられて連日残業している人を見て、手伝いもせず、「あの人のようにはなりたくないよね」などと、仲間内で人格を貶す発言をするというようなこともモラハラです。

残念なことに、モラハラは周囲を巻き込んでいくこともあります。個人から個人への攻撃だったものが、モラハラを見ていた周囲の人までもが加害者と同じような心理になってしまうケースなどがその例です。そうなると被害者はもっと孤立するようになり、職場での居場所を失い、休職や退職に追い込まれてしまうこともあります。

パワハラ・モラハラが起こる原因

職場内で起こるパワハラ・モラハラは、職場環境の悪化や被害者の退職や休職などを引き起こす原因になってしまうなど、マイナスの要素を多くはらんでいます。世間に明るみになった場合は、取引先の信用を失うだけでなく、企業としての評価も下がり、業績に影響してしまうこともあるでしょう。ここでは原因を見ながら、パワハラ・モラハラを防止、解決するためのヒントをお伝えしていきます。

●従業員にパワハラ・モラハラへの理解がない
パワハラやモラハラの行為者は、自覚がなくその行為に及んでいることが多くあります。指導や注意のつもりだったというような発言も見られ、指摘されて初めて自覚するケースも少なくありません。社内では業績アップに貢献しているような仕事熱心な人の中にも行為者がいることがあり、過度の周囲への要求がハラスメント行為として現れるケースもあります。また、被害者側においては、理不尽な内容であっても、繰り返し指摘や注意をされることで自信を失い、「ダメな人間だから注意されても仕方ない」など、間違った解釈をしてしまうことがあります。先に挙げた業績の良い人からの指摘だった場合は、「あの人は仕事ができるから、強いことをいうのも理解できる」など、頭の中で解釈を曲げてしまうこともあるようです。

→解決策のヒント:定期的に従業員向けの研修会などを開催し、「パワハラやモラハラはどのような行為で、発生するとどのような影響があるのか」ということを伝え、理解を深めてもらうようにしましょう。この研修は定期的に実施し、パワハラやモラハラについて常時意識ができるような状態にします。また、管理者向け、一般社員向けなど階層を分けて行うことも重要。レポートを提出してもらうと、さらに効果的でしょう。

●パワハラ・モラハラに関する明確な指針、方針がない
パワハラやモラハラに対する意識は、人によって異なります。このような観点から、何もない状態でその認定をするのはなかなか難しいものです。​職場でのハラスメントとはどういうものかを伝えていなかったり、ハラスメントを防ぐための方針がなかったりする場合は、​従業員も判断があいまいになってしまい、発生を防止することが難しくなります。

→解決策のヒント:方針などは就業規則に明記し、共通の意識を持てるようにします。また、行為者への罰則なども記載し、起こしてしまった場合のことも具体的に想像できるようにしておきましょう。ただし、就業規則に書いたからといって安心は禁物です。入社時などに内容について口頭で説明をするなど、認識を深められるようにしましょう。

●従業員がストレスを抱えながら仕事をしている
パワハラやモラハラの原因には、行為者が過度のストレスを感じながら業務に就いているというケースもあります。自己の抱えているストレスをほかの人へのハラスメントで発散するのは許されることはありませんが、残念ながら、攻撃しても言い返さない人、許容してくれると思われがちな人は、その対象になってしまうことがあります。なお、ストレスの原因は仕事だけでなくプライベートや家庭の問題に起因していることもあります。

→解決策のヒント:職場でのストレスは、コミュニケーション不足、合わない人間関係、業務内容や配分が適正ではないなど、従業員が何かしらの不満を感じてしまう点に起因しています。企業は、職場環境の整備を進めることが必要ですが、そのためには、現場の意見を吸いあげたり、風通しのいい雰囲気づくりに努めたりすることが重要です。定期的に面談を実施して従業員の声に耳を傾ける、相談窓口を設けて相談しやすい環境を整えるなど、従業員がストレスをため込まずに済むような取り組みをしていくといいでしょう。

パワハラ・モラハラの事例

ここではより理解が進むよう、「パワハラ・モラハラの一般的な例」、「実際にあったハラスメント事例」、「ダイヤル・サービスの相談窓口に寄せられたパワハラ・モラハラの相談事例」を紹介していきますので、確認してみてください。なお、パワハラは優位的な立場を利用したハラスメント、モラハラは優位的な立場に限定されるのはなく、同僚間などでも起こりうるモラルに反したハラスメントのことです。

●パワハラ・モラハラの一般的な例
・殴る、​蹴る、​物を投げつけるなど「身体的な攻撃」※パワハラのみ該当
・人格を否定する、従業員の前で長時間叱責する、継続して嫌がらせをするなど「精神的な攻撃」
・無視する、必要な情報を与えない、会議に呼ばないなど「人間関係から切り離す行為」
・業務量が多すぎる、​こなせないようなスケジュールを求める、​達成不可能な目標を掲げるなど「過大な要求」
・仕事を与えない、業務量が少ない、​能力以下の仕事を与えるなど「過小な要求」
・容姿について嫌がることをいう、プライベートなことに言及する、性差別、人種差別、年齢差別をするなど「個の侵害」

【実際にあったハラスメントに関する裁判事例】
・女性社員7名より聞こえるような態度で非難され、積極的に悪口をいわれる等、いじめを受け始めるようになった。また、課長から跳び蹴りのまねや顔すれすれに殴るまねを複数回された。それらの行為が上司の部長の前でされることもあったが、部長が課長に注意を与えることもなかった。さらに、女性社員2名から目の前で「私らと同じコピーの仕事をしていて、高い給料をもらっている」等言われたなど継続的にハラスメントを受け、精神障害を発症した。
・上司が部下に対し「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」などと記載された電子メールを、部下とその職場の同僚に送信した。一審では、業務指導の一環として行われたものであり、人格を傷つけるものではない、として損害賠償請求が認められなかったが、二審では、精神的苦痛を慰謝するための金額として5万円という損害賠償請求が認められた。

【ダイヤル・サービスの相談窓口に寄せられたパワハラ・モラハラの相談事例】
・求人票では完全週休2日制だったが、支店長は土日や時間外にアポを入れ、勤務中は飛び込みアポ取りをしろと強要する。「週休2日なんて関係ない」とも言われた。支店長の指示で残業をしても、40時間以上の残業申請は却下される。
・上司が一部のスタッフに業務過多となるほど仕事を割り振っている。その一方、相談者に対しては過去におかしたミスを執拗に責め続け、「今後はシフトに入れない」と言い、仕事を減らすことで退職へと追い込もうとしている。

パワハラ・モラハラの対策と解決事例

ダイヤル・サービスの「ハラスメント・人間関係ホットライン クライアントアンケート報告書2022」内、「貴社で取り組んでいるパワハラの予防に向けた取り組みのうち、効果があると実感できたものを全てお教えください」という問いに対し、最も多かったのは「管理職を対象にパワーハラスメントについての講演や研修を実施した」(66.2%)となりました。次いで「相談窓口を設置した」(64.7%)、「一般社員等を対象にパワーハラスメントについての講演や研修を実施した」(58.8%)という結果となっています。

この結果から、下記が特に効果がある取り組みだというのが、数値として表れていることが分かります。
・予防としてパワハラについての理解を深めておくこと
・パワハラが発生した場合は、早期解決へつなげられるように相談窓口を設けておくこと

当社のサービス「ハラスメント・人間関係ホットライン」に寄せられた通報・相談の中から、解決につながった事例をご紹介

―同僚の冷たい態度と悪口に悩んだ2年間のつらい日々。研修がきっかけとなって相談し、心が楽になりました。

【相談者】
Aさん(女性・50代・嘱託社員)/某電機メーカーB社の営業部に所属。実名希望。

【相談内容】
Aさんと同僚のCさん(女性・40代)は、10年以上前からプライベートで一緒に出掛けるほどの仲でした。しかし2年前、Cさんの態度が急変。職場でAさんを無視し、悪口や陰口を言うようになったのです。別の同僚に「Aさんの営業成績に、Cさんが嫉妬しているのではないか」と言われたそうですが、理由が分からず腑に落ちないAさん。上司から直接Cさんに事情を聞いてもらったところ、Cさんは「無視も中傷もしていない」と否定。その後も状況は変わらず、Aさんはつらい日々を過ごしていたのだそうです。そのような中、ハラスメント研修を受けている際、「悩んでいることがあれば、気軽に相談窓口を利用してください」との言葉をキャッチ。その言葉に背中を押され、「ハラスメント・人間関係ホットライン」に電話をかけてきました。

【相談員の対応】※聞く、聴くの入れ方は報告書に合わせています
① 口をはさまず、話を最後まで聴く
とにかく話を聞いて欲しいという様子で勢いよく話すAさんでしたが、最後まで傾聴しました。
② 相談窓口の説明をする
しばらく話を聴いていると、Aさんの口調が落ち着いてきました。そこでタイミングを見て、相談窓口の役割について説明し、Aさんの希望を聞きました。Aさんは『Cさんとの関係が改善することは期待していない。何も変わらないとしても仕方がない。ただ自分はこんなに苦しんでいるのだということを、会社の上の方々に伝えたい』とのこと。Aさんは実名での報告を希望しました。

【相談者にみられた変化】
通話の最後の方では、Aさんは自分のことを客観視できるように。『まとまりのない話をして、すみませんでした』と少し明るい口調でおっしゃいました。

【相談のその後】
相談内容をB社に報告書として提出。その後Aさんは社内のコンプライアンス担当部署から連絡を受け、詳しく経緯を聞かれたそうです。そして、コンプライアンス担当者がAさんの上司と連携調査を実施。営業部内で相談内容を裏付ける証言が得られ、上司がCさんに注意をしてからは、態度は変わらないもののAさんの悪口は言わなくなったとのことです。電話口のAさんの声は以前よりも明るく、口調も穏やかになっていました。

【相談員の所感】
・仲の良かった同僚との関係が悪化し、どこにも相談ができないと思い悩んでいらっしゃいました。研修での『気軽に相談してください』という言葉に救いを求めて電話をかけてくださったそうですが、この行動がなければ、今も一人で苦しんでいたかもしれません。思い悩んだら、まずは相談して、話を聞いてもらうことが大事だと気付かされた事例でした。
・研修を実施する重要性を示す事例でもありました。研修でお伝えしていることは、その時の心境や状況によって受け止め方は変わります。Aさんは毎年受けていたはずですが、Cさんとのことで悩んでいたこの年の研修は、自分のこととして深く心に響いたのだと思います。

このように外部の相談窓口に相談したことで、モヤモヤとしていた気持ちが晴れることになったAさん。社内で元々仲の良かった人との関係悪化は、特に社内では相談しにくいものですし、解決へスムーズに導くことのできる専門家のいない社内では、今回のように行為者の否定でそれ以上進まなくなってしまうこともあります。
最悪のケースとしては、Aさんが退職していた可能性もあり、外部の相談窓口は人材の流出を防ぐという点でも大きな効果が期待できる存在と言えるでしょう。「外部の相談窓口は、専門家が適切に対応してくれることが大きな特徴」という点は、覚えておきましょう。

予防策だけでなく、発生後の対応整備も重要なポイント

職場でのパワハラ・モラハラは、現代社会においては軽視できない問題となっています。発生を防ぐために、研修の実施、相談窓口の設置などの対策を考えておくことはもちろん重要ですが、人間同士が関わる職場においては、行き違いや認識違い、コミュニケーション不足などにより、いくら対策をしてもパワハラ・モラハラが発生してしまうこともあります。そういった場合も考えて、発生後の対応も整備しておくようにしましょう。
今回は、より具体的に検討できるよう、解決事例や相談事例などもご紹介しました。ぜひご参考になさってください。

また、ダイヤル・サービスでは、豊富な経験と実績により、最適なご提案が可能です。まずはご相談からでも構いませんので、お気軽にご連絡ください。

ハラスメント・人間関係ホットライン

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