Vol.02 メンタルヘルス

EAPとは? 独自事例から徹底解説! 外部・内部EAPの違いから、導入メリット・選定ポイントについて紹介!

従業員が強いストレスや悩み、​不安を抱えて心の健康を崩している状態では、良いパフォーマンスができません。業務に影響がでるようになるだけでなく、本人も周りに迷惑をかけたことがさらにプレッシャーとなり、休職や退職に追い込まれてしまうこともあります。また、企業側としては欠員が出てしまった分、新たな人材を採用するためのコストがかかることになります。欠員が出た部署の従業員への業務負荷も否めません。
従業員が心身ともに健やかに過ごせる環境を整えることは、現代の企業では必須事項。メンタルヘルス対策をしっかりと講じている企業は評価も高くなり、従業員の定着率アップや業績の向上が期待できます。
今回ご紹介するEAPとは、従業員支援プログラム(Employee Assistance Program)の略称で、具体的には、従業員のメンタルヘルス不調やストレスなどの問題に対して、専門家によるカウンセリングや相談支援を提供するプログラムのことです。すでにご存知の経営者や人事・労務担当者もいらっしゃるかもしれませんが、ここでは改めてその概要や歴史、外部・内部EAPの違い、導入事例などについて解説していきましょう。

EAPとは

先にもお伝えした通り、EAPとは従業員支援プログラム(Employee Assistance Program)の略称です。日本​EAP協会の定義によると、以下の2点を援助するために作られた、職場を基盤としたプログラムとされています。EAPの導入によって、従業員のメンタルヘルスの改善やストレスの軽減、生産性の向上などのメリットが得られると言われています。

1.職場組織が生産性に関連する問題を提議する。
2.社員であるクライアントが健康、結婚、家族、家計、アルコール、ドラッグ、法律、情緒、ストレス等の仕事上のパフォーマンスに影響を与えうる個人的問題を見つけ、解決する。

上記からも分かるように、メンタルヘルスが不調になるのは、会社での人間関係や業務量の負荷などだけでなく、従業員のプライベートな事情に起因していることもあります。最近は、コロナ禍の影響で不安を感じたり、やる気が起きなかったりし、それらが重なることで日常の生活や業務を遂行することが困難になってしまう人も多いようです。

​EAPが生まれたのはアメリカ合衆国。第二次世界大戦中、過酷な戦場、悲惨な現場を目の当たりにした兵士たちの中には、精神的なダメージを受けた人が多くいました。そのダメージからどうにか逃げ出そうと、アルコールやドラッグに依存していき、心身ともに不調をきたすケースが多発したのです。しかし、何かに依存したところで問題の本質が解決されるわけではありません。そこで、こういった兵士たちに寄り添い、心のケアをするために考え出されたプログラムがEAPとなります。この効果が認められるとEAPの考え方が世界中に広がっていき、日本では2000年ごろから導入する企業が増えていきました。

それまでの日本では、心の病という概念や言葉自体があまり浸透しておらず、落ち込んだり仕事でミスをしたりするのは、本人が怠惰だからだと一蹴されていました。本人は十分頑張っているのに、「努力や気合が足りない。そんな弱気でどうするんだ! もっと頑張れ」と鼓舞する言葉をかける上司や同僚も多く、そのプレッシャーから、症状はどんどん悪化していくというケースが散見される時代が長く続いていたのです。最悪の場合は、自死にいたってしまうケースもあり、徐々に社会問題化されるようになります。そして、様々なケースがニュースでも取り上げられるようになって、心の病やうつ病への理解が徐々に広がっていきました。今では「誰もがなりえる病気」という考えが浸透してきています。

EAPには内部EAPと外部EAPの2パターンがある

EAPを導入する際、まずは内部EAPと外部EAPの2パターンがあること、そしてそれぞれの特徴やメリット・デメリットを理解しておく必要があります。

●内部EAPの特徴やメリット・デメリット
EAPの指導者やカウンセラーが相談員として社内に常駐しているパターンで、メンタルヘルス対策の企画、立案、実施は全て社内でまかないます。

・メリット
相談員は社内の事情や雰囲気などを熟知しているため、状況の把握や自社に合ったプランの作成・実施が可能。

・デメリット
常駐ということなので、案件がない場合も相談員の人件費が毎月かかってくる点は気にしておきたいポイント。また、他部署の社員のように多数雇用するケースは少ないため、体調不良や私用などで相談員が不在になるケースも。さらに、相談場所が社内にあるため、誰が相談したかが判明しやすく、そのために相談を躊躇する社員が増える。

●外部EAPの特徴やメリット・デメリット
社外に相談できる第三者機関を設けるパターンです。外部EAPをサービスとして提供している企業は複数社あるため、いくつかの会社に相談しながら、自社に合った運用機関を選ぶようにします。

・メリット
専門知識があることや様々なケースに対応してきているため、最適な提案をしてもらいやすいでしょう。使用料としてコストはかかりますが、雇用するわけではないので、社内EAPに比べると安価で済みます。また、体制が整っているため相談しやすいのも特徴です。さらに、相談場所が社外にあるというのもポイント。情報が漏えいするリスクが小さく、従業員が社内で話しにくいようなことでも、安心して相談できます。

・デメリット
社内EAPに比べると社内の事情についてしらないことがある点がデメリットです。ただし、専門知識や経験値によっておおむねカバーできると言えるでしょう。

なぜ外部EAPが企業のメンタルヘルス対策の一つとして挙げられるのか

厚生労働省は、​国民生活の保障・​向上と経済の発展を目指すために、​社会福祉、​社会保障、​公衆衛生の向上・​増進と、​働く環境の整備、​職業の安定・​人材の育成を総合的に推進する役割を担っています。この厚生労働省のメンタルヘルス対策推進では、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年に発出、平成27年11月30日改正)において、以下の4つのケアを掲げています。外部EAPはこのうち「事業場外資源によるケア」に該当しています。

●セルフケア
従業員自らストレスに気付き、予防すること。事業者はそれを支援します。実現のためには、メンタルヘルスへの正しい知識やストレスの対処法などについて従業員に周知する必要があります。
・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付き
・ストレスへの対処


●ラインケア
管理監督者が行うケア。管理監督者は職場環境の把握と改善に努めたり、部下の相談対応を行ったりします。
・職場環境等の把握と改善
・労働者からの相談対応
・職場復帰における支援、など


●事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医や保健師、人事・労務の担当者が行うケアのこと。労働者や管理監督者を支援するだけでなく、メンタルヘルス対策の企画立案を行うことなどが該当します。個人の健康情報を取り扱うほか、事業場外資源とのネットワーク形成やその窓口としても機能することになります。
・具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
・個人の健康情報の取扱い
・事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
・職場復帰における支援、など


●事業場外資源によるケア
社外の専門知識を有する第三機関や専門家から支援を受けること。人事・労務の担当者はこことのつながりを持ち、情報提供や助言を受けるなどのサービスを活用します。

指針にも挙げられていることから、これらは企業が内容を理解しておくべき項目です。「自己や社内で対応すれば十分では?」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、コスト面や本業に集中して業務を遂行していくことを考えた際、外部EAPを選択する企業が多いようです。特に、従業員数の少ない中小企業ではその傾向が見られます。こういった背景からの外部EAPは重要な対策の一つとして位置づけられているのです。

企業における従業員のメンタルヘルス対策の重要性

私たちは、日常生活の中で様々な予防をし、起きた場合はそれに適切に対応するということをしています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を例にとってみると、感染しても重症化を防ぐためにワクチン接種をし、感染した場合は、一定期間周囲との距離をとって回復につとめるようにしています。重症化した場合は入院し、健康な体に戻るまで治療を受け続けることとなります。こうやって感染症に感染した場合は、予後のことも考えながらいくつかのステップを踏んでいくことを当たり前のようにしています。
また、防犯や防災などではその重要性を啓蒙しながら発生を抑止したり、発生後も迅速な対応ができるよう、設備や体制を整えたりしています。

これらに比べて、メンタルヘルスの不調は予防や予後の適切な対応という面でどうしても軽視されがちです。しかし、重症化、長期化することで、本人が苦痛を強いられるだけでなく、「離職してしまう」「業務に支障をきたす」「明るみになった場合企業のイメージダウンにつながる可能性がある」など、影響範囲は甚大です。その点を真摯にとらえた場合、メンタルヘルス対策の重要性が見えてくるのではないでしょうか。
当社が発表している、「ハラスメント・人間関係ホットライン クライアントアンケート報告書2022」の調査結果の中でも、「メンタルヘルスの問題と企業パフォーマンスへの影響についてどの程度関係があるとお考えでしょうか」という問いに対し、「密接に関係がある」「どちらかといえば関係がある」と回答した方は全体の78.6%という結果が出ています。この結果を受け、ますますメンタルヘルス対策への需要が高まることが予想され、今まで意識していなかった企業でもその重要性を認識しておく必要が出てくるでしょう。

EAP導入時のポイント

EAPを導入する際にはいくつかのポイントがあります。これらをしっかり把握することで、スムーズな導入や適切な判断につなげることができるので、ぜひチェックしてください。

●ポイント1:まずはメンタルヘルスを意識することの重要性を周知、徹底
メンタルヘルスを意識することの重要性を、従業員に周知、徹底します。定期的に講習や研修を実施することが望ましいですが、余裕がない場合は、各部署の朝礼や社内報、ポスターなどで伝えます。重要なのは一過性のものではなく、継続して行うということ。内容としては、だれでもメンタルヘルスの不調に陥ることがあるということや、少しでも不調を感じた場合は我慢せずに相談することが重要である点、不調によるデメリットなどが理解できるようなものにします。
こうして従業員の意識を高めておくことで、いざEAPの導入となった場合でも、スムーズに進めることができます。

●ポイント2:内部EAP、外部EAPかを選択
それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しながら、自分の会社にはどちらが適切なのかを選定します。

●ポイント3:決め打ちではなく、複数の中から選定を
外部EAPを選択した場合、まずは、インターネットなどで検索し、どのような業者があるかチェックしてきます。ここから選定していくわけですが、その際に気にしていただきたいのが、その企業の経験値や専門性の高さ、サービスの質です。営業年数が長いというのは目安のひとつで、専門知識を持ったスタッフが対応してくれるのかどうかもポイントになるでしょう。また、取引先の数や対応時間帯などもチェックしておくといいでしょう。さらに、EAPは継続していくことも重要なポイントなので、費用面での対比もしておくようにします。ただし、価格の高低だけで決めるのは禁物です。先に挙げた「経験値」「専門性の高さ」「サービスの質」などとのバランスを見て絞り込むようにしましょう。利用者の声などを公表している場合は、それも参考になります。
内部EAPを選択した場合も同様で、複数の専門家と面談し、自社に合った人を採用するようにしましょう。なお、雇用が伴うので、雇用条件などのすり合わせも必要です。会社の理念への理解があるかどうかも見極めるようにしましょう。

EAP導入後の運用時のポイント

様々な検討を重ねて導入が決まると一息つきたくなってしまうかもしれませんが、ここからが新たなスタートとなります。EAPへの理解が深まるよう、従業員にそのプログラム内容を的確に伝え、導入して終わりとならないようにしましょう。さらに、時間が経って風化してしまわないよう、定期的にメンタルヘルスの研修をするなど、意識の高さをキープできるようにします。
すぐに相談できる体制を整えておくことは重要で、相談先や連絡方法などは、従業員の目につくところや従業員向けのサイトに常時掲出しておくようにします。一人になりやすい、トイレや喫煙所などに掲示してあると、特に有効かもしれません。
そして、従業員だけでなく、経営陣やマネジメント層への訴求も重要です。特に部下を持つ層は直接相談を受けることもあります。ここで適切な対応が行われないと、メンタルヘルスの不調が表面化せず、知らない間に重症化してしまう可能性もあります。こうならないためにも、定期的に意識できるような仕組みを構築するようにしておくことが必要です。
EAPの担当者は、導入後に多くの相談内容を把握することになりますが、それぞれの内容はデータとして保管し、今後の参考にもできるようにしておきましょう、ただし、機密事項でもあるのでその扱いには注意が必要です。情報漏洩を防ぐことができるよう、データにはパスワードをかけ、関係者以外が閲覧できないようにしておくことが重要です。紙に出力した場合は、鍵付きの収納や金庫に保管するなど、徹底しておくようにしましょう。

ダイヤル・サービス株式会社の外部EAPサービスの特徴

ダイヤル・サービス株式会社でも、外部EAPサービスとして利用可能な「こころと暮らしのほっとライン」、「メンターサービス」、「危機介入・緊急支援サービス」を展開しています。下記のような特徴があるので、比較検討する際、参考になさってください。

●こころと暮らしのほっとライン
下記のような特徴があります。いずれも、ユーザーである企業様がご利用していただきやすいよう、これまでの経験や知識、ご要望などを反映させたサービス内容になっています。
・受付内容:メンタルヘルス相談全般、ハラスメント相談全般、健康に関する相談全般、暮らしに関する相談全般
・電話での受付時間:メンタルヘルス・ハラスメント相談は、月~土の9~21時まで。からだの健康相談・暮らしの相談は、月~土の10~18時までとなっています。
※WEBは24時間、365日対応しています。
・いずれのケースでも専門家が対応し、適切なアドバイスを させていただきます。
・相談を受けた内容は、翌営業日中に「報告書」として該当部署へ提出させていただきます。
・相談者は、匿名、実名のいずれかを選択できます。
・人事・労務の担当者など企業の窓口となっている方は、専門の精神科医師に相談できます。
・創業50年超と、相談窓口としての実績が豊富です。
・臨床心理士、精神保健福祉士、公認心理師、産業カウンセラー、保健師、看護師、消費
生活アドバイザー、弁護士、税理士(弁護士と税理士は要予約)などの専門家が揃っています。幅広い悩みの相談に対応している点が強みです。


●メンターサービス
メンタル不調を理由に傷病休暇を取得した人にとって、復職前後は心理的な負担を感じやすい時期と言われています。よって、復職後は体調だけでなく、業務量や業務内容に配慮する必要があります。ここでしっかりとした対応ができないと、傷病休暇の再取得や退職に追い込まれてしまう可能性がある、ということは認識しておきましょう。
当社では、こういったケースにも心理の専門家(臨床心理士/精神保健福祉士等)がしっかりサポート。休職中または復職した職員が不安を感じるタイミングに、月2回の電話によるカウンセリングを実施する「メンターサービス」というサービスを提供しています。本サービスでは、相談者のお話に傾聴することで、不安や悩みを解消。職場定着率の向上や再発の防止、復職に向けたメンタル改善などが期待できます。また、人事・労務の担当者から指定された方に、心理の専門家から直接お電話を差し上げるという点が強みでもあります。
なお、人事・労務の担当者には報告書を提出しますので、円滑なコミュニケーションに役立てていただければと思います。


●危機介入・緊急支援サービス
職場や業務上で発生した予期せぬ事件、事故、災害などによって生じた心のダメージ。多くは時間が解決してくれますが、中にはショックが大きすぎて長引いてしまうこともあります。長期に渡って精神の安定が損なわれると、場合によっては心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症してしまうこともあるでしょう。
「危機介入・緊急支援サービス」は、不安な気持ちの解消を支援するサービスです。経験が豊富な心理の専門家(臨床心理士/精神保健福祉士等)が、当社カウンセリングルームもしくは現地にて対面カウンセリングをし、報告書作成や報告会を開催。心的動揺の緩和および人的二次災害抑止のお手伝いをいたします。

●ダイヤル・サービス株式会社の外部EAPサービスの導入事例
さらに理解が深まるよう、ここではさくらインターネット株式会社での導入事例を紹介します。

インターネットへの接続サービスの提供、インターネットでのサーバの設置およびその管理業務、インターネットを利用した各種情報提供サービス業務などを行っているさくらインターネット株式会社。約550名が所属しており、2013年10月にダイヤル・サービスの「こころと暮らしのほっとライン」を導入されました。データセンターは24時間365日稼働し、顧客のデータを預かり運営していますが、万が一このデータセンターに不具合が生じた場合を考えるとそのプレッシャーは相当なもの。このような状態の中、緊張感はもちろん、夜勤による従業員の負担も考慮する必要がありました。さらに事業の拡大とともに、従業員や拠点が増え、タイムリーに従業員の悩みに対応することが社内では困難に。そこで、「こころと暮らしのほっとライン」を導入することを決め、現在に至っています。
24時間365日、WEBでの受付をしている点が主な決め手だったとのこと。夜勤があるほか、エンジニアや男性が多く、電話よりもテキストによるコミュニケーションに慣れている社員には適したサービス内容だったそうです。
相談内容は、仕事の悩みから育児・介護との両立などプライベートなものまで様々。相談対応の質の高さや相談員が寄り添ってくれることにメリットを感じているとのことです。

しっかり比較検討し、適切な導入を

従業員のメンタルヘルス不調に対し、カウンセリングや相談によって支援するEAP。特に外部EAPは、専門性の高さ、迅速で柔軟な対応、相談のしやすさ、コスト面など総合的に大きなメリットがあり、中小から大手まで多くの企業が適切に導入され、効果を得ています。最近は、就職先を選定する際、働きやすさを求め、メンタルヘルスへの意識の高い企業かどうかを重要視する就職希望者もいるようです。各社サービス内容は様々ですが、それぞれをしっかり比較検討し、適した外部EAPを導入するようにしましょう。

こころと暮らしのほっとライン

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