信頼関係を育てるために、“心の癖”を見直そう
職場でのお互いの声掛けは、心の健康のために大切なことです。上司と部下、同僚同士が気軽に声を掛け合える職場は、心理的安全性も高まり、パフォーマンスの向上も期待できます。
交流分析という心理学では、“声掛け”のような相手に対するメッセージのことを、「ストローク」と呼びます。ストロークには、褒める、労うなどの肯定的なものだけでなく、叱る、怒るといった否定的なものや、表情、握手なども含まれます。「相手の存在を認めるメッセージ」は、すべてストロークなのです。
あなたは職場でどんなストロークを送っていますか? 肯定的で温かみのあるストロークであれば、職場の雰囲気も良くなりそうです。しかし、このストロークの出し方や受け取り方には、人によって“癖”があるのです。
具体的にどのような癖があるのでしょうか? 交流分析では、これを「ストローク・エコノミー」として、5つに分類しています。
① ストロークを与えるな
忙しさや、「言わなくても通じるだろう」という思いから、部下や同僚の成果に対して、「よくやった」のひと言を省いてしまうことはありませんか? もし、褒めるのが苦手なら、“与えるな” の癖がついているかもしれません。
② 必要なストロークを求めるな
褒めてもらいたい、手伝ってもらいたいのに、我慢してしまう癖はありませんか? ストロークは心の栄養です。求めるのは自然なことです。
③ ほしいストロークを受け取るな
褒められても「私なんて…」と卑下してしまうことはありませんか? 自分を下げることは日本的な美徳かもしれませんが、ストロークを受け取らないままでいると、心が寂しくなってしまいます。
④ ほしくないストロークを拒否するな
「この仕事もやっといて」というストロークを受けました。“相手の要望を断ったら関係性が壊れてしまうかも…” そんな思いから、ストロークをなんでも受け止めようとする癖がついていませんか? 心も身体も疲弊してしまうようなら、ときには受け取らないことも大切です。
⑤ 自分自身にストロークを与えるな
“私はまだまだだ、もっと頑張れる…” 十分頑張っているにもかかわらず、自分を褒めない、そんな癖はついていませんか? 毎日職場に来て、仕事をこなしているだけでもすごいことです。自分に対して十分なストロークを与えましょう。
こうした癖は、幼少期のしつけや、周囲の価値観から身についたものです。しかし、ストロークを出さない、受け取らないということが続くと、心の栄養が不足して心が疲れてしまいます。普段の自分の言動を振り返って、こうした癖に気づいたら、少し緩めてあげましょう。小さなストロークの積み重ねが、職場の信頼関係を育てることにつながります。