「静かな退職」と「リベンジ退職」
近年、「静かな退職」と「リベンジ退職」という言葉が注目されています。前者は、与えられた仕事を最低限だけこなすスタイル。後者は、職場への不満や怒りからあえて職場に迷惑をかける方法で退職する行動です。どちらも、従業員の不満や職場環境への不信感などネガティブな感情が背景にあるといわれています。
静かな退職は一見穏やかですが、組織にとっては生産性の低下やチームの士気に影響を及ぼします。一方、リベンジ退職は、SNSでの暴露や突然の退職など、企業イメージや業務に直接的な損害を与える可能性があります。
こうした退職を防ぐために重要なのは、従業員の「声なき声」に耳を傾ける姿勢です。とはいえ、すべての不満や悩みに対応することは現実的ではありません。だからこそ、心理職やEAP(従業員支援プログラム)との連携が鍵となります。特に社外の相談窓口は、本音を引き出しやすく、「誰にも言えない」思いが表面化することがあるのです。
ダイヤル・サービスのハラスメント電話相談にも「会社が、相手が変わらないなら、自分が辞めるしかない」という、切羽詰まった声が届くことがあります。その声を「働き続けるために改善してほしい」と捉え、本人の気持ちに寄り添うことで、会社との話し合いにつながることも少なくありません。
また、定期的な面談やメンタルヘルスチェックを通じて、心理的安全性を確保することも有効です。安心して話せる場をつくり、まずは「話を聞く」ことが、信頼関係の第一歩になります。
従業員の退職を無くすことはできませんが、「納得感のある退職」を支援することも、組織の健全性を保つうえで重要です。退職者の声をフィードバックとして活用することで、組織の改善にもつながります。
静かな退職もリベンジ退職も、従業員が「理解されなかった」「思いが届かなかった」と感じた結果です。心理的サポートの視点を忘れず、無理なく対話を重ねることで、退職という選択を回避できる可能性は高まります。従業員に寄り添う姿勢こそが、組織を支える力になるのです。