Vol.180 ハラスメント

ハラスメント対策の歴史を振り返る

 法律上のハラスメント対策は、1997年の男女雇用機会均等法改正で、女性に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の配慮義務とされたことに始まります。1997年は、まだまだ性役割差別の強い時代でした。私が当時働いていた職場には、女性だけのお茶くみ当番表がありました。
 同年に実施された「男女共同参画社会に関する世論調査」(内閣府)では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」に、約6割の人が「賛成」もしくは「どちらかといえば賛成」と答えています。2024年の同調査では、「賛成」もしくは「どちらかといえば賛成」と答えた人が約3割で、1997年の半分に減少しています。時代の変化を感じますね。

 セクシャルハラスメントに続き、2016年には、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策(男女雇用均等法、育児・介護休業法)が、2019年には、パワーハラスメント対策(労働施策総合推進法)が、事業主の義務となりました。
 2019年には、国際労働機関(ILO)において「仕事の世界における暴力及びハラスメント」に関する条約も採択されています。日本だけでなく、世界的にハラスメントや暴力を許さないという気運が高まっていると感じます。

 そして、2025年6月11日、労働施策総合推進法等の一部を改正する法律が公布され、カスタマーハラスメント、求職者等に対するセクハラ対策が事業主の義務となりました。ちなみに、法律に先んじて、4月1日から、東京都、北海道、群馬県、桑名市、嬬恋村ではカスタマーハラスメント防止条例が施行されています。
 とは言え、利益を上げるため、就職するために、お客様や求職先の理不尽な言動を我慢するのは当たり前という考え方は、社会に深く根付いており、法律ができたからといってすぐに変わるものではありません。

 ハラスメント行為者となりうる、顧客や雇い入れる事業主側の意識変革が第一ですが、被害を受ける側も勇気を出して少しずつでも主張していくことにより、ハラスメントがない社会へと良循環が生まれていくのではないでしょうか。そうは言っても、被害者にとって、主張することは非常に苦しいことだと思います。私たちは決して傍観者にならず、被害者を支える意識を持たなければなりません。

 ハラスメント対策が法制化されてから四半世紀が過ぎ、法律の対象となる行為、対象者は次々と広がってきています。ハラスメントに限らず、2000年以降、児童、高齢者への虐待や、DV(配偶者等からの暴力)を防止する法律も成立しています。我慢するのが当たり前とされてきた暴力、見て見ぬふりをされてきた暴力を許さない社会へと進化していきましょう。

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