人生価値を大切に

 「あの課長は好き嫌いが激しいんです。自分が気に入った部下にばかり仕事を回して、気に入らない部下には声もかけないんです。私も声をかけられることは少ないので、嫌われているかもしれません。こんな差別をするなんて、パワハラですよね?」

 ダイヤル・サービスのハラスメント相談窓口にはこんな相談が入ることがあります。業務を円滑に遂行するため、気持ちよく働くためには、誰とでも好き嫌いなく接するべきではあるのですが、人はどうしても、相手に対する評価の基準を持ってしまうものです。その評価基準には、執着(好き)と嫌悪(嫌い)があげられます。

 執着は、人格に対するものもあれば、業務スキル、プライドや学歴、名誉などに対するこだわりとしてわいてくるものもあります。もし、部下の持つ業務スキルが、自分が尊重するスキルと同じものであれば、部下に対する執着がわいて、知らず知らずの内に好意的に接してしまうかもしれません。

 嫌悪は、単に“嫌い”という気持ちの他に、憎悪や不満、嫉妬、自分に対する否定感、劣等感などもあります。嫌悪と執着は仲が良く、嫌悪を抱く出来事が起こった場合、その不快さを回避するために快楽を生む行動に執着するということも起きます。嫌なことがあったときに、過食をしたり飲酒をしたりなどはよくあることですね。

 そのほかにも、相手をよく知らないこと(不知)や、相手に不信感を抱いたり、自分を過信し過ぎたりすることも、嫌悪や執着が動き出すきっかけになります。

 

 人が評価基準を持ってしまうのは自然なことです。それ自体は悪くありません。自分の持つ評価基準に無自覚なまま、盲目的に従ってしまうことが問題なのです。冒頭に挙げた課長のように、好き・嫌いのままに行動していたら、差別的な接し方につながってしまうかもしれません。ハラスメントとして訴えられ、課長という役職を失い、職業人生を崩壊させてしまうかもしれません。

 

 では、人生を崩壊させないためにはどのようにすればよいのでしょうか。コツは、長期目標としての人生価値を思い描き、しっかりとつかんでおくことです。人生価値には「家族・子育て」、「結婚・恋愛」、「対人関係」、「仕事・家事」、「教育」、「趣味・社会活動」、「精神的な成長」など様々なものがあります。もし、自分の評価基準に従った行動をとりたくなった時、その行動が人生価値の実現に役立つものであるか、人生価値を崩壊させるものになってしまうのかを吟味することが大切です。普段何気なく行っている言動が、ハラスメント行為につながることもありえます。自分や他者を苦しめる言動を控えることができるよう、自分の評価基準に自覚的になっておきたいものですね。