不安への賢い対処

この文章が皆さんの目に触れる頃、新型コロナウイルスの状況がどのようになっているか、書いている時点では予想がつきません。今後どうなるかわからない事態を前にして、個人として不安を抱えるのはもちろん、企業として、従業員や消費者の不安への対処を迫られた方も多いのではないでしょうか。

心理学では、「恐怖」と「不安」とを分けて捉えます。「恐怖」は、安全や健康が脅かされた時、生き残るための対処行動を取る準備をする感情です。具体的には、瞬時に動き出せるように血圧や心拍数を上げ、危険の源となりうるサインを見逃さないように集中力を高めます。

 

 

一方、「不安」はもっと未来志向で、「恐怖」よりも反応は穏やかである場合が多いものの、長く持続する可能性があります。そのため、「不安」のきっかけとなった出来事(不安の源)そのものより「心の声(自分が何を考え、自分に何と言うか)」に強く影響を受けます。

 

 

例えば、感染症のニュースでは、よく致死率が注目され、不安をあおったり、安心をもたらしたりします。しかし、そもそも感染者を見逃していれば、根拠となる数字の母数が少なく見積もられ、致死率

は上がります。私たちは、数字で示された情報は明確で信ぴょう性が高いと感じがちです。そこに、きっかけとなった出来事への偏見、情報源への信頼度、過去の記憶やイメージなど、自分の「心の声」が加わります。そこで、「不安の源」を、知らず知らずのうちに編集していないか精査する必要があります。

「不安」は、長期間続けば強いストレスとなります。ですが、「心の声」は自分一人では気が付きにくいものです。「不安」な気持ちを安心して話せる相手に聴いてもらうことで、真の「不安の源」と「心の声」が分けて整理でき、次に何をしたらよいかが見えてきたり、心の重荷が少し軽くなったりします。身近な人に話せるのが一番ですが、他人のほうが気軽に話せることもありますので、電話相談窓口などの利用も、対処法の一つになるでしょう。

「不安」を感じることは、危険を回避して生き残るために重要な能力です。自分が反応している対象(「不安の源」と「心の声」)を注意深く見極め、「不安」を安全や健康を守るきっかけとして最大限活かしましょう。

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