ピンチをチャンスに

皆さんは、仕事やプライベートで、自分でも「うまくいかないな」と頭ではわかっているのに、そのやり方や考え方を変えられずに固執してしまうことはありませんか。

 

ダイヤル・サービスのメンタルヘルス相談窓口に「朝、起きられず、何とか気力を振り絞って出社している。もうこれ以上頑張れない。会社に内緒で通っている心療内科の主治医も『しばらく休んだほうがいい』と言っている。しかし、休んでしまうと周りに迷惑をかけてしまう。どうしたらいいだろうか」と悩んでお電話をくださったAさん。

その後のお話しから「専門的な仕事なので他に代われる人がいない」、さらに「介護しなければならない親がいるので、長期間休むと経済的に苦しくなる」という背景があることがわかりました。自分ではどうしたらよいか判断がつけられなくなっていたのです。

 

このままの状況が続けば、Aさんはいずれ働けなくなってしまうことは明らかです。すでに仕事の効率もかなり落ちているのではないでしょうか。いわゆる「プレゼンティーイズム(疾病就業)」と呼ばれる状態です。昭和や平成の時代には「企業戦士」と呼ばれ、「社員の鏡」だったかもしれません。しかし令和となった今日では、会社にとってはリスクや経済的損失のほうが大きいでしょう。

 

 

物事がうまくいかない状況は、多くの場合、そのやり方が実情に合わなくなってきたために生じています。本来なら、やり方を見直すべきタイミングなのですが、「ずっとこのやり方で頑張ってきたのに、今さら変えるわけにはいかない」という心理が働きます。これは「サンクコスト(埋没費用)の呪縛」と呼ばれ、さまざまな経済活動を説明するときにも広く用いられています。

大幅な経営難からV字回復した企業は、この「サンクコストの呪縛」から逃れ、新しいやり方にチャレンジし、その結果、状況を改善できたのでしょう。「ピンチをチャンス」に変えることができたのだと言えます。

 

 

Aさんも、「今が変わるチャンス」なのです。「自分では決められない」と電話をしてきたのも、きっと後押しをしてほしい、勇気をもらいたいという心理が無意識に働いていたからではないでしょうか。そのことをお伝えすると、「そうかもしれない」と気持ちが動きました。

 

そこで「いままでのやり方を全て否定して180度変わる必要はなく、少しだけ見方を変えてみること」を提案しました。しばらく沈黙が続いた後、「わかりました、やってみます」と少しだけ元気に答えられました。きっと何かをつかんだのではないでしょうか。