ハラスメント防止対策元年

2019年5月29日、第198回国会で、女性活躍推進法等の一部を改正する法律(以降改正法)(※1)が成立しました。この法律の中で、パワーハラスメント(以降パワハラ)防止対策が初めて規定されました。そこではパワハラを「…職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること…」(※2)と定めています。

 

また、事業主に、相談体制の整備など雇用管理上必要な措置を講じることや、労働者の啓発のために、研修実施などの配慮をするよう努めることを求めています。ダイヤル・サービスが、労働者のための電話相談を始めたのは1996年です。私たちは、パワハラという言葉が社会に浸透する前から、職場内でのいじめ、嫌がらせといった人間関係に関する相談を受けてきました。今回、パワハラ防止に関する法律ができたことで、相談員として確かな後ろ盾を得たと感じています。

 

さらに改正法では、パワハラだけでなく、セクシャル・ハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント、育児休業等に関するハラスメントの全てについて、国・事業主・労働者の責務を定めました(※3)。特に重要だと感じたのは、事業主や労働者の責務として、自らハラスメントに関する理解や関心を深め、言動に注意を払うよう努めなければならない、としている点です。ハラスメント防止のために、自らの言動に注意を払うのは当たり前のことですが、これまでの法律にはそのような文言がありませんでした。ハラスメント行為者が、ハラスメント行為に無自覚であることは珍しくありません。法律の中に、ハラスメント行為の自覚を促す文言が入れられたことを、相談員としてとても嬉しく思います。

 

とは言え、改正法にはハラスメントを禁止する文言はなく、言動に注意を払うよう努めなければならない、とするに留まっています。残念ながら、現在、日本にはハラスメントを明確に禁止する法律はありません。第198回国会では性的加害言動(セクハラ)を禁止する法律案(※4)も提出されましたが、衆議院で否決されているのです。

 

6月21日には、ILO(国際労働機関)の総会で、職場でのハラスメントを禁止する条約が採択されました。ハラスメント防止新時代の到来です。日本が世界の目指すレベルに近づくためには、さらなるハラスメント防止対策の強化が必要となります。令和元年は、ハラスメント防止対策元年と言えるのではないでしょうか。

 

※1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」

※2 ※1内の「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」

※3 ※1内の「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」

※4 「業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案」

 

ダイヤル・サービスでは、従業員の方が安心して相談できる、臨床心理士など専門の電話カウンセラーによる「ハラスメント相談窓口」、管理職・一般職向けの「ハラスメント研修」「ハラスメント行為者研修」など、企業のハラスメント対策を包括的に支援するサービスを提供しています。