「Iメッセージ」で伝えてみよう

パワーハラスメントに対する社会の目は年々厳しくなっています。

「部下に注意したいが、パワハラだと思われないだろうか」と悩む管理職の方は多いのではないでしょうか。人の感じ方は様々ですので、残念ながら、「部下にパワハラだと思わせない完ぺきな注意の仕方」は存在しません。しかし、「パワハラだと思わせる可能性をできるだけ小さくする(相手がネガティブな感情を抱く可能性を小さくする)注意の仕方」は存在します。

 

その一つが「Iメッセージ」です。

「Iメッセージ」は、アメリカの心理学者トマス・ゴードン博士によって提唱された「I(わたし)」を主語にして、相手に気持ちを伝える方法です。「Iメッセージ」の反対は、You(あなた)を主語にする「Youメッセージ」になります。次の場面での「Youメッセージ」「Iメッセージ」を考えてみましょう。

 

「明日までに完成させなければいけない急ぎの仕事がある。

しかし、部下が大きな声で雑談をしているため、仕事に集中できずイライラしている」

 

この場面で部下に対し、「(あなたは)うるさいから静かにしろ」と言うのが「Youメッセージ」です。この発言には「あなたはうるさくて悪い奴だ」という評価と非難、そして、「静かにしろ」という命令が含まれています。つまり、「私が正しくてお前は悪者である。私に従え」というメッセージが隠れているわけです。あなたの口調が穏やかで、部下との関係が良好であれば、このような発言をしても問題は生じないでしょう。しかし、あなたと部下の関係が悪い場合、隠れたメッセージにより、部下はおとしめられたと感じ、パワハラだと思うかもしれません。

では、「Iメッセージ」ではどのような発言になるでしょうか。「Iメッセージ」には、3つの要素が含まれます。(※1)

 

①(相手の)行動に対する非難がましくない表現

②その行動がもたらす自分への具体的で目に見える影響

③その負担についての自分の感情

 

①~③を含めると、「Iメッセージ」は、

「(私は)大きな声で話をされると(行動の表現)、作業に集中できないんだ。明日が締切なのに半分しかできてなくて(自分への影響)、すごく焦ってるんだよね(自分の感情)」となります。

ポイントは、相手の行動を判断せず客観的に表現すること、怒りの感情については、怒りそのものではなく、怒りを生み出している一次感情(この場面では焦りや不安)を表現することです。

このように言われたら、たいていの人は、素直に申し訳ないと思うのではないでしょうか。少なくともパワハラだとは思わないでしょう。

「Iメッセージ」を発信するためには、自分の本当の感情に向き合わなければなりません。

つまり「Iメッセージ」は、相手を尊重する表現であると同時に、自分を大切にする表現でもあるのです。

相手も自分も大切にする「Iメッセージ」に、明日からチャレンジしてみませんか。

 

※1:「ゴードン博士の人間関係をよくする本 自分を活かす 相手を活かす」(トマス・ゴードン著、近藤千恵訳)大和書房