ジタハラと働き方改革

皆さんは「ジタハラ」という言葉をご存知ですか?

「2018年ユーキャン新語・流行語大賞」(※1)にノミネートされている「時短ハラスメント」は、労働時間の短縮に関する嫌がらせ行為をすることです。

この「ジタハラ」は、2016年9月から提唱された「働き方改革」と深く関係しています。

そもそも働き方改革の目的とは、労働力を確保することです。

2050年に日本の人口は約1億人を割り、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)比率が減少することが予測されています(※2)。そこで、現在の労働力を損なわず、更に労働力を増やすことを考えて労働者の働き方の改善を目指しているのです。これらの問題を解決する2本の柱として「時間外労働時間の上限規制(大企業では2019年度施行)」と「同一労働同一賃金(大企業では2020年度施行)」があります。前者は、残業時間を一定の上限で収めることを取り決める規定です。後者は、同じ仕事をしている場合には雇用形態にかかわらず同じ賃金を支払うことを示したものです。

そのうち「時間外労働時間の上限規制」は、労働者のワークライフバランスに直結する規定と言えます。時間外労働時間を削減して労働生産性を向上させたり、在宅勤務といった労働の多様化を実現させたりすることが期待されています。これまで「長時間働いている人が頑張っている」と評価されていた傾向が一転し、「短時間で成果を生み出せる人が偉い」という風潮になっています。そうなると、会社方針として「残業禁止」「ノー残業デー」を宣言し、時間的拘束を表面上なくす運動が促進されます。いつまでも職場にいることは‘悪’であるかのように上司や管理者は部下に対し「残業するな」と詰め寄ったりすることも想定されます。ジタハラの問題は、時間外労働を禁止することそのものではなく、短時間で成果を生み出せる仕組みや体制を講じることなく時短を強要することです。これまでと変わらない仕事量を抱えてながらも仕事をする機会を奪われるとあっては、労働者のモチベーションが低下したり、隠れ残業の温床になったりしかねません。

 

ある相談者は、「最近、上司に帰れ、帰れとせっつかれる」と不満気に口火を切り、「職場でコミュニケーションを取る機会が減った」「これはジタハラだろうか」と職場の雰囲気が悪くなったと嘆かれていました。こういった相談の背景には、上司の一方的な指導を受け入れられない気持ちが潜んでいることもあります。働き方改革による施策は、労働者に多様な働き方などが選択できる利点がありつつも、労働者の負担が見えにくくなることも考えられます。時間外労働時間の削減と並行して、労働者のモチベーションの低下を招いては労働生産性向上にはつながりません。職場改革には物理的対策(具体的な代替え案など)と心理的対策(上司と部下間の摺合せ)が大切ではないでしょうか。

 

※1 11月7日「ユーキャン 新語・流行語大賞」のノミネート語が発表、12月上旬発表

※2 2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について(経済産業省,H30)