「いじめ・嫌がらせ」防止のためのコミュニケーションのコツ

 

平成29年度「過労死等の労災補償状況」(※1)の精神障害に関する事案について、労災補償請求・支給決定件数ともに増加傾向であると公表されました。出来事別の支給決定件数を見ると、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が多いとのこと。また、「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(※2)では、110万件を超える総合労働相談件数のうち、民事上の個別労働紛争相談件数は25万件超、相談内容は「いじめ・嫌がらせ」が6年連続トップでした。

このような行政発表の数値からも、「いじめ・嫌がらせ」が労働現場のトラブルの上位に定着していることが分かります。労災認定や個別労働紛争案件にまで発展はしなくとも、そうなりかねないことを身近に見聞きしたり、体験したりしたことは誰しもあるのではないでしょうか。つまり、誰もが労災認定や個別労働紛争案件に発展しそうな火種を抱えていると言えるでしょう。

では、トラブルの火種はどうやって生まれるのでしょうか。ハラスメントホットラインの電話相談窓口には、上司と部下双方から次のような相談があります。上司の言動を「パワハラ」だと捉え「罰して欲しい」という部下からの相談。部下に厳しく指導したら「パワハラだ」と言われ、突然メンタル不調の診断書を提出して会社に来なくなり困ったという上司からの相談です。

こういった相談者の訴えには次のような共通点があるように思います。一つは「理想と現実とのギャップ」です。「上司ならこうあるべき」「聞いた話と違う」と部下の声。「この年次なら、このレベルの仕事をこなせて当然」と上司の声。相談者が相手に対して抱いていた理想と現実にズレがあり、「裏切られた」という思いが強まるようです。「裏切られた」という感覚はもう一つの共通点である「他者への怒り」につながりやすいようです。「私だけが悪いのか」と、直接相手に向けられない胸の内が「怒り」となって蓄積されるのです。 

このような火種がいつもくすぶっている状態は、からだやこころに負荷がかかります。そのために上司は業務の適正な範囲を超えたパワハラと捉えられかねない指導をし続けることもあるでしょう。部下は仕事のミスや勤怠の乱れなどを起こし、ついにはメンタルダウンになることもあります。

大きな問題に発展する前に、日々のコミュニケーションから互いに「ズレ」がないか、「どのようなズレがあるか」といったギャップを埋める作業が大切だと思います。「怒り」へ注がれるエネルギーを「ズレ防止・対処」の双方向対話に注ぐことがコミュニケーションのコツではないでしょうか。


※1 平成29年度「過労死等の労災補償状況」(厚生労働省)

※2 平成29年度「個別労働紛争解決制度の施行状況」(厚生労働省)