HSP(The Highly Sensitive Person)

最近「ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)」という言葉が、インターネット上の一般向け記事で取り上げられる機会が増えているようです。

元々は1996年にアメリカの心理学者であるエレイン・N.アーロン博士が提唱した言葉(※1)で、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、非常に感受性が豊かといった特徴を生得的に持っている人のことを表現したものです。 例えば騒音のある環境で、すぐに音に慣れて普段通りに過ごせる人がいる一方、この特性の方は同じ音によってストレスをより強く感じ、なんとかその場をやり過ごしても、後からどっと疲れてしまうといったことが起こります。 人間関係に敏感な方であれば、電車の中で他人同士が言い争いをしている場面を見て、渦中の人と同じように感じてエネルギーを消耗してしまうこともあるでしょう。これまでは「気にし過ぎだ」などと、本人に非があるかのように言われてきたかもしれません。

 

最近は、HSPについて書かれた記事を見て「自分はこれ(HSP)ではないか」

言ってメンタル相談を希望される方が見受けられるようになりました。 話を伺うと、HSPという存在を知ったことで、これまで周囲との違いに苦しんできた理由に名前がつき、特性を客観的に見られるようになって安心感が得られたようです。 何よりHSPという言葉が、「とても敏感である」という特性をポジティブに捉えるのに役立っています。

HSPは「特性」であって病気ではありません。 人よりも敏感であることによって、多くの人が見過ごしている変化にいち早く気づいて新しいものを生み出したり、慎重に行動して危険を回避したり、人を育てることに長けていたり、相手のニーズをくみ取って適切な提案ができたりする可能性を持っています。 いわば、「能力」であるとも言えます。

HSPの割合は全人口の15~20%と言われていますので、約5人に1人はHSPということになります。多くの組織に既にいらっしゃる可能性が高いでしょう。 組織のダイバーシティの視点で見れば、タフな人による戦士的な(あまり深く考えなくても行動できる)能力を高く評価する一方、HSPの方にとっては居づらくなるような環境や働き方を強いているとしたら、その能力も排除することになってしまいます。

多様性を包括するためには、人と違うことを批判するのではなく、知識を持つことで認識を改め、多様な存在が否定されない社会である必要があります。 組織の中でHSPの特徴を持つ方が尊重して受け入れられることにより、その能力が発揮されれば、組織にとって新たな価値を生み出す力となる可能性があるのです。

 

※1 エレイン・N.アーロン著『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』講談社(2000年)

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