感情の言語化と対象化

電話相談窓口に寄せられる相談の中でも「答えがない」、「答えが出るとも思っていない」という相談は、長引いてしまう傾向があります。相談者にも相談員にも目指すべきゴールがないからです。何を求めているのか一緒に探し始めます。

 

例えば、起こった出来事に対する反応として「嫌だな」、「辛いな」と感じた、という相談では、その感情に対してどう向き合っていくのかを一緒に考えることが目標となります。 このように、感情を言葉で表現(言語化)できるときは、自分の中にある程度の枠を作り、その中で自分の中に生じた気持ちと向き合うことができている状態です。

 

一方で、ある出来事に対してなんだか「モヤモヤ」する、ということがあります。感覚的には自分の中に何かが勝手に芽生えた感じのため、得体の知れないものを抱えているようで不安になります。 自分の感情を認識も理解もできず、向き合うことができない状態のため、抱えきれずに、八つ当たりやストレス性の体調不良として表に出てきてしまうこともあります。

 

この場合は、最初に抱いた「モヤモヤ感」と向き合う必要があります。 まずは、その感覚に対して心を「ありのまま」の状態にします。自分の感覚にどういう感情がぴったり当てはまるのか考えてみましょう。怒り、憤り、悔しさ、悲しみ、寂しさ、不愉快など、どのような感情でも、無理せず素直に自然と沸きあがる感情を受け止めてください。 「モヤモヤ」していたものに少しずつに輪郭が生じてくるでしょう。

 

このように、感情に「名前」をつけるという作業を何度か繰り返し、自分の感情を探り、向き合っていきます。掃除などと一緒で、収めどころのないものの一時的な置き場所を作って整理整頓するイメージです。

 

感情に名前を与えることで、自分の感情を「対象」として客観視することができます。 すると、その感情の根底にあるものが見えてきます。例えば、「認めてもらえなかったから悔しかった」とか「バカにされたようで悲しかった」など、出来事の何に対してモヤモヤしていたのか、少しずつ冷静に俯瞰的に見ることができるようになります。

 

自分の感情と向き合うことは簡単ではないこともあるでしょう。
しかし、体調を崩してしまったり、人間関係をこじらせてしまったりする前に、自分の感情を認めてあげることが大切です。感情を捉え、認め、言葉にするスキルを磨くことが、メンタルヘルスや人間関係を良好にする秘訣といえます。