「働かないアリ」の意義

桜前線が北上し、鳥や虫が蜜を求めている姿を見ると本格的に春を感じますね。 みなさんは、「働きアリの法則」をご存知でしょうか。 パレートの法則の一種で、働きアリのうち本当に働いているのは全体の8割で、残りの2割のアリは働いていないという法則です。 ところが、働いている8割のアリだけを集めてコロニーを再構成すると、そのうちの8割は働きますが残りの2割は働かなくなります。その一方で、働かない2割のアリだけで集団を作ると、一部は働き出しますが2割はやはり働かないままだと言うのです。 どうして「働かないアリ」が一定数出現するのか、謎に包まれていました。

 

今年2月、北海道大学の長谷川英祐准教授がScientific Reportsに「Lazy Workers are necessary for long-term sustainability in insect societies( 働かないワーカーは社会性昆虫コロニーの長期的存続には必須である)」という論文を発表しました。 長谷川准教授によると、普段は働かない2割のアリがいるからこそ、アリの社会は長期存続が可能になっているというのです。短期的に見れば、働かないアリを擁していることは組織にとって無駄なことかもしれません。 アリ社会では常時誰かが従事しなければならない、卵や幼虫の世話のような大切な仕事があります。全員が同じペースで働いていては全体的な疲労度が上がり生産効率が下がりますし、同時に休んでは卵が死んでしまいます。そこで、普段働いているアリが休息を取る間に、普段働かないアリが活躍し、組織の疲弊や致命的なダメージを防いでいると考えられるのです。

 

アリの社会は人間の社会より「生き延びる」、言い換えれば「子孫を残す」ことに目的を置いているので、この法則や研究結果がそのまま人間社会に反映されるわけではありません。 しかし、新年度を迎えてやる気に溢れている人も、不安や戸惑いを抱えている方も、少しお疲れの方も、それぞれ自分のペースに合った働き方が出来れば良いのではないか、と言ってくれているような気もします。頑張ることや前向きなことが持てはやされていますが、集団の中にはスロースターターや慎重な人も必要です。自分のタイプや役割を認識し、頑張るタイミングや状況・場面、場所を自覚することは社会人として大切な能力です。さらに、能力を発揮できるような環境整備、組織運営も必要といえそうです。 また、常に全力では息切れしてしまい長持ちしません。休息やリフレッシュを意識的に取り入れるよう心がけてみましょう。