「アルコール依存症」について

 10月24日に、超党派「アルコール問題議員連盟」による法案「アルコール健康障害対策基本法案」が議連総会で承認されました。これまで、「未成年者飲酒禁止法」や「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」など、飲酒の規制や酩酊者の保護に関する法律はありましたが、多岐にわたるアルコール関連問題への包括的な施策を定めた法律は存在しませんでした。今年の5月に行われたWHOの総会にて、「アルコール有害使用対策」について決議がされたのも基本法への強力な追い風となりました。

 

 問題飲酒者に関する人口推計(「わが国の成人飲酒行動およびアルコール症に関する全国調査」2008厚生労働省)によりますと、多量飲酒者(1日平均純アルコール60g以上)の数は766万人で、アルコール依存症者とその予備軍は440万人いるとのことです。がん患者数がおよそ152万人、糖尿病患者数およそ237万人(2009年厚生労働省)ですから、いかにその数が多いかがわかります。さらに、治療が必要なアルコール依存症者の数は80万人にのぼるのに対して、実際に治療を受けているアルコール依存症者の数は4万から5万人と言われ、アルコールの飲み過ぎによる社会的損失は、年間4兆1483億円に達すると推計されています。

 

 アルコールは、麻薬・覚せい剤・タバコ・睡眠薬などと同じく依存性のある脳に作用する薬物の一種です。習慣的な飲酒を続けていると、耐性・精神依存・身体依存が形成されていきます。そして、最終的に飲酒をコントロールできなくなった状態がアルコール依存症です。アルコール依存症になると、身体、仕事、家族関係などに様々な問題が起きます。また、アルコール依存症とうつ病の合併は頻度が高く、アルコール依存症にうつ症状が見られる場合やうつ病が先で後からアルコール依存症になる場合などいくつかのパターンに分かれます。さらにアルコールは自殺とも強い関係があり、自殺した人の3分の1は直前に飲酒をしていることを示すデータもあります。(※1)また習慣的な大量飲酒やアルコール依存は自殺の危険を高めることがわかっています。(※2)

 

 アルコール依存症の方の心理的特徴として挙げられるのが、否認と自己中心性です。否認とは、本人が問題をまったく認めないか、または過小評価する状況を指し、多くの方がこの特徴を示します。一方、自己中心性とは、物事を自分の都合のよいように解釈し、他の人に配慮しないことです。これらの心理的な特性は、飲酒を続けるために後からつくりあげられたものであることがほとんどです。

 

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今はどこでもお酒が購入できますし、飲酒というストレスの発散方法は一番手っ取り早いものでもあります。繰り返しになりますが、アルコールは脳に作用する薬物です。お酒以外にも、ストレスの発散方法を見つけることがアルコール依存症にならない秘訣です。今後さまざまな対策が取られると思いますが、まずはこの機会にお酒との付き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。

 

※1 伊藤敦子, 伊藤順通. 外因死ならびに災害死の社会病理学的検索 (4) 飲酒の関与度. 東邦医会誌 35: 194-199, 1988.
※2 Nakaya N, Kikuchi N, Shimazu T et al. Alcohol consumption and suicide mortality among Japanese men: the Ohsaki Study. Alcohol 41: 503-510, 2007