セルフケア 体の「声」を聞こう

 メンタルヘルスケアに、「セルフケア」という言葉があります。誰もがその大切さをよく分かっているにもかかわらず、なかなか実行できないことでもあります。では、なぜわかっているのに実行できないのでしょうか。それは自分自身の体のことを過信しているからです。というよりはむしろ、ストレス状態が引き起こす体調の変化を軽く捉えている、というほうが正確かもしれません。

 

 いまでは誰でも知っている「ストレス」という言葉ですが、もともと工学用語であったこの「ストレス」を初めて生理学・医学の分野で用いたのは、ハンス・セリエというカナダの医学博士です。セリエ博士は、ストレスに関するさまざまな研究を続け、多くの論文を書きました。その中で長時間ストレスを受け続けた場合に起こる、体の変化の3つの時期について述べています。

 

 まずは、外部からの刺激(ストレッサーといいます)に対する警報を発して、ストレスに耐える緊急の準備をする「警告反応期」です。この時一度、自律神経のバランスが崩れ、ストレッサーに対する適応ができていない状態となります。しかし、やがてホルモンの働きなどにより、心拍数は早く、血圧が高くなり、体が硬くこわばるなどの反応を示し、ストレスに対する体制を整えます。
 ストレッサーにさらされている状態が続くと、体はそれに対して持続的な抵抗を維持しなければならなくなります。これが「抵抗期」です。この状態において心と体は、常に緊張を強いられ、そのために大量のエネルギーを必要とします。エネルギーを消費しすぎてそれが枯渇してしまうと、今度は「疲弊期」へと移行していきます。
  「疲弊期」では、ストレッサーに対する抵抗力は衰え、体も衰弱していきます。この時、腹痛や頭痛、肩こりがひどい、皮膚に湿しんが出てくるなど、さまざまな症状が出てきて、お医者さんに行っても調べても原因が見当たらず、「ストレスによるものです」と言われて、相談の窓口を利用される方が数多くいらっしゃいます。 「疲弊期」に入って、体に不調が出てきてからでは、対応は後手になってしまいます。なにより気力体力ともに落ちていますので、回復するのに時間もかかります。そうならないために一番大切なことは、いかに「抵抗期」にストレッサーを軽減しつつ、ストレス耐性を維持するエネルギーを確保するかです。そのためには、「抵抗期」に出てくる体の小さな変化に気をつけることです。

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症状が体に出てくるというのは、体が「悲鳴をあげている」ということでもあります。これを軽く受け留めて放置しておくと、やがて体は、持ち主である自分の言うことを聞いてくれなくなります。ぜひ、ご自分の体の「声」を聞いてあげてください。