職場におけるコミュニケーション

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厚生労働省が公表した、国として初めての職場のパワーハラスメントに関する実態調査(平成24年12月)において、パワーハラスメントに関する相談がある職場に共通する特徴として、「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」が51.1%で1位に挙げられました。他にも、「他部署や外部との交流が少ない職場」が12.3%で5位に入っています。
 また、こちらも厚生労働省が平成23年に行った労働安全特別調査の結果では、事業者が考えているメンタルヘルス不調をきたした理由の3位に「上司・部下のコミュニケーション不足」30.6%が入っています。ちなみに1位は「本人の性格の問題」で64.0%、2位は「家庭の問題」35.2%となっています。

 

 日本の文化では、自分が欲していることを明確に口にせずに、相手に察してもらうことを美徳としている面があります。言語学者の外山滋比古氏は、「もともと日本語は、露骨、率直、バカ正直を喜ばない。やわらかく婉曲に、それとなくわからせるのが、床しく上品であるとする。相手をたてようとすればおのずから含みのある言い方になる。もののわからぬこどもならともかく、大人に向かってわかりきったことを言っては失礼になるというのが成熟した社会である。外交の言葉も上品であいまいである。」(『日本語の散歩道』より)と述べています。
 また、「以心伝心」という言葉がありますが、もとは禅宗の語で、「心を以って心に伝う」という言葉や文字では表せない仏法の神髄を無言のうちに弟子に伝えることからきています。職場でも、上司がすべての指示を出すのではなく、部下が自ら考えて行動するようにとの配慮から、あえて言葉にしないケースもあったと思います。
 しかし、言葉にしなくてもお互いのことがわかりあえる関係というものは、そこにいたるまでに十分なコミュニケーションが取れていた場合に限られてきます。正規雇用・非正規雇用など様々な職種、さらに異なる時代背景をもった幅広い世代が一緒に働く今の職場において「以心伝心」は通用しません。中には、コミュニケーション不足の上司が、自分の意見をあいまいにしておき、部下に解釈をさせ、何かあったときには部下に責任をなすりつけるようなケースも見受けられます。

 

 コミュニケーションの活性化は、どの職場においても課題となってきていますが、なかなかうまくいかないようです。リクルート出身で、東京都初の民間人校長として公立中学校の校長を務めた藤原和博氏も「本来コミュニケーションは、リスクのある投資」とインタビューの中で述べています。お互いの意見の違いを確認し、それを尊重して受け入れる、というコミュニケーション本来の目的に帰ることが、今の職場において求められているのだと改めて思います。