睡眠について(前編)

 4年ぶりのオリンピックは、各競技で日本選手の活躍と熱戦が続きました。しかも、日本との時差が8時間もあるロンドンでの開催ということで、連日テレビ観戦で寝不足だった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回と次回の2回に分けて「睡眠」をテーマにお届けいたします。

 

 個人差もありますが、人生のうち睡眠に費やす時間は約3分の一から4分の一といわれ、私たちは多くの時間を眠りに割いています。脳と体の疲労回復、特に大脳を休ませ、ストレスを軽減し、ホルモンの分泌を高める機能が、睡眠中に行われています。それほど大切な睡眠ですが、質の良い、充実した睡眠が取れている方はそれほど多くないようです。

 

 「不眠症や睡眠不足によって生じる経済的な損失が年間3兆5千万円近くに上る」という試算が2006年に日本大学の内山真教授らのグループによって発表されました。日本で詳細なデータを基に睡眠の問題による経済損失額が算出されたのは初めてのことでした。その中で、眠気がある時の作業効率は、眠気のない時に比べて男性で40.1%、女性で37.0%低下することが判明したとのことです。以前から「プレゼンティズム(疾病就業)」による、組織に与える影響は指摘されていたのですが、改めてその金額と影響の大きさに驚きます

 

 「睡眠障害」は、うつの一番の特徴でもあります。寝付きが悪かったり、朝早く目覚めたりして睡眠不足になると、脳の血行が悪くなります。しかし、眠ろうとすればするほど眠れずに、かえって頭が冴えてしまうということは誰もが経験したことがあるでしょう。うつ病の8~9割が不眠とされる一方、不眠を原因としてうつ病を発症する人も多くいます。

 

 ある大学の心理専門の准教授は、「人間には、頑張れば頑張るほどうまくできないことが二つある。それはリラックスすることと、眠ることだ」と言っています。確かにその通りだと思います。カウンセリングに訪れる方の多くは、眠ろうとして一所懸命に頑張り、眠れないまま朝を迎え、さらにうつがひどくなるという悪循環に陥っています。

 

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そこで次回は、睡眠をコントロールしようとするのではなく、頭と体が自然に眠くなる方法についてお伝えしようと思います。