創立50周年記念誌 幸せな未来をつくる対話の力
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29 ある企業の女性従業員から窓口に電話が入ったのは、夜の8時ごろでした。 開口一番、「上司がひどくて、毎日が耐えられません」ときっぱりとした口調。 「どのようなことでしょうか」と相談員が話を促すと、 「上司は、半年くらい前に支店に異動してきたんですけど、仕事もせずにスマホをいじってばかり。忙しいのにむかつきます」 「お昼前になると、待ってました、という感じで食事に行きます」 「ネクタイの趣味が悪くて、ショッキングピンクとかですよ。信じられませんよね?」 「斜め前の席なので、目が合うとゾッとします」などなど。 上司のすべてが気に入らないという勢いですが、“耐えられないほどひどい”という実態が今一つわかりません。相談員は、愚痴とも思える話を丁寧に受け止め、この人は何を言いたくて電話をかけてきたのだろうと、その真意を考えながら話を聴いていきました。電話の特性が、悩みや不安を気軽に相談できる「電話相談」を生み出した すると、 「上司を異動させてほしい。それよりも、私を別の支店へ異動させてほしい」とポロリと一言漏らしました。 そこで、相談員が「あなたは別の支店へ異動したいと思われているのですね」と返すと、 「実は、今期の面接のとき、支店の統括責任者からこの支店がなくなるかもしれないという話を聞きました。私は、ずっとこの支店で働いてきましたから、不安で、不安で。上司が異動してきたのは、ちょうどその頃でした。支店の整理のために来たのかもしれません」と。 ここで相談者は、「支店がなくなるのではないかと不安に思っている」という本音と、「自分を異動させてほしい(働き続けたい)」という、この相談の真意を話し始めました。 対面で相談するとなると、構えてしまいがちです。しかし、電話では、話を聴く相談員側にマインドとスキルがあれば、相談者は構えることなく、自分の心の声と対話するように話すことができるのです。Column

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