創立50周年記念誌 幸せな未来をつくる対話の力
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19    Yちゃんが初めて「子ども110番」に電話をかけてきたのは、中学1年生の夏のこと。以来、毎日毎日、私たちはYちゃんと話し続けました。 「友達から『あなたの理想の彼は?』って聞かれて、『うっ』って詰まっちゃった」 「えっ、なんで?」 「だって考えたことなかったもん。そうだなぁ、あたし歩くの嫌いだから、体力のある人がいいかな。疲れたらおぶってほしいなーって思って・・・。あー笑ってるゥ」 「ブハハッ、ごめん、ごめん」 こんな他愛のない話を楽しそうに語るYちゃんは、実は心臓が悪く学校生活の大半を病院で過ごしていました。しかし、言われなければそんなことはすっかり忘れてしまうほど、Yちゃんの話しっぷりは元気そのものでした。ただ、会話の端々に時々彼女の現実がのぞくこともありました。 「検査でもう3日も学校休んじゃったよ」 でも、ほとんどの場合、さらっと話題を変えて「そういえば、うちの猫、変でね、焼き芋の皮好きなの」など、いつの間にか、またテンポのいい軽い会話が弾んでいました。特に困りごとがある感じでもないのに、なぜ毎日かけてくるのか。彼女の真意をつかみかねて、ある時こう尋ねました。 「毎回これで本当にいいの?『子ども110番』は相談もColumn「子ども110番」相談から ~電話に思いを託す~できるんだよ」と。 すると、彼女はこう答えました。 「いいの、私いろんな人とたくさん話がしたいんだ」「そうか。そうなんだ(まあ、それもいいか)」。 私たちは一応納得することにして話を聞きました。 しかし、Yちゃんの電話は、12月のある日を境に、突然途絶えてしまいました。 数ヶ月後にかかってきた電話で、私たちは凍りつきます。「Yの母ですが・・・。Yは昨年暮れに肺炎で亡くなりました。入院したその日でした」 私たちへの最後の電話からわずか1週間後のことです。 「ここの皆さんと楽しそうに話していたのを思い出して、お礼を言いたくて」 お母さんは「あまりに突然のことで、気持ちの整理がつかなかった」と涙で声を詰まらせながら話してくれました。私たちは言葉が出ませんでした。 本来ならばたくさんの人に出会えるはずの人生を、短く駆け足で終えてしまったYちゃん。何気ないおしゃべりに聞こえたやりとりが、彼女にとってはかけがえのない切実な時間だった・・・。電話に託された思いの重さと深さを、私たちは今も忘れられずにいます。1979年スタート当時の「子ども110番」2019年現在の「SNS相談」

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