From the Children's Consultation Field※この事例は特定の相談ではなく、さまざまな事例を再構成しています。暗く言いよどむ口調、最近、何回か耳にした声です。相談員の声を聞くと、ためらいがちに電話を切ってしまう彼ですが、この日は、なぜか切らずにいました。「今日は、学校は?」どうにでも返事ができるように、あいまいな質問をします。「行ってる……、家にいられねえから……」暗いため息のような声で話す彼。すぐに切れてしまいそうで、質問を重ねてつなぎとめます。「家にいると不愉快なことがあるんだ。でしょ?」「……おやじは、勝手に俺の部屋に入ってきて、俺のものを捨てやがる」「断りなしに?」「……考えられねえって、クラスのやつも言ってる」「止めてほしいって、お父さんに言ってみた?」5秒ほどの間があり、彼は押し殺したような声でつぶやきました。「……おやじをぶっ殺してやりてえ」抗議しても拒否され、母親は味方にはならず、潔癖でいつも指示する父親の態度に我慢しきれず、つい、出た言葉なのでしょう。突然、彼は、くぐもった声で言いました。「この相談は、秘密にしてくれますか」「もちろん、誰にも伝えないよ」「警察にも言いませんか?」勿論だと伝えると、決心したように話し始めます。「この間、路上で知らないおっさんに肩がぶつかって、殴ってしまいヤバイことになって……、交番に連れていかれて……」「そういうことがあったんだ」「……昨日、また、通りがかった男を殴ってしまい、交番に連れていかれて……」解放される間際、連絡先を聞かれ、後日、出頭するように言われたとのこと。彼の頭の中は、呼び出された時の不安が駆け巡っているのです。殴った事実が2度目であること、学校に知られて停学になり、少年院に送られるのではないかなどと、不安がふくらんでくるのです。「呼び出されたとき、何より大事なことがあるんだよ」「何ですか……」「絶対大事なこと、これだけは絶対必要なこと」「……すみません、教えて下さい」「そう! そのすみませんという言葉、謝る言葉なんだよ」一瞬、彼は黙り込みました。「お父さんの干渉にイライラが積もってとんでもないところで、爆発したんだね。うっかり、他人にあたってしまったのかな。でも、呼び出されたらしっかり謝るんだよ。それが一番大事なこと。『謝る』の反対の言葉は、『許す』だからね。必ず、許してもらえるよ」彼は何も言わずに、電話を切りました。謝ることの大事さ、そして許すことは人間関係の土台です。友達や親子関係のトラブルの相談では、私は伝えるようにしていますが、どうか彼が理解してくれますように。2020年12月25日配信第147号200thAnniversaryMagazine34「おやじをぶっ殺してやりてえ」…高1の彼はつぶやきました子どもの相談現場から
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