ハラスメントにかかわる問題ダイヤル・サービスのハラスメント相談窓口を利用される方の多くは、「ハラスメントかどうかはわからないんですが、こういう状況で…」と電話してきます。私たちは、ハラスメントかどうかをジャッジするための窓口ではないので、「ハラスメントかどうかの判断はできないが、そういう状況で苦しんでいることを会社に伝えてみませんか」という切り口でお話を聴きます。「ハラスメントかどうかわからない」と言いながら語られる内容は、例えば、胸ぐらをつかまれ壁に押し付けられて脅迫されたとか、後ろから突然蹴られた、というような身体的な暴力を伴うこともあります。それでも「これはハラスメントに該当する行為でしょうか」と不安げに問いかけてきます。そして、何も言わないことで状況はますます悪化していくのです。「どうしてそんなに状況が悪化するまで放置していたんですか」と心の中で思いながらお話を伺うことも多いのです。なぜ相談者に直接そう言わないのかと思われたかもしれませんね。そう言ってしまうと、相談者は「我慢してきた自分を批判された」「自分を否定された」と感じてしまうことが多いからです。勇気をもって電話をしてくれた方に対して、ほんの少しでも、その勇気を否定するニュアンスを含む発言はしないように心掛けています。ゆっくり話を聴いていくと、なぜ我慢していたのかを話してくれる方も少なくありません。そうした方がよく言うのは「だって、それを相談するって、相手の悪口を言っているみたいじゃないですか?」です。確かに人の悪口を言っているみたいで嫌な気持ちになってしまうという意見も理解はできます。しかし、悪口を言うことと、事実を伝え改善を求めることは全く別のことです。ハラスメント行為をした人に対して、不信感を抱いてしまうのは自然なことです。その不信感があるからこそ、「嫌がらせ(ハラスメント)を受けた」という事実を伝えることは、「相手への不信感」という主観を発露させる行為に感じられてしまうのかもしれません。「ハラスメントをするあの人は、人として最低だと思う」といったことを言い広めたのであれば、ただの悪口になるかもしれません。その区別は時として曖昧ですが、だからこそ一人で抱え込まず「どこまでが客観的事実として訴えてよい部分か」、「主観的な感想は何か」、「悪口になってしまうボーダーはどこなのか」を誰かに相談をしてみるのが良いでしょう。人の問題行動を指摘することは、悪いことだと思い込んでいる人が少なくないようです。ですが、客観的な事実と主観的な意見や感想、そして悪口を区別して考えることができると、悩んで心身に影響を及ぼす前に誰かに相談できたり、解決のための支援を求めたり、前向きな言動をとったりすることへつながるのかもしれないと思います。とは言え、苦しい時は遠慮なく窓口にお電話をいただくのが一番です。他人に聞かせるために言葉にすることで、「あ、これは言っても良いことなんだ」、「こんなに我慢する必要あったのかな」と感じたりします。その結果、気持ちの整理がついて自分を守るための言動を取れるようになる可能性が高まります。私たちは相談者の方々が苦しい時、辛い時、自分を守るための言動が何か、一緒に考え、寄り添える窓口でありたいと思いながら日々対応しています。2020年1月24日配信第136号31ハラスメント通報は、悪口を言ってるみたいでかっこ悪い?
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