ハラスメントにかかわる問題※この事例は特定の相談ではなく、さまざまな事例を再構成しています。私たち電話相談員は法律の専門家ではありませんので、上司A、Bの発言がマタハラに該当するかどうかはわかりません。これらの発言が一度だけであれば「…就業環境が害されること」とまでは言えないかもしれません。しかし、お腹の子どもを大切に思う母親やその家族は、怒り、悲しく感じることでしょう。何よりも、A、Bの発言は、子どもの命を危うくする可能性があります。Aの発言を重く受けた相談者は、堕胎を決意するかもしれません。無理をして会議に出席した相談者は、流産してしまうかもしれません。A、Bはその可能性に気付いていたでしょうか。想像力に欠けた発言だと言わざるを得ません。最近、ハラスメントかどうかで言動の善し悪しを決める風潮があるように感じます。しかし、法的にハラスメントとされるのは不適切な言動の一部でしかありません。ハラスメントとまでは言えないとしても、他人の命や人生、気持ちを損ねる言動はあります。想像力を高め、人として、自分の言動が相手に与える影響を考えておきたいものです。ある女性からの相談です。「3人目の子どもを妊娠したので上司Aに報告したら『ご主人の給料いくら? 小さい子どもが3人もいたら短時間しか働けないでしょ。給料減るよ。教育費どうするの。生活できるの?』と言われました。産むなと言われているようでショックでした」別の女性からもこんな相談がありました。「切迫流産の危険があるので入院することになり、上司Bに連絡しました。上司に『えー、困ったな。あなたの担当案件について会議で説明してほしいんだけど、病院からZoomで参加してよ』と言われました。私の体のことなんて何も考えてくれていないんだなと思いました」皆さんは、この相談を読んでどう思われたでしょうか?「ひどい上司。マタハラじゃないか!」と思った人もいるかもしれません。マタニティハラスメントは「『職場』において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した『女性労働者』や育児休業等を申出・取得した『男女労働者』の就業環境が害されること」(厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」より)と定義されています。「あなたの言っていることはマタハラですよ!」と言ったら、上司Aは「心配して言っているだけだよ。休むなとも働くなとも言ってないでしょ」と言いそうです。上司Bは「え、何でマタハラなの。ベッドの上からでもいいんだよ。大した時間じゃないよ」とでも言うかもしれません。2021年5月25日配信第152号29言葉の影響を想像する力~マタニティハラスメントから~
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