new column内部通報の意義2025年1月、「内部通報制度を考える日」が一般社団法人日本記念日協会に認定されました。思えば、2003年に当社が「企業倫理ホットライン」をスタートさせた頃、まだ社会にコンプライアンスという言葉はそれほど浸透しておらず、法令遵守の「じゅんしゅ」も「そんしゅ」と読み違える人がいました。相談員は電話がなるとカセットレコーダーのボタンを押して録音し、手書きで報告書を作成していました。やがて、通報者は固定電話ではなく歩きながら携帯電話でかけてくるようになり、最近は、若い世代がWEBやチャットを利用して通報するようになりました。それでも、電話の利用件数は今も増え続けています。IT技術の進歩やコロナ後の仕事のスタイルの変化は、便利さと引き換えに、新たな問題や悩みを創出するきっかけとなったと思います。通報者の声に耳を傾け続けてきましたが、この数年で法整備が進み、内部通報が人々に身近なものとして根付いてきたことを、相談員は実感しています。内部通報制度が、今後さらに皆に信頼され実効性のあるものとなることを願っています。ダイヤル・サービスの企業倫理ホットラインでは、契約している企業、自治体、学校の従業員から、職場で発生するコンプライアンスに関する問題の通報、いわゆる内部通報を受けています。通報者の発言に、「上司が犯人捜しをして、仕返しされるのが怖い」「会社が調査を始めると、職場で犯人捜しが始まるのではないかと心配です」という類のものが多くあります。内部通報制度においては、通報者側が「犯人」と表現されることがあるのが現状です。「犯人」とは、罪を犯した人、犯罪人のことであり、通報することは犯罪ではありません。それなのに、通報者自身も自分のことを「犯人」と称することがあるのです。通報者は問題を起こした当事者ではないのに、通報者を「犯人」と呼ぶ組織の風土が根強いと感じます。2022年6月に、改正公益通報者保護法が施行され、従業員数が300人を超える事業者に、内部通報制度の体制整備が義務付けられました。また、通報対応業務を担う従業員を「従事者」として指定し、その従事者が通報者の情報を漏洩してしまった場合に、刑事罰が科される可能性があるという条項に関心が「内部通報制度を考える日」制定に思うこと集まっています。従事者となった方は、今まで以上に通報者保護のため、緊張感と覚悟を持って通報対応業務に臨んでいらっしゃることと思います。しかしながら、従事者が通報者保護の責務を全うするだけでは、「犯人」捜しや通報者を「犯人」と呼ぶ風土が改善されるとは思えません。今回の改正に伴って、管轄である消費者庁が指針の解説を公表しています。その一つに、組織の長に対する教育・周知および従業員に対する教育・周知の重要性が掲げられています。トップのコンプライアンス経営に対する真摯な姿勢を柱に、トップの思いを込めた教育・周知によって、役員や従業員が内部通報制度を正しく理解するようになれば、それがひいては「犯人」捜しや通報者を「犯人」と呼ぶ風土の消失をもたらすのではないでしょうか。私たち相談員は、通報者が自らを「犯人」と称することなく、安心して、かつ正しく内部通報を行い、それが事業者のコンプライアンス経営に繋がるよう、これからも通報者と事業者の橋渡しをしていきたいと強く願います。2025年3月 企業倫理ホットライン相談員2022年9月22日配信第168号21企業にとって内部通報者は犯人なのか
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