「ホットライン通信」200号記念誌
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内部通報の意義通常、職場では、「従業員がルールを守り、それが守られれば事故などの問題は起こらない」と想定されています。しかし、現実にはどれだけ厳しいルールがあっても、従業員のルール違反や予期せぬ事故は起きています。これは、ルールがあることによって従業員の裁量が制限され、日々の業務が単調な作業の繰り返しとなることに原因があるとされています。単調な作業は従業員のモチベーション低下を招き、過度なルールは組織から柔軟性を無くしてしまいます。その結果、従業員のミスや不測の事態に対応できず、事故につながると考えられています。そこで、近年は職場の安全対策として「安全に仕事を遂行しようとする従業員のモチベーション(以下、安全志向的モチベーション)」を高めることが重要だと考えられるようになりました。実際に、安全志向的モチベーションの高い従業員が多く在籍する組織では、重大な事故や事故につながりかねない問題を未然に防ぐことができると分かっています。安全志向的モチベーションが高まると、従業員はルールや手順を遵守し、自ら進んで安全性向上の取り組みを始めるようになります。現場を知る従業員の変化は企業に長期的な良い影響をもたらします。例えば、ダイヤル・サービスの企業倫理ホットラインには、「会社が定めたルールで、かえって事故のリスクが高まっている」という現場の従業員からの通報が入ることがあります。相談員が聞いていても「会社にとって重要な情報だ」と、ハッとするような貴重な意見を従業員は持っています。安全志向的モチベーションが向上すると、このような意見が、従業員側から活発に発信されるようになると考えられます。ただ、安全志向的モチベーションを高めるには、管理側の適切な行動が欠かせません。従業員の安全志向的モチベーションは、上司が部下の労働環境調整や主体的行動を支援するように振舞ったり、部下が安全上不適切な行動をする前後で適切な注意喚起をしたりすることで高まるとされています。また、部下のサポートをする上司自身にも管理側の協力が必要になります。このように、職場の安全を守るプロセスには、管理側、従業員側双方の協力が必要です。近年、社会的な圧力の高まりもあり、企業がルールの厳格化をコンプライアンス対策とする方向に偏っている傾向があります。しかし、短い期間で社会情勢が大きく変化する今、想定される様々な危険をルールだけで防ぐことは不可能に近いでしょう。新しい時代に必要なコンプライアンス対策として、未知の危険が生じても、柔軟に対応できる組織作りが大切になると思います。そのためには、会社全体で協力し合い、安全志向的モチベーションを高めることが、その中心的な目標となる日も近いかもしれません。2022年7月25日配信第166号200thAnniversaryMagazine20新しい時代のコンプライアンス対策~安全志向的モチベーション~

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