「ホットライン通信」200号記念誌
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内部通報の意義※この事例は特定の相談ではなく、さまざまな事例を再構成しています。「2年前に企業倫理ホットラインに通報しましたが、あの時、通報しなければよかったと後悔しています」という電話をいただきました。電話をしてきたのは、ある製造業の社員です。一体何があったのでしょうか。彼は、ある工場の製造工程に、定められた手順を省いた作業を行っている部署があることに気づき、通報しました。そのおかげで工場は不良品を出さずにすみ、コンプライアンスの担当者には、「よく通報してくれましたね。また何か気づいたことがあれば言ってください」と感謝を伝えられました。その後も改善のために、気づいたことを上司に提案しました。しかし、ある日上司2人が「通報されると仕事が増えて困るよな」と話しているのを聞いてしまいました。そのようなことがあった1年後、彼は今までよりも通勤に2倍の時間がかかる子会社に出向させられてしまったそうです。やりがいを感じていた仕事から外され、一人で仕事をすることになりました。「これでは、まるで降格ですよね。同僚からは『何かしたのか』と聞かれました。私が通報したからですか」と上司に訴えると、「まさか。あなたの能力を生かせる仕事ですよ。ぜひ頑張ってください」と言われました。でも彼には「通報したことで不利益を被った」としか思えませんでした。出向が通報直後に行われたものであれば、不利益な取り扱いであると結びつけることはできそうです。ですが、1年以上経ってからの出向は上司が言うとおり、通報とは関係のない人事異動だったのかもしれません。彼が通報したことは、職場にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。通報しないほうがよかったのでしょうか。私たち相談員は、「報復が怖い」と会社への報告をためらう通報者に「通報したことによる不利益を被らないように対応すると、御社からもうかがっていますよ」と伝えています。公益通報者保護法にも、通報者の解雇その他の不利益取り扱いの禁止について、明確に定められています。消費者庁は具体例として、降格、不利益な配転、出向、転籍、長期出張等の命令、昇進・昇格における不利益な取り扱い、懲戒処分、減給その他給与・一時金・退職金等における不利益な取り扱い、精神上生活上の不利益(事実上の嫌がらせ)などを挙げています。さらに考えれば、通報者が何を不利益と感じるかは、一人ひとり違うのかもしれません。勇気を出して通報した通報者の気持ちを考えれば、対応直後だけではなく、問題が起きた職場と通報者のその後についても、注意深く経過を観察する仕組みが必要なのかもしれません。私たちは、通報者の勇気が活かされることを信じて、今日も大切なバトンを会社に渡します。2020年11月25日配信第143号19通報その後…、通報者は何を不利益と考えるか

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