内部通報の意義200thAnniversaryMagazine 近年、企業の存続をも脅かすような不正事件が相次いで発生しており、内部通報は早期発見の重要手段です。人が不正を行う仕組みについては、米国の組織犯罪研究者ドナルド・R・クレッシーによる「不正のトライアングル」という理論が広く知られています。この理論で、不正は 3 つの要因「動機」「機会」「正当化」が揃った時に発生するとされています。「動機」とは、自分の問題あるいは業務上の問題を解決するためには、不正をやるしかないと考えることです。(例:借金がある、ノルマを達成できない等)「機会」とは、不正行為をやろうと思えばできてしまう仕組みや職場環境のことです。(例:上司の伝票チェックが甘い、発注者と承認者が同じ等)「正当化」とは、不正をやっているという感覚を超えて不正行為を正当化してしまうことです。(例:一時的に借りただけ、少しくらいなら問題ない等)窓口では、不正に関する通報が入った場合、後に会社が調査するにあたって必要と思われる情報をなるべく多く取得できるよう、通報者からの話を聴きながら、できる限り質問をおりまぜます。不正の日時・場所・金額・関係者など具体的な情報、証拠となる情報の有無、通報者以外の目撃者の有無などです。そして、通報者の話を深く聴いていくうちに、「動機」「機会」「正当化」に該当する背景が見えてくることがあります。「動機」になり得る不正当事者の私生活や職場での状況、「機会」になり得る社内ルールの盲点やチェック機能の甘さ、「正当化」に至る倫理観の相違等です。窓口では、これらの情報が取得できた場合、企業側の今後の対応に役立つと考え、併せて報告しています。通常、調査した結果、不正が事実であれば、当事者への処分および再発防止策が整備されます。しかしながら、不正の事実が確認されなかった場合でも、安堵して終わるのではなく、通報があったことを良い機会と捉えて、未然防止の対策を講じることが会社のコンプライアンス体質強化に繋がるのではないでしょうか。要因 3 つのうち 1 つでも無くせばトライアングルが成り立たくなり、不正が起こる可能性は小さくなるといわれています。企業が、要因 3 つのうち最初にできることは、「機会」を小さくしていくことでしょう。不正しようとしている人に「いつかは必ず発見されてしまう」と思わせるような仕組みや環境の整備です。例えば、発注者と承認者を必ず別にする、社内規則・社内ルールの改善や定期的な見直し、抜き打ちの検査など様々な対策が考えられます。そして、これらの対策を実施していることを役員や従業員に周知することが、啓蒙に繋がります。「動機」に関しては、役員・従業員間のコミュニケーションが円滑であれば、同僚や部下のちょっとした変化を発見し対処することによって、動機が生まれることを食い止めることができるでしょう。「正当化」に関しては、経営方針や社内規則を真に理解し浸透させていくことによって、不正を思い留まらせる倫理観が形成されていくでしょう。ただしどんなにルールや監視を厳しくしても、時間がたつにつれ、動機や機会が発生してしまうものです。会社は役員や従業員に対し、「不正をさせない、見逃さない」という姿勢を見せるだけでなく、その気持ちも起こさせないような風土作りが必要かもしれません。2018年2月23日配信第113号18通報から見える不正のトライアングル
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