「ホットライン通信」200号記念誌
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内部通報の意義大企業の不正・違反が発覚するたびに、「またか」「どうして」という思いが沸いてきます。中には、組織内で長年繰り返されていたが表面化しなかった問題もあり、中にいる人がなぜもっと早く声を上げなかったのかと、思われた方もいるのではないでしょうか。組織内で問題が隠ぺいされる現象は、昨年から流行語にもなっている「忖度」と関連が深そうです。次のようなブラックジョークを思い出しました。あなたは豪華客船の乗組員です。船が事故で沈みそうになりました。子どもや高齢者を優先しボートに乗せたところ、ボートが足りそうにありません。男性客には、救命具だけで冷たい海に飛び込んでもらわなければなりません。どのように言えばよいでしょうか。アメリカ人には、「さあ、これであなたはヒーローです」と言ってみましょう。ドイツ人には、「これはルールです」と言えばよさそうです。では、日本人には何と言うか…、「皆さんは、飛び込んでいますよ」ここではジョークですが、日本人の場合、たとえ厳しい状況を選択する場面でさえも、迷った時は皆と合わせると安心する人は多いようです。ホットラインに電話をしてきた人が、「ここに通報してもよいことなのかわかりませんが」と前置きしたり、話した後に「こんなことで悩む私はおかしいですか」とか「この程度の不正はよくあることなら、会社には伝えなくてもいいです」と言ったりするなど、ご自身の気持ちや倫理よりも、属する集団の常識を探ろうとする気持ちが働くようです。不正・違反を目撃すれば上司に報告するか、ホットラインに通報することは、健全な組織であれば適切な行為です。しかし、出る杭は打たれるといったことを気にする風土が社内にあると、下にいる人は通報などせず、黙っておこうと思うでしょう。こうして、長く忖度文化の中にいた人達は、問題に気付いても上位の人の判断の傾向を先読みし、間違ったやり方で手を打つなどをして、いつの間にか組織を誤った方向へと導いてしまうことがあります。各企 業では 現在、消費者庁の改 正ガイドライン(公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン)に沿って、「安心して通報ができる環境の整備」を、「トップの責務」として進めているところでしょう。今後は、「問題を見つけて通報したら改善につながり評価された」「通報して感謝された」と、通報にまつわるよい評判が組織内で広がるとよいと思います。そうすれば「そんなに通報している人がいるのか」「皆が通報しているのなら安心だ。私もしてみよう」という人が多数派となり、忖度する心理も、健全なコンプライアンス経営へとつながっていくのではないでしょうか。2018年9月25日配信第120号17忖度する心理とコンプライアンス

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