第22回CSRセミナー「地震発生時の初動対応のポイント」

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第22回 CSRセミナー
「震災体験から考えるリスクマネジメント」

「地震発生時の初動対応のポイント」

後藤一平氏 講師略歴
株式会社インターリスク総研
コンサルティング第1部 CSR法務グループ コンサルタント
後藤 一平氏

大震災のもたらす影響

 私共インターリスク総研は、MS&ADインシュアランスグループで、地震リスクに関し、ハード面、ソフト面のご支援、最近ではBCP(事業継続計画)の作成・見直し支援をさせていただいています。3.11の発生以降、BCPを作成したい、見直したいという声が非常に高まっており、本日は実務経験を踏まえながらお話しできればと考えております。
 東日本大震災の特徴は、まずはその規模。マグニチュード9.0と、観測史上国内最大規模と言われています。さらに大津波による甚大な被害をもたらしました。そして、死者15,000人以上という戦後最大の人的被害です。それ以外にも、原子力災害、計画停電と、さまざまな被害をもたらしました。東日本大震災が企業にどのような影響をもたらしたのか、というアンケート結果を見ますと、全国の企業の8~9割が、東日本大震災の影響がある、あるいは今後も影響があるという回答をしています。ここで注意しなければいけないのは被災地に拠点のない多くの企業も間接的に影響を受けているということです。
 ではもし、関東やその周辺で大地震がおこったら、どういうことになるでしょうか。首都直下型地震が起こったら、被害は東日本大震災どころではありません。直下型が起こった場合にどうやって事業継続をしていけばよいか、ダメージを最小限にするために事業継続計画をどうしなければならないか、を考えるべき時期にきているということです。

大地震発生時の事業継続計画(BCP)

 事業継続計画とは何なのか。もともとは事業継続管理(BCM)という考え方です。事故、大災害が発生した場合、目標とした期間内に中核的事業を再開できるようにしっかりと計画を立てる、準備をしておく、体制を維持しながら適宜見直し、改善しながらPDCAサイクルを進めていくという考え方が事業継続管理です。この考え方をもとに具体的に作成するのが事業継続計画です。自社の重要な業務はいろいろありますが、地震が発生しても業務継続、早期復旧しなければいけない業務は何なのか、を洗い出し、業務継続、早期復旧のための計画立てをしておくというのがBCPです。
 このBCPがなぜ必要なのか。業務を中断しないためにどうすればよいか、早期復旧させるためにどういう計画を立てておくべきかを事前に決定しておけば、事業活動レベルの低下が抑制でき、回復にかかる時間を短縮することができます。それが事業継続計画の必要性、メリットなのです。

事業継続計画(BCP)策定の手順

・STEP1 対応の基本方針の策定
大地震発生時の会社の基本スタンス、判断や行動の基準を定める。方針をあらかじめ定めておかないと、具体的な対策を検討するにしても、何を最優先すべきなのか分からなくなり、会社として一貫した対応がとりづらくなる。

・STEP2 推進体制の構築
BCP策定の取り組みを効果的に進めていくために、事務局が中心になり組織として動いていく。必要な部署も巻き込んで全社的、部門横断で課題を検討していく体制構築が望ましい。

・STEP3 初動対応ルールの策定
地震発生直後の初期段階でやらなければならない初動を、いつ、どこで、誰が、何を、どのようにやるのか、5W1Hでまとめておく。

・STEP4 被害想定の検討
政府で検討している想定被害等を参考にしながら、建物の被害、人的被害、インフラ、交通インフラの状況がどうなるのかをイメージして、シナリオを定めておく。被害想定の策定をする際に、特に地震の場合は必ず2パターン考えてほしい。地震発生時刻が早朝か夕方かで被害が大きく異なるため。

・STEP5 事業継続の共通指針の策定
会社の中で継続すべき重要な機能は何かを特定する。小売、スーパーであれば、数ある商品のうち、水や飲食品などの生活必需品の提供は必須、それ以外は供給停止もやむをえないという判断もあるのかもしれない。御社ではどうか考えてほしい。

・STEP6 事業継続計画の策定
会社各部に継続すべき重要業務、当該業務を継続するために解決しておかなければならない課題、復旧目標、復旧のための障害があるか、についての計画を策定する。

大地震発生時の初動対応のポイント

 初動対応がなぜ重要なのか。適時・適切に初動対応を行えば、大地震発生時に適時・適切な対策と迅速な被害の把握、会社としてのスムーズな意思決定が可能となり、結果として損失を最小化し、最短期間での事業復旧が可能になります。
 初期段階において特に重要視すべきことは、「従業員の安全確保」と「自社の意思決定機能の確保」です。そこから考えると、たくさんやらないとならないことがある中で、特に重要視すべきなのは、次の7項目です。

1、 従業員の安全確保
最も重要なのは安全確保。ただし、重要だとしても有事の際に円滑・迅速に行えるとは限らない。そこで、予め検討・準備しておくべき事項をご覧いただきたい。必要な備品の把握、購入、配備、定期的メインテナンスと、地震対応マニュアルで基本動作をまとめておき、それらを従業員に周知徹底させること。

2、 緊急措置
消火設備・格納場所の確認と操作方法の習得。火災発生の可能性のある設備の確認。非難訓練を定期的に実施する。

3、 安否確認
すでに多くの企業では安否確認システムの導入が進んでいる。有事の際に、連絡網を通じて逐一連絡するのは非現実的であるため、一斉配信は非常に重要。予め検討・準備しておくべき事項として、安否確認システムの登録対象者の明確化という部分では、対象者をどこまで含めるのか(派遣社員、パートは?)、含めない場合は派遣元と交渉の上連絡網の整備を進めておくことも必要。また、家族も含めておくことが望ましい。連絡網については最新状態にしておくこと。人事異動、引越し等で情報が変更する場合は、それらのタイミングで部門の担当者に情報をアップデートさせるのがよい。

4、 対応体制の整備(緊急対策本部の設置)
対策本部の設置要否の判断について、最高責任者である社長の不在が想定しうるため、代理・代行権限者の設定も考えておくべき課題。なお、一般のビルの場合、停電によりトイレの水が出なくなる可能性があるため、簡易トイレの準備と使用方法の周知なども重要。

5、 被害状況の把握
情報収集のために必要な備品の調達と配備。建物内外の被害状況を確認するため目視すべき個所とポイントを整理したチェックリストの作成、各設備の設置業者の連絡先一覧の作成と定期的更新、商品の被害状況を把握するためのツールの作成、確認対象のリストアップ、これらの紙媒体での保管も視野に入れておくこと。

6、 帰宅指示
設備的な損傷、インフラが機能していない状況を想定して、従業員の安全面に配慮した対応の決定のため、チェックリストを作成する。帰宅指示を出す条件について質問されることがあるが、徒歩での距離、徒歩で帰宅した場合、日が暮れる可能性の有無などは個別事情のため、会社での判断は事実上不可能。そのため、帰宅時のチェックリストを用意しておく。例えば、「帰宅の際同一方向ごとに班を作って複数人で帰宅しているか?」「帰宅する際、最低限の食料、水、ヘルメットなどの備蓄品を持参しているか?」など。

7、 帰宅困難者への対応
帰宅困難者対応のために、宿泊場所を予め選定し、毛布や電気を使用しない暖房器具等、宿泊に必要な用具の備蓄。そして近隣から宿泊要請があった場合の対応方針も検討しておくとよい。

 本日のテーマである初動対応のポイントは、皆様もすでにいろいろな取り組みを考えていらっしゃるとは思いますが、そういったものを振り返り、整理、再検証するためのひとつの手段として今日の資料を活用していただけたら、と考えております。
 ご静聴ありがとうございました。